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[EMEA] GoogleのTag Managerはタグマネジメントのコモディティ化を招くか?

 By Jon Barton, CEO, TagMan

(10/25配信のEMEA記事の日本語版。オリジナルはこちら)

Googleのタグマネジメントツール提供開始により、日本でもこのツールへの関心が高まっています。今回は、エンタープライズ版のソリューションプロバイダーの代表格である、米TagMan CEOによるコラムの翻訳から、無料版・エンタープライズ版のメリットとデメリットを考えてみていただきたいと思います。

最近タグマネジメント分野へのGoogleの進出が話題になっている。10月始めにExchangeWireがこれについての考察をまとめているように、このGoogle Tag Managerのローンチは同社が提供しているサービス依存をより強固にする戦略であることは明らかだ。来年にはeコマースのグローバルな売上げ予測が1兆ユーロ(約103兆円)を超えるこのタイミングで、タグマネジメントの分野への進出は、まさに好機を捉えたとみることができる。

TagManがタグマネジメントの先駆者として5年前にこの業界を開拓して以来、タグマネジメントの分野は中小から大手まで幅広い企業の需要が高まってきたと同時に、サービス提供者も増え、急激な成長を遂げてきた。最近のタグマネジメント・ツールとテクノロジーに関するForresterリポートによると、タグマネジメントを利用するユーザーは、その効率性・柔軟性およびページロードの負荷軽減に魅力を感じ、増え続けるデジタルチャネルの維持を助け、カスタマー・エクスペリエンス(顧客経験価値)の中心的存在であるとされている。Google Tag Managerはこの市場が拡大している事を示す単なる兆候の一つに過ぎず、タグマネジメントの必要性をより正統化したものだと言えるだろう。

これには誰も異存はないだろう。この数週間というもの、多くのコメントがこれに同意するものばかりだった。ここで問題提議したいのは、今後タグマネジメントのコモディティ化が進むかどうかということだ。

10〜15年前、他の分野、例えばアドネットワークやウェブ解析でみられたように、今回Googleの台頭により大きなビジネスインパクトを受けるのは、低コストが売りで差別化要素や大きなクライアント基盤を持たない、小さなタグマネジメントベンダーだろう。革新的な技術をもたないこれらの企業は、Googleの提供機能と直接的な比較対象とされる可能性は高い。こういったケースでは、クライアントはより安い、Googleの場合は無料の、選択肢に流れて行くのは疑う余地もないだろう。

しかしながら、明確なプロポジションをもち、すでにビジネスを確立させている大手プロバイダーにとっては、特に大きな影響を受けることはないだろう。ウェブ解析分野においては、大手企業はGoogleの無料ツールではなく、拡張機能や拡張性のあるデータに価値を見いだし、エンタープライズ版のウェブ解析を利用するのと同じように、タグマネジメントにおいても性能やカスタマーサービスが充実している、より洗練されたタグマネジメントシステムが大手企業に求められるはずである。

また、Googleが広告から莫大な利益を得ていると知っている大手広告主は、Googleが提供するトラッキングやタグ製品におそらく疑問をいだくだろう。サーチ分野はGoogleの独壇場であり、ディスプレイ広告においても市場を牽引している現状、それら製品から得られるデータやタグサポートには少なからずバイアスがかかっているはずである。Webtrends社のAlex Yoderの言葉を借りれば、これは“狐に鶏小屋を見張らせているようなものだ”といえるだろう。

TagManは、他のどんな技術との連携もサポートできるよう設計されており、クライアントに選択の自由を提供している。そして、これこそがタグマネジメントシステムを導入するそもそもの動機なのである。また、データの所有権にも問題がある。TagManでは、データの所有権はタグマネジメントプロバイダーではなく、クライアントに帰属するが、Google製品においてはそれが当てはまらない。

タグマネジメントシステム上でインテグレーションされる第三者サービスプロバイダー各社も、エンタープライズ版のタグマネジメントシステムとパートナーシップを組む事により、恩恵を受けることができる。その良い例が、クライアントとパートナー各社のニーズを充分理解した上で、TagManが提供開始したSTREAM™ グローバル・パートナー・プログラムだ。簡単に言えば、STREAMはパートナー企業が提供するサービスを我々のソリューションにインテグレーションするサービスである。認定されたパートナーのサービスは、TagManの’Drag-&-Tag’ライブラリに組み込まれ、複数のマーケティングや分析ツールを導入する際も、タグ導入が自動化されるため、広告主もこのパートナープログラムから恩恵を受けられる。

TagManが持つこの技術が、最も大きくかつ強固なデジタルマーケティングのポートフォリオをサポートし、パフォーマンスやデータの質、そしてクライアント企業やパートナー企業の分析やマーケティング活動に欠かせないタグ導入の効率化をサポートすることを可能にする。

タグマネジメントのソリューションを選ぶ際には、(デジタルマーケティングの領域の)エコシステム全体を横断してクライアントのニーズをサポートすることができ、タグ導入・データ・サイトのパフォーマンスなどの課題に対してバイアスのかかっていないアドバイスができるプロバイダーを選択することが、正しいビジネス判断であるということを、私は強調したい。

最後に、無料が常に最良の選択ではないと言う事をお伝えしたい。特に、最適化、売買、オンラインビジネスのパフォーマンスなど基盤テクノロジーに関してはとても重要だ。もし、無料のツールがあなたのビジネスの主要な課題やビジネスを後押しする助けにならないのであれば、利用する価値はなく、品質、サービス、そして柔軟性こそが優先されるべきポイントだと思う。ツールの柔軟性と品質を犠牲にしてまで無料を優先させることには警鐘をならしたい。またこの選択による機会損失とトータルな所有権に関するコストに対し疑問を呈する。

今後タグマネジメントシステムは、マーケティング担当者にとっては必要不可欠であり、今回のGoogleのこの領域への投資は、この現状への単なる追い風に過ぎない。タグマネジメントシステムに機能の洗練さと柔軟性を求めるのであれば、エンタープライズ版が適している。そしてTagManは独立性を保ち、あらゆる状況に対応できるソリーションを提供できるエンタープライズ版であることが、マーケティング担当者の方々に支持されている所以だ。

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。