アドテック東京2012レポート:アドテク・エコシステムの活用で見えた、ブランド効果の可能性

10月30・31日と2日間にわたって開催されたアドテック東京2012。今年は10,000人を超える来場者を動員した同イベントでは、アドテクノロジーに関するセッションも数多く議論が進められた。その中で、アドテクノロジーのブランド効果について、日本を代表する広告主ライオン社の事例を軸にディスカッションが行われた、パネルセッションについてレポートする。

『アドネットワークやアドエクスチェンジが生み出すブランドにとっての価値とは?』

本セッションでは、オムニバス社 代表取締役 山本氏がモデレーターとして、ライオン社 宣伝部 中村氏、コムスコア・ジャパン社 代表取締役社長 西谷氏、米AudienceScience社
President Peralta氏らがパネリストとして登壇した。

 

ターゲティング技術の時代から、エコシステムの時代へ

 まず、モデレーターの山本氏が、日本市場におけるアドネットワークとアドエクスチェンジの歴史を振り返りながら、市場の全体像を説明した。

オムニバス 山本氏によると、アドサーバーのDouble ClickやアフィリエイトのLinkShareが台頭してきた1997年から2004年のインターネット広告黎明期は『課金モデルの時代』であったという。そしてGoogleのアドワーズなどが台頭してきた2008年頃までを『ターゲティング技術の時代』とし、2008年以降パブリッシャー向けのサービス(SSP)や広告主向けのサービス(DSP)などプレイヤーが分散され、それらのサービスをつなぐRTBのサービスが台頭してきた現在を『エコシステムの時代』と定義している。

現在ではRTB(リアルタイム入札)経由で月間約500億インプレッションの広告枠を購入する事が可能で、これは日本最大の在庫数を誇るYahoo!Japanの月間インプレッションに相当するボリュームであるという。

そして、RTBを最大限に活用するためには、ターゲティングに必要な『オーディエンスデータ』や、広告のトラッキングを可能にする『3PAS(第三者配信アドサーバー)』、広告露出先のコントロールによりブランドの安全性を担保する『アドベリフィケーション』、複数のタグ導入を容易にする『タグマネジメント』といった周辺サービスを上手く使いこなす事が重要だと強調した。

 

アドテクノロジーをフル活用した『アロマリッチ』プロモーション

 続いて、ライオンの中村氏が、現在進行中であるという新商品『アロマリッチ』のキャンペーン概要とそのブランド効果について説明した。

今回のブランドプロモーションでは、認知・興味の喚起段階で、TV CMだけでなく、3PASを活用して検証・最適化を行ったのが特徴。オムニバス山本氏が「今考えうるアドテクノロジーをフル活用したキャンペーン」と銘打つこのプロモーションでは、『第三者配信』『アドベリフィケーション』『InView計測』『ノンターゲティング・オーディエンスターゲティング・リターゲティングの広告配信』と言ったフルラインナップのアドテクを活用し、1週間毎にデータを分析、クリエイティブなど分析結果に基づき最適化のアクションを行った。

アドテクノロジーを駆使したプロモーションでは、『設計と運用』が重要であると、中村氏は強調する。今回の主な設計思想としては、下記のようにツールのロジック毎に異なる役割を考慮した上で設計を行った。

・  ノンターゲティング:『アロマリッチ』『柔軟剤』への無関心層に対するリーチ

・  オーディエンスターゲティング:『柔軟剤』には関心があるが、『アロマリッチ』には関心がない層へのリーチ

・  リターゲティング:『アロマリッチ』に関心のあるユーザー層を、検討段階へ引き上げ

 ブランドキャンペーンで重要なのは、ノンターゲティングを設計に組み込み、新しい層へのリーチを確保する事だと中村氏は提言する。リターゲティングではCTR(クリック率)が高くなるので、そちらに予算をシフトさせたくなるが、リターゲティングの効果を最大化するためには、そもそもパイを広げる必要があるという。

 キャンペーン効果の分析は、検索ユーザーを軸に、平均の閲覧PV・滞在時間・新規率を初回訪問と再訪問で比較をした。結果として初回訪問よりも、再訪問の方が閲覧PVと滞在時間の効果が高く、ディスプレイ広告を活用することにより、ユーザーを育てることができたという結果がでた。

また、CVRの平均を100とした時の指数を用いて、直接効果と間接効果を比較した場合に、オーディエンスターゲティングとリターゲティングは間接効果が直接効果を上回り、最も見てもらいたい『商品説明』『香りの説明』は間接効果のほうが多いという結果となった。この結果から中村氏は「今まで、枠ものとよばれるような広告だけを配信していると、直接効果しか見えていなかったが、広告のきちんとした効果になっていなかったという気付きを与えてくれた」と話した。

 

ディスプレイ広告の新ブランド指標『GRP

コムスコア・ジャパンの西谷氏は、本キャンペーンの効果測定において、アドテクノロジーが大きく貢献したのが『ユニークビューワー』の計測だったという。今回のように複数の3PASを使って広告配信をしても、オーディエンスデータのプラットフォーム技術を基盤として導入することにより、キャンペーン全体におけるユーザーの重複を排除して積算リーチ数=ユニークビューワーの推移を計測することが可能になった。これにより、ブランド効果の指標として『GRP(視聴率)』を活用することが可能だ。ただし、これを指標として使う場合は、TV CMのGRPは世帯視聴率なのに対し、デジタルディスプレイ広告のGRPは個人視聴率であるため、マスとデジタルのデータの違いを加味しながら最適化をする必要があるという。

まとめ:アドネットワークやアドエクスチェンジが生み出すブランド価値は?

最後に、今回のパネルディスカッションにおけるテーマ、『Ad network & Ad Exchangeがブランドに対してどのようなバリューを提供できるか?』について、山本氏はパネラーそれぞれの意見を聞いた。

西谷氏は、「日本人ひとりが1日に使っているデジタルデバイス・環境への接触時間に対して、アドスペンド(広告費)に含まれるデジタルの割合が圧倒的に少ない」と述べ、今回の事例によりブランド企業への阻害要因であった安全性とスケールの課題が解決されたことにより、「今後オンラインとオフラインの最適配分ができるようになるのではないか」と見ている。

中村氏は、市場が活性化されるためには「広告主側だけが結果が出ればいいのではない」とし、「パブリッシャーサイドとブランドサイドが広告枠の適正で取引できるように、透明性のある広告の取引ができるようになるのが重要」としている。

Peralta氏は前2人のコメントを受け、「ブランド企業がよりオンラインに予算を使うには、透明性が必要。テクノロジーが浸透するにつれ、ブランド企業はよりUniversal view of customer(統一化した顧客視点)が重要と考えている」と述べ、現在のエコシステムは「消費者にとっても、パブリッシャーにとっても、広告主にとっても正しい価値を生み出している」と見ている。

山本氏は、「運用することが広告主に取ってのバリュー」とし、運用はユーザーとのコミュニケーションであり、「ユーザーとより深いコミュニケーションをとることが、AdExchangeの価値」であると述べた。

最後に、ライオン中村氏が広告主から会場に来ているエージエンシーやデジタルベンダーへのお願い事として、「今回のような運用を今後何十ブランドにも広げて行くには、今のスタミナ(=社内のリソース)では足りない」とし、今後運用をサポートできる人材を提供してほしいといって、セッションが終了した。

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大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。