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自社に合うツールの選定方法について |WireColumn

皆様こんにちは。

KAIZEN platform Inc.の共同創業者 兼 CEOを務めています須藤です。

私は、前職リクルートで沢山のアドテクノロジーの導入をしてきました。

前回に引き続き、「自社に合うツールの選定方法」について、過去の失敗も含めお伝えしていきたいと思います。

 

 

 

 

機能比較の落とし穴

一番よく実施される方法は、エクセルで機能と価格を比較して選定する方法だと思います。

これは、一般的に機能と価格という2軸での比較を行っていくことになります。

この比較でよく起きがちな失敗は、

「機能的にToo muchなツールを使いがち」

「ツールの習熟コストが思った以上にかかる」

「運用を考慮に入れていなかったので、思ったような成果が出ない」

「運用コストも含めたら、想像以上に費用をかけていた」

 

前回もお伝えしましたが、マーケティングツールはツール単体では効果を上げてくれません。

実際に運用していくことで効果を上げていくものがほとんどです。

 

実際のマーケティングツール導入のROIは、下記のように計算されます。

 

図1_マーケティングツール導入のROI

 

このROIを最も最大化することが真の意味での比較になります。

 

 

効果とコストの試算

この場合、難しいのは、“導入後にあげられる成果“と”運用コスト”の試算になります。

これを精度高く出すことで、上記のような失敗を避けることができます。

 

まず前回の内容の再掲になりますが、目的とする成果を定義することからはじまります。

マーケティングツールと一言で言っても、DSP、DMP、タグマネジメントからアトリビューションやログ解析、CRM、LPO、EFOや現在私が提供しているUIのA/Bテストのツールなど、世の中には様々なマーケティングツールがあります。

何のための導入なのか?を明確にしておくことをお勧めします。

 

ツールを導入する目的は、

Value up(=売上を上げる)

Cost down(=コストを下げる)

の究極どちらか2択になります。

 

マーケティングツールを導入する際に、最も多い目的を3つあげるとすると、

①      すでにかかっている運用コストを下げる(Cost down)

②      すでにかかっているCPAを下げる(Cost down)

③      現状よりも売上を上げる(Value up)

 図2_効果試算の難易度

 

この3つの目的のうち、すでにかかっている運用コストの削減は比較的精度高く読むことができます。

 

CPAを下げる、売上を上げるに関しては、比較的事前に想定するのが難しい数字です。

これを精度高く読むためのポイントをお伝えしたいと思います。

 

 

自社の特性を知る

自社のキャンペーン特性を知るということが、まず重要です。

簡単に分類してみると、検索キーワードのバラエティが相対的に少ないか多いかで分けることができます。

 

検索キーワードが相対的に少ないキャンペーンは、単品通販や金融サイトなど検索キーワードがビッグワードに集中する傾向があります。

一方、モール型のECや旅行、エアラインのように検索キーワードが分散するものをロングテール型と分けてみます。

 

図3_ビッグワード集中型 と、ロングテール型

図4_

 

ビッグワード集中型とロングテール型に分けてみると、そもそものキャンペーン構造が大きく異なる傾向があります。

 

ビッグキーワードに集中するキャンペーンは、いかに少ないキーワードや濃いオーディエンスから効果を上げるか?が生命線になります。

CVが少ないためランディングページを設置しているケースが多く、このランディングページからのCVRを上げることでCPAを下げていくということが基本方針になります。

 

ただし、ロングテール型と比較すると、そもそものキャンペーン数などが少ないために、運用コストを下げるということは構造的にやりづらいということになります。

 

一方、ロングテール型はその逆で、ランディングページが分散している傾向が多いので、テストをするのも商品詳細ページのテンプレートを変更するなどの方法になりますが、相対的にCVRを上げづらい構造になります。

 

その代わり、キャンペーン運用の効率化は図りやすいということになります。

 

図5_

 

売上を上げていくにも、ビッグワード集中型はいかにオーディエンスのターゲティング精度を高めて、ムダを排除していけるかがポイントになります。

一方で、ロングテール型は沢山のターゲティングの中から効率の良いものを残す、新しいターゲティングを試すなどの細かなキャンペーンマネジメントが重要になってきます。

 

このように同じマーケティングツールを活用するにせよ、運用方針や狙いが変わってくることになります。

自社の特性をしっかり把握することで、マーケティングツールに本当に必要となる機能をきちんと見分けることにつながることはもちろん、その後の運用コストの見積もり精度を大きく上げていくことができます。

 

 

投資回収の考え方

投資回収プランを詰めていく際に必要なのは、まず手堅く読める運用費の削減からになります。

実際に新しいツールを入れると、イニシャルでの導入コストと学習コストが発生します。

また、運用していくためのランニングの運用コストがかかってきます。

 

これまでの私の経験でいうと、ツールの直接コストよりも圧倒的に運用のコストがかかります。

多機能なツールを選んでも、実際の運用では中々その機能を使えないのも、この運用コストが大きく日々の運用を圧迫するために起きることです。

 

すでに、手動の運用などで運用コストが発生している場合は、この運用コストの削減が最も読みやすいと言えます。

次に、CVRの向上や入札価格の低減などによるCPA向上です。

 

これは、スモールスタートでトライアルすることで数字の感触を得たり、同業種のクライアントでの実績などから見立てていくことになります。

 

図6_

 

この数字は、それなりに短期で数字が取れる、かつ規模を拡大しても比較的数字を維持しやすいものですので、ここでリクープできることを目指したいものです。

 

最後に売上を試算するのですが、売上は最も試算するのが難しいものです。

数字をとるのに、そもそも時間がかかり、かつ規模の拡大とともに数字が変動しやすいものです。

 

これは、あまり頼りにせず、後でアップサイドで乗っかってくるくらいの位置づけでの導入をオススメします。

 

図7_

 

売上増を考慮に入れないと投資回収できない場合、それはマーケティングツールの導入よりも前に実施すべき施策が他にあるというケースが多いです。

 

他の施策を実施し、Cost downだけで投資回収できる規模にしてからの無理のない導入方法だと思います。

 

 

投資回収を詰めていく際の必殺技

とはいえ、マーケティングツールを導入する際に、そんなに時間をかけていられないという場合にどのように投資回収プランを組むか?

少しズルい方法もここでお伝えしておきたいと思います。

 

 

未来の運用コスト削減!?

新しい施策をはじめようと思うと、当然運用のための費用が新しく発生します。

そのサンクコストを低減するというロジックでの投資回収プランです。

 

図8_未来の運用コスト削減

 

そもそも、その新しい施策を実施すると決めている場合にのみ有効です。

元来は、その施策導入の効果とトータルコストを比較すべきなのですが、導入してみないとわからないので、ツール導入した場合としない場合の施策コストを比較してしまうという方法です。

荒っぽく見えますが、ニワトリとタマゴの議論を超えるための一つの方法論だと思います。

 

かつてDMPを導入する時にこの方法を使ったことがあります。

DMPの成果を事前に予測することは極めて難しいですし、試算が困難でした。

ただ、データをマーケティングに使わないという選択肢は考えられませんでしたし、導入後に一定の規模があれば確実に投資回収できるという見立てが立っていましたので、この方法で投資決裁を通しました。

 

次回はマーケティングツール導入後に起きがちな落とし穴について、お伝えできればと考えています。

 

 

ABOUT 須藤 憲司

須藤 憲司

KAIZEN platform Inc. Co-founder & CEO 2003年リクルート入社。マーケティング局、事業開発室を経て、2009年アドテクノロジーを活用しビジネス展開するアドオプティマイゼーション推進室へ。 2011年より室長を担当。最新アドテクの導入を4年間リード。 2013年6月末退職し、シリコンバレーでKAIZEN platform Inc.を創業。 驚くほど簡単にA/Bテストができる WEB サービスの Growth Platform 「planBCD」を提供。https://planb.cd/