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アプリの収益化に苦しむTwitter。アプリの有効な収益方法とは?

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

アプリの開発者が収益化に苦労している。Appnext社のファウンダーでCEOのElad Natanson氏は、その対策についてdmexco conferenceで非常に明確な立場をとっていた。Natanson氏は、ExchangeWireのインタビューに対して、Twitterがいかにアプリでの収益化に苦労しているか、またどのようにして克服することができるかについて意見を述べてくれた。

dmexicoは広告、マーケティングテクノロジーに関するヨーロッパ最大のコンファレンスです。このコンファレンスが開始してからの8年間、多くのエクゼクティブ、企業、マーケターに対して、新たなビジネス戦略からプラットフォームの活用まで様々な情報を提供してきました。

また、このイベントでは、多くの業界エクスパートにパネル、キーノート、様々なイベントに参加してもらっています。イベントの最大の注目の一つは、デジタル及び広告業界で注目を集めるTwitterのCEOであるJack Dorsey氏とWPPのCEOであるMartin Sorrell氏のセッションです。このセッションにて、Sorrell氏は「率直にいって、Twitterは利益をあげることができず、毎年損失を垂れ流している。マネタイズが効果的にできないのはどうしてだろうか」と質問をしています。

多くの同様の収益化に対する問題を抱えているデベロッパー及びマーケターが、この会話に興味を覚えたことでしょう。しかしながら、デジタルエコノミーにおいてアプリやウェブサイトの収益化が最大の問題点であることは現実で、その解決策は見出されていません。

決してアプリの数が不足したり、アプリへの関心が失われたわけではありません。少なくとも、毎日1000の新たなアプリがAppleのApp Storeにリリースされ、500億ものアンドロイドアプリが2015年にダウンロードされています。投資の面でも不足は感じられません。2014年に、WPPは150億ドルをTwitterのキャンペーンに投資し、昨年も60%増の240億ドルを費やしています。今年に入っても、更に投資を46%も増やし、350億ドルに迫る勢いです。しかしながら、Twitter社員を含むアプリ業界に関わる多くの人々は、ユーザーの興味や投資を、いかに実務的な利益に変化させるのかについて苦心しているのが現状です。

Elad Natanson氏、Appnext社、Founder & CEO

Elad Natanson氏
Appnext社、Founder & CEO

多くが、広告による収益化を検討しますが、アドブロッカーの流行によって、この戦略は難しいものになっています。また、ユーザー側も押し付けがましい広告表示形態に嫌気がさしており、オンライン広告のクリックスルー率は非常に低いものとなっています。

一方で、ネイティブ広告は、徐々に効果的なアプローチとして認識されています。広告主は、アプリやウェブに見栄えを似せてネイティブ広告を掲載しています。これらの広告は、今までの広告と比較して邪魔にならず、また最も重要な点として、ユーザーエクスピリエンスやカスタマージャーニーが損なわれることもありません。OPA (Online Publishers Association)による最新の調査によると、53%の人々が、今までの形態の広告と比較して、ネイティブ広告により魅力を感じると回答しています。

広告主や開発者は、以前と比較して、より多くのアプリの利用やユーザーの傾向に関するデータを有するようになりました。個別のユーザーに関するアプリ利用の頻度や期間、ユーザーが利用しているアプリの機能などについての情報を獲得できるようになっています。開発者はこれらのデータを利用して、インセンティブベースでの収益化モデルを立ち上げることができます。ユーザーが、あるアクティビティを行うことでインセンティブを受け取ることができます。

これらのデータを、ディープリンキングテクノロジーと組み合わせることで、個別のユーザーにアプリ内での最適なユーザーエクスピリエンスを提供できます。ユーザーは、興味がなかったり、関心が薄いページをナビゲートすることがありません。これらのデータを活用することで、アプリのディストリビューションプラットフォーム経由での、正しいユーザーへのアプリの再マーケティングを実施することも現実的です。非常に多くのアプリが利用されなくなる中で、アプリを如何にダウンロードしてもらうかという点と同様に、ユーザーの視点に立ってユーザーエクスピリエンスに注意を払い続けることが重要です。

開発者やマーケターにとって、ユーザーの視点を持ってアプリやウェブサイトを眺めることは重要です。ユーザーフォームをとってみても、それらの利用のしやすさから、獲得した情報の利用方法まで、考えを巡らせてみてください。アプリに関する経済圏の競争は以前にも増して激しくなっています。あなたのアプリを収益化することは、Twitterの現状などを見ると非常に困難な作業に感じますが、決して不可能なことではありません。

様々な工夫を重ねることで、正しい機会を、正しい人々に、正しいタイミングで提供することができます。ユーザーに適したサービスの提供を実施し、既に最適化を目指すことは決して怠ることのできない活動です。データや利用可能なテクノロジーを組み合わせることで、ユーザーに対して好意的な体験を提供する一方で、あなたが収益をあげるというゴールは、実現が可能なオプションです。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。