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DMP、DSPからビデオ広告まで、Yahoo! JAPANが日本市場に投じるトータルソリューションとは [インタビュー]

Yahoo MKTS Mr.Takada

Yahoo! JAPANは2013年11月、プライベートDMP開発、プレミアムDSPの開始、ビデオ広告事業への本格参入、さらにはデータ分析コンサルティング事業の展開というトータルソリューションを打ち出した。ディスプレイ広告ユニットのユニットマネージャー高田徹氏に、これら新戦略について話を伺った。

(聞き手: ExchangeWire Japan編集長 大山忍)

 


 

 

マルチビッグデータ活用を核としたマーケティングソリューションを提供

 

 

まず、マーケティングソリューションカンパニーのミッションと、高田さんの責任範囲を教えてください。

 

高田:マーケティングソリューションカンパニーは企業のマーケティング活動を支援するセクターで、検索連動型広告とディスプレイ広告が収益の柱です。私はディスプレイ広告側の責任者です。

 

 

発表されたソリューションについて、まずはプライベートDMPの特色を教えてください。

 

高田:どんなマーケティングチャネルにもリアルタイムに接続することができます。ビッグデータではベロシティ(速度)、ボリューム、バラエティという3項目が重要ですが、その中でベロシティにフォーカスしたプロダクトです。具体的には、収集したデータを0.2秒以内にマーケティング活用するための結合役がそれを可能にしています。

 

 

今回、米ブライトタグ社のテクノロジーを使った新たなDMPの発表がありましたが、ブライトタグを選択した理由は。

 

高田:ブライトタグがDMP事業に参入するのは今回が初めてです。DMPにはデータ収集、連携、加工の各セクションがあります。ブライトタグは、DMPを作る上で一番難しい収集と連携に優れた技術を持っており、今回DMP開発のための資本提携に至りました。

 

 

既存のDMPではなく新しく作ったのは、独自性がポイントでしょうか。

 

高田:既存のDMP事業者は2つに分かれると思います。DSP事業を展開していて、その一部の機能をDMPとして切り出して販売する事業者。もう1つは、元々データのアセットを持っていて、プロダクトを作り合わせてDMPとして販売する事業者です。

前者と我々とでは、DMPは広告だけのものではないと考える点が異なります。特定の事業者だけに繋がるのではなく、アクセス解析に必要とされたり、ビジネスインテリジェンスに必要とされたりするのがDMPの望ましい姿だと思います。後者では、例えばメールアドレスのデータを持つ会社がDMPを販売する場合、データがいつのものであるかに注意を払いません。Yahoo! JAPANの中にも古いデータはありますが、我々は捨ててしまいます。マーケティング活用時にお金をいただきますので、お客様の効果が上がれば弊社の収益も上がります。

 

 

次に、プレミアムDSPの概要を教えてください。

 

高田:データとメディア、サポートが特徴です。データではプライベートDMPと深く連携して、日本で唯一Yahoo! JAPANのデータをフル活用出来るDSPです。1つ目のメディアですが、弊社もメディア事業者ですので、DSPにおいて、当社の広告在庫、配信在庫を販売する先はこのプレミアムDSPに限定します。最も大切なのがサポートとコンサルティングです。広告主のためのプラットフォームという割には、DSPは広告主のマーケティングの一部しかカバーしていない現状があります。弊社では需要を喚起し、欲しいと思わせるという点にフォーカスしてコンサルティングを提供します。

 

 

御社ではブランドを求める企業に、ブランディング広告のためのDSPを提供していくのですね。

 

高田:それがプレミアムDSPと名付けている理由です。よく例に挙げますが、純広告は金融商品では株式の個別売買に当たります。Yahoo!ディスプレイアドネットワークは投資信託、そしてプレミアムDSPが目指すのはプライベートバンキングです。お客様にヒアリングをして、一番適切な資産運用を考えます。

 

予約型配信を採用したビデオ広告に参入

 

Yahoo_MKTS_MrTakada_2ビデオ広告事業について教えてください。

 

高田:ビデオは高い解像度、高い画面占有率があり、人の感覚が完全に映像にフォーカスされているので他の広告と視聴態度が異なります。また、ビデオは世の中のクリエイターが協力してブランドを表現できる場でもあります。

 

インターネット全体で見ると、ページビューは伸びていないのにインターネットを使う時間は増えています。つまり、1つのページに滞在する時間が長くなっているということです。注目したいのは滞在時間中、コンテンツにどれくらい接触したかです。その時間こそ大事であって、遷移したかどうかは指標でなくなります。

 

 

 

遷移した分だけ多くの情報を吸収したというわけではなく、1カ所で深い情報を得ることも考えられる。それでユーザーの評価方法も変わる、と。

  米AOL社は自社でコンテンツを作る戦略を打ち出しています。御社の場合、ビデオのコンテンツはユーザーがアップするYouTubeのようなものと、企業がプレミアムで作っていくもの、どちらの方向性で考えていますか。

 

高田:一番重要なのはプレミアムです。なぜなら、広告価値が全く異なるからです。弊社のGyaO!のようなプレミアムなコンテンツに広告が挿入されるケースと、例えば私の子どものホームビデオに広告が出るケースとでは全然価値が違います。その価値を考えた時、支援すべきはプレミアムなコンテンツを作っている人たちだと思います。

 

 

今回配信プラットフォームとしてVideologyと提携したのはなぜでしょうか。

 

高田:プレミアムなコンテンツを、プレミアムな視聴時間に対して効率的に価値付けして配信する、予約型配信技術を保有していたからです。保証した視聴回数に近づける広告配信、つまり、運用型では広告主が買いたい額に忠実に在庫を買えばよいのですが、予約型にはもう1つ、この量の中で最適に販売するという制約があります。

 

 

在庫が限られた中で、どれだけ最大限に配信できるかを計算して配信する技術なのですね。ビデオ広告の配信先はポータルでしょうか、それともプレミアムにもバナーとビデオが混在するのでしょうか。

 

高田:メインはやはりインストリーム、ビデオの中の広告です。2つ目はインリード、記事の中で見せる広告です。記事の間に単純に貼ってしまうと不快になるので、そこは工夫しています。インリードはユーザーがニュース記事などのページをスクロールダウンした際、ブラウザ内における表示領域が50パーセントを超えるとビデオ広告が自動的に再生され、25パーセント未満になると再生が停止、オンマウスすると音声が自動的に流れます。

インリード広告イメージ

図: ユーザーの画面 に動画広告枠が入ると再生が開始される「インリード広告」

 

 

人材育成も含めたトータル戦略で日本市場を変えていく

 

 

サービスについて伺います。ブレインパッドと合弁会社を設立して提供するデータ分析サービスの概要を教えてください。

 

高田:日本ではアメリカと異なり、データサイエンティストの人材が圧倒的に不足しています。そこで会社を作り、必要なシステム投資をします。もう一つの問題は扱うデータがないことなので、これも提供します。Yahoo! JAPANのデータがあり、プライベートDMPのデータがあり、ブレインパッドや弊社の仲間と一緒に分析することができます。

 

 

Yahoo_MKTS_MrTakada_3最後に、トータルソリューション戦略です。海外、特に米国では1企業がデジタル広告やデジタルマーケティングにおけるトータル的なソリューションを提供する"Stack"という戦略が見られます。御社が日本市場で包括的なサービスを提供する目的は何なのでしょうか。

 

高田:日本のマーケットを良くするためには、リーディングカンパニーであるYahoo! JAPANが動かなくてはなりません。日本はグローバル企業にとって世界の中の一カ国でしかないので、グローバル戦略だけではどうにもならない部分があります。それを日本の会社であるYahoo! JAPANが解決していきたいと思っています。

 

 

最後に一言お願いします。

 

高田:テクノロジーがマーケティングをドライブするというのは一面ではそうですが、マーケッターの方にとって、テクノロジーはツールでしかありません。やはり、マーケッターの方々がマーケティングをできる状態を早く作りたいですね。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。