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Interview: 業界の健全な発展を牽引しながら、新しい広告テクノロジーの日本市場推進を担うcci

新しいテクノロジーが市場に参入する際、不安はつきものだ。業界の標準化など媒体社・広告会社・広告主と全方向への信頼を着実に獲得しながら、ワンストップのトータルソリューションを提供しインタラクティブ広告業界をリードしていく株式会社サイバー・コミュニケションズ(以下cci)。取締役副社長の小林千秋氏と取締役執行役員の桜井賢氏に、RTBなど新しい広告テクノロジーに対する日本市場の反応とcciのビジネスの方向性について話を伺った。

 

 

■  cciのビジネス概要を教えてください。

cciは、インターネット広告の立ち上げとともに成長し、インターネット広告のメディアレップとして信頼性の高い広告市場の拡大のために、広告会社に対してはプランニング・メディアバイイング等のサービスを、また、媒体社に対しては広告商品、企画商品の開発、テクノロジー、プラットフォームの提供を通じ、情報とビジネスのハブとしての役割を担ってきました。

多様化するニーズに合わせ、ワンストップでトータル・インタラクティブ・マーケティング全般をサポートするためのサービス群を拡充、サービス領域の拡大を図っており、

複雑化したインターネット広告市場において、媒体社・広告会社・広告主のそれぞれのビジネスがうまくまわるように、広告テクノロジーやそれに付随するサービスを提供しています。

 

■  cciが提供する広告テクノロジーの概要を教えてください。

cciが提供する媒体向け広告テクノロジーを大別すると、『アドサーバー』『アドネットワーク』『アドエクスチェンジ』の3つが挙げられます。

アドサーバーは、ご存知の通り、媒体社が活用する広告配信のためのテクノロジーです。RichAdの配信能力に特徴をもち、従来よりPCやIPTVへの配信を行っていましたが、携提している米国JumpTap社の技術とインテグレートすることでスマートデバイスへの配信もサポートしています。

アドネットワークプラットフォームの“ADJUST”は、ターゲティング技術の向上により、広告在庫に更なる付加価値をつけて販売することを可能にしています。参画媒体社数は約800社で、日本のブランド企業が安心して広告を出稿できる、信頼性の高いプレミアム媒体のアドネットワークとしては最大級を誇ります。

アドエクスチェンジの“OpenX Market Japan”は、入札方式で広告在庫を売買する証券取引のようなテクノロジーで、リアルタイムビディング(Real Time Bidding 以下、RTB)にも対応しているので、1インプレッション単位で最適な広告入札を行うことが可能です。

OpenX Technology社と独占的な提携を結び、昨年7月から提供しており、プレミアム媒体を中心に質の良い広告在庫を用意していることが特徴です。

 

■  cci が提供している広告テクノロジー周りのサービスを教えてください。

cciは主に広告会社に対するサービスを提供しています。

“PerformanceX Management”は広告主側の広告運用ツールであるデマンドサイドプラットフォーム(Demand Side Platform、以下DSP)が複数存在している現状に対し、あらゆるプラットフォームを活用し、メディアバイイングからターゲティングなど複合的な運用サポートを提供するサービスです。

また分析ソリューションにも力を入れており、IBMの“Coremetrics”やAdobeの “SiteCatalyst”等の解析ツールの導入、データ分析、レポーティングのサポートを行ったり、あらゆる第三者配信でトータルなキャンペーンを運用し、アトリビューションを含めた効果測定を行うサービスも提供しています。

cciの特徴としては、提供する広告テクノロジーに対し、その周辺のサービスをワンストップで提供している点が挙げられます。

 

■  現状どのような広告主がRTBのような新しい広告テクノロジーを活用してディスプレイ広告を出稿していますか?また、今後どんなタイプの広告主の活用が期待されますか?

米国ではブランド効果を期待する広告主の出稿が増えています。しかしながら、日本ではまだまだパフォーマンス重視の広告主が中心です。

DSP/RTBのような新しい広告テクノロジーを活用については、媒体社側ではどんな広告が表示されるのか、広告主側ではどんな媒体に配信されるのかわからないという事に不安を感じていらっしゃるようです。特に、RTBでは、(不適切なクリエーティブの掲載など)事後の対応になることが媒体社を不安にさせている要因でした。

これらの不安要素を払拭するために、cciでは広告掲載前に媒体社が原稿クリエーティブを確認できるツール“CheckerX”をリリースしました。

プレミアム媒体社が安心して広告枠の在庫を提供でき、DSP/RTBによるブランド効果指標を確立していくことができれば、もっと米国のようにブランド企業の出稿が増えるのではないかと思います。

 

■  実際にDSPRTBを導入した広告主の反応はいかがですか?

DSP/RTBのユーザーの行動データに基づく広告入札では、ターゲットにリーチする確率が高いので、昨年の8月から広告予算とインプレッション数の両方が右肩上がりで上昇し続けています。費用対効果の高さが証明されているので、Eコマースや保険業界など、コンバージョン重視の広告主の活用が増えています。

また、ターゲットリーチの拡大を目的としているブランド企業のアドベリフィケーションの実験導入も完了し、ブランド視点からも安心して広告を出稿するための環境の整備も進んでおり、今後の活用が促進されることが期待できます。

 

■  RTB/ DSP/ SSPと言ったデータドリブンな(データに基づいた)広告テクノロジー市場は、今後日本で拡大して行くと思われますか?

これらのテクノロジーは、現在日本市場において急激にプレイヤーが増えてきており、実際DSPに関しては、十数社があっという間に開発を進めてきました。この分野は競争が増えれば増えるほど市場が大きくなっていくので、とても良い傾向にあると思います。

あえて市場の成長課題を挙げるとすると、テクノロジーに対する誤解や不安要素をいかに払拭していくかという点があげられます。特に、認知を目的とするブランドキャンペーンを展開する広告主にどれだけこの市場に興味を持ってもらうかは、大きなチャレンンジでしょう。

 

■  アドエクスチェンジの発展により、他の4マス媒体からの予算がネット広告へシフトしていくと思われますか?

広告予算がシフトされるというよりは、媒体の併用が今後ますます増えて行くと考えています。

例えば、いまとても高い注目を浴びているSNSですが、これはTVを起因として連携することによって爆発的なパワーを持つ事が実証されてきています。

何かと何かの組み合わせといった、マルチデバイスを活用した複数の組み合わせでのコミュニケーション予算が増えていく時代になってきていると思います。この流れを受け、スマートデバイス広告在庫のアドエクスチェンジへのニーズも高まっています。

これらのニーズを受け、“OpenX Market Japan”も6月よりスマートフォン対応を開始しましたが、実際問題としてまだまだスマートフォン単体の在庫が少ないのが現状です。昨年、スマートフォンへの急激なシフトが発生しましたが、この新しいデバイスにおいて、広告商品全体の開発、ユーザーの新しい体験や面白みのある広告などの商品開発が、スマートフォン広告市場を拡大していくために急務だと思っています。

 

■  cciの今後の注力ポイントは何ですか? 

cciでは、『ソーシャル』『スマートデバイス』『ソリューション』の3つの領域にフォーカスしています。

広告テクノロジーの視点からいうと、“カオスマップ”を埋めることが目的ではなく、全ての領域でサービスに落とし込み、きちんとワークフローが成り立つような形で提供することが重要であると考えています。テクノロジーに関しては、それだけを個別に導入するのではなく、テクノロジーが増え、複雑な今の環境では運用を含めたトータルなサポートが必須であり、ソフトとハードの両輪が揃って初めて本当の意味でのサービスが提供できると考えています。

そこで、“トータル・インタラクティブ・マーケティング”をテーマに、ワンストップでサービスを提供できる組織体制を作りました。単に新しいテクノロジーを提供するのではなく、ビジネスとサービスの積み上げで、文字通り“ビジネスのハブ”としての役割を担って行きたいと思っています。

 

■  今後、これらの広告テクノロジーをアジアで展開していく予定はありますか?

アジアの市場には既に展開中で、一昨年アジアの拠点としてシンガポールに支社を設立し、“Skylight”というインベントリ(在庫)ブランドを発表いたしました。

東南アジア市場へは、大きく分けて2つの視点で戦略を展開していきます。オペレーター事業およびサポート事業です。前者は、“Skyligt”インベントリープールを、PC、モバイル双方に対応したアドエクスチェンジ、メディエーションプラットフォームを通じ、アジアでのインターネット広告市場でのエコシステム構築の一翼を担う戦略であり、後者は、日本と同様、広告会社、媒体社の間でプランニング、バイイングをはじめとするサービスを提供するものです。

インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイなどの東南アジアの市場は他の媒体と比較し、デジタル領域の規模はまだ小さいものの、急激に成長してきています。自社での広告販売以外のインベントリの活用、マネタイズ手法の多様化を実現することにより、より戦略的にデジタル広告領域を活性化していくことが、今後のキーであり、課題となっていることもあり、プラットフォームやRTBのようなソリューションを欲している企業が複数社ありました。また、これらの地域には既に多くの日本企業が進出しており、広告も多く出稿されています。広告のインベントリという視点では国境がなくなりつつあり、東南アジアでの市場は重要視しています。

過去、数々の広告テクノロジーが海外から日本に持ち込まれ、様々な努力を重ねながら日本市場に合わせて市場を作り上げてきた経験を活かし、持って行く武器(ツールやサービス)はありながらも、一方向ではなく、その市場にどう調整し、受け入れられるサービスを提供して行くかに重きをおきながら展開して行きたいと思っています。

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。