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プログラマティックが主流になると何が変わるのか?

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

私たちのIABディスプレイトレーディング協議会と関連した最新のコラムにおいて、協議会メンバーが、主流のトレーディングメカニズムとしてのプログラマティックについてそれぞれの見方を述べてくれている。

ここ数日、我々の広告支出レポートにおいてデジタルが二桁の伸びをみせたことや、PwCが初めて広告支出における英国でのプログラマティックの利用について定期MOSTリサーチに掲載したことで、IABはクリスマスのような騒ぎになっていた。レポートでは、2015年における60%のディスプレイ広告がプログラマティックによって実施されていると記されている。2014年の47%から成長を遂げていることからも、昨年がティッピングポイントだったと言えるだろう。我々はIABディスプレイトレーディング協議会のメンバーに次の質問に答えてもらった。「プログラマティックが主流になると、何が変わるのだろうか。」

「より多くの広告主が、プログラマティックが提供する効率や効果について認識し始めた点は非常にエキサイティングなことです。業界として我々は今まで、どのようにしてテクノロジーを機能させるのかという点にフォーカスしてきました。これからはいかに広告を改善していくか点にフォーカスしていく必要があります。つまりはROIだけではなく、クリエイティブやプランニングに関係する点です。クリエイティブ産業の人々がデータ及びテクノロジーが広告に与える価値を理解し始めており、今年のカンヌでは多くの人々がこのことを議題にあげるのではないかと楽しみにしています。」

Amit Kotecha氏, EMEA, Quantcast社、EMEA地域マーケティング統括長

「我々は、プログラマティック事業者たちがお互いにコラボレーションを始めることで、パブリッシャーが広告を最大利用し、広告主がより高いROIを手に入れ、消費者がカスタマイズされた適切なブランドとのコミュニケーションを通じて、コンテンツへのアクセスを楽しむのを目の当たりにするでしょう。Win-Winの関係です。このような世界を実現するためには、産業は細分化されるのではなく協力し合うべきです。結果として、新たなデジタルトレーディングの標準がプログラマティックによって直接定義されるようになる一方で、(広告詐欺や、ブラックボックス化、人工的な最低価格などの)悪しき習慣を無くしていくために業界がより一つにまとまる必要があり、そのことによってプログラマティックは主流へと躍り出ていくでしょう。」

Erika Soliven氏, Sociomantic社、UKのマーケティングマネージャー

「(米国やオーストラリア以外での)従来のTV業界など、他分野の広告関係者にプログラマティックや、この業界の効果測定方法に関心を抱いてもらうには、まだ様々な努力が必要です。クリックスルーの様な非効率且つ面倒で、データの活用が少なく、古い測定方法を活用した購買方法は過去のものとなり、多くのデータやアトリビューション、動的なクリエイティブを活用したキャンペーンへと変化していくことでしょう。」

Shady Twal氏、AOL International社、
EMEA地域のデマンドプラットフォーム部門セールスディレクター

「我々の産業を支えていた人々が変わっていくでしょう。プランナーよりトレーダーに求めるものが大きくなり、非常に多くのデータを理解しキャンペーンに活用できるデータサイエンティストやエンジニアが必要となります。プログラマティックが主流になるにつれ、この分野での人材が現在よりも更に枯渇していくでしょう。広告主が求める結果を提供できるのは、全てのチャネルにおいて人、場所、時間 など全ての価値を捉えることができる人のみなります。」

Paul Silver氏、Media iQ社、COO

「定義上、オークションにおいて、最も高額な価格を提示した人が入札を勝ち取り、全ての瞬間において価格が異なるということは、メディア購買チームがデジタルメディアの価値を捉える上で、今までとは全く異なる変化が必要となることを意味します。エージェンシーのパフォーマンス測定においても、1年を通じたレビューではなく常時行われる必要があります。リアルタイムでの最適化作業等もエージェンシーの評価に繋がります。1年蓄積したデータを元に戦略や最適化を考えるのは非常に困難になっています。」

Mary Healy氏, Accenture社、グローバル顧客部門デジタルリーダー

「最近、いくつかのエージェンシーによるトレーディングデスクが分散化していく傾向があります。これはエージェンシーグループが、現在のデリバリーメカニズムの重要性を理解し、この購買モデルにおける「標準化」を中止した点に起因しています。プログラマティックがメインストリームになった際にはアカウンタビリティが最も大きなアウトプットとして考慮されることになるでしょう。具体的には、テクノロジーに裏付けされたバイヤーが、インプレッションレベルにおいて、その瞬間のROIをベースに、真の「プレミアム」インベントリを特定するような作業です。」

Paul Gubbins氏、PubMatic社、カントリーヘッド

「パフォーマンスベースの広告とRTBの間に誤った考えが生じるのではないかと思います。プログマティックがダイレクトキャンペーンで効果を得るためだけの方法である、という間違った考えが無くなって始めて、プログラマティックの他の分野における成長ができ、更に多くのブランド企業が広告での利用を始めるようになるでしょう。また、テクノロジーの進歩が、クリエイティビティ、データ、拡張可能なプレミアムインベントリ、テレビへのコンバージェンス、保証つき・ダイレクトなど含めた柔軟なトレーディングモデルなどを後押しすることが重要になってきます。」

Andreas Dooley、Commercial Director UK & IE, Adform UK

「マーケットのアドブロックに対しての対応と、比較的制限のないプログラマティックのマーケットプレース環境の元で、パブリッシャー及びテクノロジー提供者がより積極的な活動を行うことで、インベントリとデータ品質の改善が見込まれるでしょう。プログラマティックがよりクリエイティブの面でも成長を見せることで、よりインタラクティブなフォーマットや、アカウンタビリティ、透明性、より適切なターゲティング、エンゲージメント、広告主に価値を提供するためのルール作りなどの、業界により多くのベネフィットをもたらされるでしょう。」

Sam Wade氏、Amobee社商業パートナーシップ、ヴァイスプレジデント

「プログラマティックによるメディアバイイングが成長を続け、消費者のモバイル消費時間が増えるに従い、正しいメッセージを、正しいデバイスを利用した正しい人に届けることが広告主の価値創造に必須になってきます。クロスデバイス広告環境にて、オンライン・オフラインを含む全てのメディアチャンネル及びデバイスにおいて追跡及び計測を行い、ビジネス効果を最大化するためには、拡張性と持続性に優れたIDが必要となります。」

Andy Mihalop氏、Facebook Atlas社、UKのグループ長

この業界の状況は2年前と比較すると大きく異なっている。プログラマティク活用の利点は日々実証され、同時に解決すべき問題点や欠点なども見つかっている。緩やかではあるものの、我々が現在までに実証してきたテクノロジーが他のメディアでも利用され、すべてが自動化されていくような強いデマンドが広がってきている。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。