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プログラマティックの世界にセールスは必要なのか?

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

プログラマティックバイイングが行われるようになると、セールスチームは必要なくなるのだろうか?もちろんそんなことは無いが、営業に求められるスキルは変わってくるだろう、と独立系のテクニカルコンサルタントであるPaul Gibbins氏がExchangeWireに語ってくれた。

企業がインサーションオーダーからプログラマティックに変換していくサポートをしてきた経験から、現在と将来の営業に求められる点について述べたいと思います。

第一に、私はそれほど多くの点が変更するとは思いません。しかしながら、特に伝統的な手法を重んじていた人々からは多くの懸念が伝わってきます。

私はこの懸念がどこから来ているのかを理解しています。多くの人がこの問題とAIを関連付けて考えますが、これは実態とは異なると思います。プログラマティックは手法にしかすぎません。例えば主婦がパイプ管を利用して様々な水道やガスを利用するのと同様に、OpenRTBのインフラによって、さまざまなリクエストや入札対応が可能になります。

主なエージェンシーが、パブリッシャー、アドネットワーク、テクノロジーベンダーの顧客基盤を構成しています。このようなエージェンシーがインサーションオーダーから100%プログラマティックに変化したいと考えた場合に、彼らの需要に耳を傾けてチーム構成を再調整する必要があります。

例えばSpotifyは最近現在のプログラマティックに対する需要に応えるためにセールスチームを再編成するとプレスリリースを行なった一社ですが、今後似たような事例を皆さんが考えるよりもすぐに目にするようになるでしょう。

エージェンシーという同じオーディエンス、コンテキストを同じ顧客に提案をするチームが二つ存在するならば常に争いが生じます。一つのチーム、一つのメッセージであることが理想的です。とはいえ、セールスチームが、常にオペーションチームにサポートを求めるのではなく、異なるバイイングモデルによってどのようなモデルが存在するのかを理解することができて初めて顧客の求める提案が可能です。

今日のセールスチームがすべきこととしては次のことがあります。

エージェンシーや広告主のニーズを理解する

オーディエンス、リーチ、およびコンテキストの利点を理解し販売する

(バイイングモデルにおいて中立的になりつつ)エグゼキューションに固執する

今日、多くの場合何が起こっているのでしょうか?

セールスチームとエージェンシー/広告主の間のミーティングの多くは、広告主のニーズを満たすためのオーディエンスのレリバンシーに関することではなく、DSPやSSPの接続などの広告オペレーションに関する議論に費やされています。

プログラマティック以前には、セールスチームは広告配信について多くの時間を費やすことはなかったでしょう。今日セールスチームがそういった点に時間を費やしている点に私は当惑を感じます。彼らは彼らのユニークな利点を売り込む機会を逃しています。このユニークな利点というのは、広告配信をプログラマティックで実施するという殆どの場合コモディティ化したソリューションのことではありません。

それでは、インサーションオーダーの時代に確立されたセールスチームはプログラマティックの世界においてどのように変化をすべきなのでしょうか?

写真

Paul Gubbins氏、
独立系テクニカルコンサルタント

プログラマティックに存在するさまざまなバイイングモデルを深く理解することが必要になります。そうすることで、エージェンシーに対してどのようなバイイングルートであってもサポートできる体制ができます。多くの企業がそれぞれ個別のスキルを有し、また、販売側はエージェンシーの提案に従う形になっています。最近プログラマティックの技術をエージェンシー内のトレーディングデスクからより大きな企業体に広げる動きがみられます。再度強調しますが、プログラマティックは単なるセールスソリューションではなく、ソリューションを提供するための配信手段なのです。

パブリッシャーやアドネットワークにおける在庫がSSP(自社またはサードパーティによる)にある場合に、セールスはブランドやオーディエンスにとっての明確な提案が行える必要があります。それは下記のような提案を含みます。

インサーションオーダー:固定価格、データ、100%配信、最適化、キャンペーン後の分析などを含む

オートメイテッド・ギャランティード:Open RTB形式を除いた形式で、買い手のIOから移行したいという要望に応える自動化の提案

プログラマティックダイレクト:入札可能なデータ入札、価格コントロール、プライオリティオプション

プログラマティックギャランティード:データへのプライオリティアクセス、(売手・買手両者の)量的なコミット、オーディエンスマッチング、固定価格

テクノロジーイベントを訪問すると、プログラマティックを提供している多くのセールスの人々に囲まれ、どんなソリューションを必要としているのか質問攻めに合うことでしょう。IoTの活用などでオーディエンスの消費習慣は変化していくため、「在庫」は日々大きくなっていきます。広告の世界においては常に賢いセールスは必要とされており、マシーンラーニングやAIを利用したツールを活用した広告の売買における高いROIを実現するためのサポートが求められています。

オペレーションとセールスの間の分解点は消えはじめ、同じチームの人材となっています。分解点はまだ存在しますが、プログラマティックのオペレーションにおいて販売を強化することは必須である一方、2017年以降に伝統的な広告セールスが業界で活躍しようと考えた場合オペレーションを理解することは不可欠です。プログラマティックによってセールスが無くなるわけではなく、買い手が話を聞きたいと思うような知識の習得に努めない人々が必要とされなくなるだけなのです。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。