パブリッシャーの反撃:パブリッシャーのアライアンスを成功させるには|WireColumn

 

高品質のデジタル広告インベントリを大規模に購入すると、残念ながら、ほとんどの人の期待と比べて、少し効率が悪くなりリスクが高まります。世界中の消費者が頻繁に訪問するようになり、それ故に広告主にとっては重要なターゲットになったメディアにとってこの問題は、その活気と収益性の継続を確実にするために是非とも解決すべきものです。

市場についてどう考えるべきか

GoogleとFacebook、そして少し差がつきますがTwitterなどの企業は、途方もないリーチ、複数のプラットフォームにまたがるシームレスな取引、(相対的な)ブランドセーフティ、そして幅広いデータエンリッチメント機能を備えた、グローバルなエコシステムを作るという素晴らしい仕事を成し遂げました。その結果、世界のデジタル広告支出のかなりの部分を取り込むことに成功し、シェアをさらに拡大させています。このことは、WPPのMartin Sorrell氏が2016年第3四半期のアナリスト会議で、WPPは2016年、少なくとも50億ドル(41億ポンド)をGoogleの広告に使う見込みだと述べたとき、非常に明確になりました。この額は、WPPが2015年にクライアントのためにGoogleのプロパティ全体に使った40億ドル(32億ポンド)を大きく超えるものです。しかもこのほかにWPPは2015年、Facebookに10億ドル(8億3000万ポンド)を使っています。従来からあるアジアのパブリッシャーで、前年比で収益性がこれほど成長したところはほとんどありません。つまり、デジタル広告が急速にグローバルに成長する一方で、その成長の大部分は、検索とソーシャルの巨人たちに奪われ続けているのです。

ソリューション:パブリッシャーが反撃する

反撃方法はいくつかあり、もう動いているパブリッシャーも多くありますが、成果はまちまちです。たとえば、ほかのメディア企業の買収で規模を拡大し、テクノロジーをビジネスの中核に取り込もうとするところがあります。あるいは、おこぼれを頂戴できるかもしれないとのもくろみから、巨人たちに全面的に屈服しているところもあります。

勢いを増している別のアプローチとしては、パブリッシャーのアライアンス(連合)があります。すなわち、パブリッシャーが結束し、それによる強みを得るというものです。カナダ、スウェーデン、フランス、ニュージーランドなど世界各地でアライアンスが誕生しています。最近では、PubMaticが10月にパブリッシャー・マネタイゼーション研究会(PMRG)と共同で、J-PADを日本で発足させました。ただし、現在存在するパブリッシャーのアライアンスが、すべてうまく行っているわけではありません。その点を念頭に置きながら、アライアンスを成功させるためには何が必要なのかを見ていきましょう。

規模 – すべてのバイヤーは、大規模な広告のリーチを好みます。ほとんどのブランドは、スケール可能で、かつターゲティングされたオーディエンスにリーチしたいと考えています。メディア業界が統合されていないと、ブランドは、広告フォーマットが異なりデータのリッチさにも統一性のない無数のサイトを対象にせざるを得ません。効果的なフリークエンシーキャップやホワイトリストのような贅沢も期待できません。アライアンスが成功し競争力を持つには、たとえばオンライン人口の60%以上など、かなりの規模のオーディエンスのリーチが必要です。というのも、GoogleとFacebookならばそれを提供するからです。

ブランドセーフティ – メディアバイイングは、ブランドにとって危険を伴います。多くのサイトをターゲットにするブランドは、不適切なメディアに広告が表示されることはない、と常に100%確信することはできません。アライアンスを成功するためには、バイヤーがターゲットしたいと考える、評判がいいブランドを取り込む必要があります。ブランドクオリティが平均的な中間層サイトが多く集まりアライアンスを組んでも、実質的には、(今後が非常に不透明な)アドネットワークと変わりがありません。パブリッシャーにとってのブランドセーフティとは、広告およびコンテンツの質および自社のブランド価値と、インベントリにアクセスできる特権をもつデマンドサイドを管理・制限できるということを意味します。

効率 – アライアンスは、パブリッシャーと広告主の双方に、よりすぐれた効率をもたらします。パブリッシャーにとって、集中管理のインベントリプールとは、必要になった追加リソースがすべて、アライアンスのメンバー間で、あるいは、場合によってはテクノロジーパートナーと共有されることを意味します(テクノロジーパートナーについての詳細は後述します)。また、知識共有というメリットもあります。つまり、ある分野について専門知識があるパブリッシャーが、ほかのパブリッシャーに協力し同時に、さまざまなテーマについてさらに学習することが可能となります。また、バイヤーにとってアライアンスは、入札がひとつに集約されるという簡易性を提供します。このことによって、シームレスなホワイトリスト、フリークエンシーキャップ、統一的な分析、そしてターゲティングのための(理想的には)共同のエンリッチ化したオーディエンスデータを使い、魅力的で巨大なオーディエンスにアクセスできるようになります。本当にシンプルなのです。

レバレッジ – バイヤーはインベントリに対して、払う必要があると考えている額や、払い慣れた額を超える金額を払うのを嫌うものです。しかし、質の高いオリジナルコンテンツの制作は費用がかかるものであり、パブリッシャーの大半は、インベントリに公正な市場価格による支払いがされていないと感じているというのが本当のところです。世界中で極めて高く評価されている英国の「ザ・ガーディアン」と米国の「ニューヨーク・タイムズ」の2メディアともが不安定な財務状態にあることがそれを証明しています。パブリッシャーがアライアンスを通じて希少性を生み出すことができれば、広告価値を上げることは可能です。ここで重要なのは希少性です。パブリッシャーがインベントリをほかのアドエクスチェンジやアドネットワークにも提供すると、バイヤーがアライアンスを通じて高い金額を払う動機は減少します。バイヤーたちは、十分な価値が得られると考えれば多く支払うことをいとわない、と私は確信しています。だからこそ、アライアンスを形成するパブリッシャーたちは、新しいオーディエンスセグメントや、ファーストルック、ドメインレベルの透明性などの付加価値を提供する必要があります。留意すべき重要なことは、先週1ドル出していたインベントリに今週5ドル出すことを求められれば、バイヤーが少し腹を立てることはまず間違いないということです。

プレミアムなパブリッシャーが集まってこれらの要素をすべて達成すれば、デジタルの巨人たちに向けて、戦略的な対抗勢力を生み出すことができるでしょう。デジタルの巨人たちは、パブリッシャーの中核のビジネスモデルに、ひいてはパブリッシャーブランドの存在に、挑戦を繰り広げているのです。

成功に必要な要素

どんな試みも、まずは何を達成したいのかを明確にすることが大切です。しかし、「簡易化すること」は驚くほど複雑になるという現実があります。アライアンスが成功の可能性を最大化するために必要な要素は何なのでしょうか。
ビジョンの共有 – とても簡単に聞こえます。しかし、どの会社も収益性と顧客満足に向けて努力していますが、その方法は大きく異なっている可能性があります。アライアンスの参加企業は、共有する目標と、そこに到達するための道筋を、あらかじめ明確にすることが重要です。これは、収益目標、許可されるサイトの種類、インベントリのバンドルの方法、パブリッシャーの新規加入の要件、アライアンスの運営方法の決定など、単純なものでいいのです。厳密にしすぎず、しかし、協調行動を念頭に置いた指標にすることが大切です。

関与と忍耐 – 全面的に関与する姿勢がなく静観するだけのパブリッシャーは、理想的なパートナーとはいえません。アライアンスを形成するという判断は、パートナーの経営戦略にとって根本的なものであるはずで、従ってそこには長期的な視点があるべきです。理想的な結果は、メディア業界における力学の変化であり、これは短期間では決して実現されることのない目標です。関与を示すことが重要です。すべての参加者は、質の高いインベントリを大量に保証するか、人やスキル、専門知識、あるいはマーケティング費や運用の人件費などの金銭を提供するかして、自らの決意を示すべきです。アライアンスパートナーの管理は重要な課題ですが、社内の関係者による持続的な関与と調整を徹底することも同じくらい困難で、かつ、成功のために欠かせないものになるでしょう。

組織 – アライアンスの最もわかりやすい組織として、ジョイントベンチャーと戦略的パートナーシップの2つを挙げることができます。契約によるものも、そうでないものも考えられます。あらゆる状況で機能するような単一のモデルはありません。適切な組織は、状況と参加するプレイヤーによって異なってきます。法人を作るジョイントベンチャーは、強力な関与の表れであり、出資構成、IPの共有、正式な経営陣、各国の法律に基づいた統治の責任などを意味します。マイナス面としては、複雑化や費用の高騰の可能性があり、また展開や撤退が簡単ではなくなるかもしれません。その代わりに、同じテクノロジーパートナーをもつパブリッシャーたちが、契約を必要とせず、複数パブリッシャーによるDeal IDを通すだけで、バンドルされたインベントリを提供することができます。

テクノロジーパートナー – アライアンスの成功と失敗を左右するのは、必ずしも、適切な「テクノロジー」ではなく、重要なのは適切な「テクノロジーパートナー」です。テクノロジーパートナーは、世界展開しているところにするべきで(評判もいいのが理想です)、できるだけ多くのバイヤーが参加するように市場での連携が十分なければならず、また、あらゆるチャネルと広告フォーマットにおいて、OpenRTB、プライベート・マーケットプレイス(PMP)、PMP-Guaranteed (PMP-G)、Automated Guaranteed(AG)など、購入の選択肢が複数ある企業をパートナーにするべきです。バイヤーが購入方法を選択できるようにするためには、最低でもこれが必要条件なのです。さらに、テクノロジーパートナーの立ち位置と戦略を検討するべきです。自分たちの最善の利益を考えてくれているとパブリッシャーが確信できるためには、参加するテクノロジーパートナーの公平性を確認する必要があるのです。一般的に、独自のメディアがあるところや、デマンドサイドだけに製品を提供しているところは、パブリッシャーを最優先していません。結局のところ、必要があればリソースを割くことをいとわず、また有効なアドバイスができる助言的アプローチをとるテクノロジーパートナーが、真の価値あるパートナーということになるでしょう。

まとめると、アライアンスへの投資を選択する前に、検討すべき要素はいくつもあります。環境要因、組織、適切な協力関係の構築などです。そして、やり遂げれば見返りは十分あり、パブリッシャーとバイヤーの双方に対して本当の価値を作り出すことができるというエビデンスをわれわれは持っています。活気ある開かれたデジタルメディア業界の継続が可能となるでしょう。

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Jason Barnes

PubMatic Inc. ヴァイスプレジデント

PubMatic の Asia Pacific 地域担当の Vice President であるジェーソン・バーンズは、シンガポールに在住し、同社のオーストラリア、日本、インドのビジネスを指揮・統括している。
PubMatic 入社以前は、パブリッシャーがトレーディングの自動化に移行する黎明期に、News Corp のオーストラリア支社のビジネス開発責任者として、プログラマティック・トレ ーディングのローンチと管理に従事。
オーストラリアおよびイギリスにて 15 年以上ものデジタル分野における上級職を歴任している。