Interview:タグマネジメントにセキュリティー機能搭載で、アドテクノロジー市場の活性化を牽引するFringe81

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昨年、Yahoo! Japanの米BrightTag社との提携や、Googleのサービスリリースにより日本でも注目を集めた「タグマネジメント」。ウェブ解析やリターゲティング広告など、ウェブ上でデータを活用した分析・マーケティング・広告施策を実行する上で、サイトへのタグ導入は必要不可欠だが、それと同時に新しいテクノロジーがでてくるたびに、タグの導入・管理が煩雑になりオペレーション的な課題が多く発生している。そこで今や世界中のデジタルマーケティング担当者の熱い支持を得ているのが、シンプルな同一タグを全ページに埋め込むだけで、他のベンダーのタグを一元管理できる「ワンタグ」の仕組みだ。この流れをいち早く察知し、アドテクノロジーのタグマネジメント機能に、セキュリティという付加価値をつけて新サービス「TagKnight」のサービスリリースを1月9日発表したFringe81。今回の開発の背景について、同社 代表取締役の田中弦氏(写真左)と、digitalice事業部、執行役員 兼 事業部長の佐藤洋介氏(写真右)にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan編集長 大山忍)

 

 
■  デジタル広告業界のインフラを作って行きたい

Fringe81_resized_picFringe81のビジネス概要を教えてください。

田中 もともとFringe81はRSS広告サービスから事業を始めました。RSS広告は、グーグルさんやトランスコスモスさんがこの市場に参入していましたが、皆さん撤退されて現在は100%のシェアをもっています。

RSS広告は、そんなに大きい市場ではなかったので、これが生きているうちに新しい事業を始めようと考えていました。RSSというのは、実はものすごいボリュームのトラフィックを生むので、それをさばくインフラがかなり大変なのですが、それをコアに開発をしてきたので、弊社の強みはインフラだと考えたのです。そこで、今後DSPなど、いろいろなサービスが全て通信で接続される広告業界のインフラを作ろうと、第三者配信アドサーバー「デジタリス (digitalice) 」のサービスを始めました。

デジタリスは日本製の第三者配信でグーグル認定を受けたアドサーバーの第一号です。グーグル認定を受け、本格的にビジネスを始めたのが2011年の9月からです。

 

■ ワンタグサービス提供の失敗から見えた、あるべきタグマネジメントの姿

— 新サービス「TagKnight」の開発背景を教えてください。

佐藤 今回リリースしたサービスは、このデジタリスを運用する中で上がってきた課題を解決するためのアプローチでした。もともと我々もDSPのタグをお客様に導入していただくために、既存のサービスの一部として「ワンタグ」を提供していました。

 

– ワンタグと言うのは、シンプルなタグを1個ページに埋め込んでおけば、後から管理画面上でタグを紐付けて設定変更できるという技術ですね。

田中 そうです。まとめてタグをページにあげられるツールです。ただ、その機能だけじゃ駄目だというのが、運用するなかで分かってきました。

 

– なるほど。何が駄目だったのでしょうか?

田中 一番よくある話が、デジタリスを入れたらページが遅くなったと言われてしまった事ですね。もちろん我々のタグが原因では無く、デジタリスのタグに紐付けたDSPやリターゲティングのタグのいずれか一つに問題が発生してしまっていたのですが。

このような問題が発見されると、広告主様や代理店様は、まず広告のタグを全部取る作業をしなくてはいけません。1個1個タグを入れ直して、どのタグが悪さをしていたのかを検証するわけです。その間当然広告は全部ストップですよね、コンバージョン情報が取れないので。今や、DSPやリターゲティングなど沢山のソリューションが出てきているなかで、このようなタグのトラブルが発生した際に、マーケターの人たちがウェブマスターに指示ができるかというと、これはかなり大変です。これだけ多くのマーケティングソリューションが出てくる時代に、きちんとそれらのタグを導入することの危険を察知し対処できるシステムがないと、お客様の事業活動自体を阻害してしまうことに気づいたわけです。そこで、セキュリティーに特化したタグマネジメントシステムを作ろうと思いつきました。

 

■  危機管理の視点から生まれたタグマネジメントシステム

– 今回リリースした「TagKnight」の特徴を教えてください。

佐藤 タグをサイトに埋め込むという行為はすなわち、クライアントサイトの中に異物があるということです。自分の体の中に全然違うロジックが動いているものが数年前にはなかったのが、今や1ページの中に10個、20個といった外部のサーバーと接続しているタグ、Javaスクリブトが入っているわけです。クライアントにとって、もっともまずい潜在的なリスクは、その「タグ」というものをコントロールできないという状況にあります。タグの導入状況を可視化し、エラーが起きてしまった場合は素早く対処するという危機管理の視点で「TagKnight」には『監視』と『管理』という機能があります。

『監視』機能の特徴は、エラーが発生している特定のタグを「検知」し、メールで問題発生を「通知」し、問題のタグを管理画面上ですぐに「編集」できるという点です。このように問題が発生しているベンダーとタグを特定できれば、他のキャンペーンへの影響を最小限に押さえた上で、対処できるというメリットがあります。

また、3月ごろの追加リリースになりますが、問題発生したタグを検知した後、そのタグを自動的に落とすという『自動検疫』機能も予定しています。『自動検疫』機能により、企業様はページのスピードなど、問題発生のレベル感を柔軟に設定することができるようになります。企業によって、ページ読み込みスピードなどの許容レベルは異なりますので。

 

図1_error_resized

 

■ マーケッターの視点から生まれたオーディエンスのデータマネジメント

–「TagKnight」の『管理』機能について教えてください。

田中 セキュリティー以外にタグマネジメントを運用する上でお客様から課題としてあげられるのが、リターゲティングの精度を上げたいという点です。リターゲティングはとても効果がありますが、コンバージョンした人をちゃんと除外しないと、既に商品を購入した人にリターゲティングしても意味がないだけではなく、ブランドを毀損してしまう可能性もありますから。このように、ルールを可視化して管理できているお客様は以外と少ないのです。いわゆる『オーディエンスのデータマネジメント』というものですね。

 

佐藤 現状、お客様のどのページにどのタグを入れるかというルールに関しては、代理店様が設計しているケースが多いのですね。

「ベン図」と言うのですが、どのようなユーザーに対してどのようにユーザーを足すか、引くか、除外するかと言ったルールをイメージして、それを直接URLで数式のように足したり引いたりする必要があるのです。例えばクリテオさんではトップのページのタグ、商品詳細のタグ、申し込みフォームのタグ、コンバージョンページのタグというように幾つかタグを分けて、どのユーザーがどこまで到達したかを判別し、自動的にリコメンドのバナーを配信するというようなことをシステムで行っています。

これらのルールを、日本の国産DSPである「マイクロアドブレード」とか、グーグルの「GDN」など、個別にルールを作っていくのですが、誰に対してリターゲティングを出すかというマーケティングの全体像としてはまったく統一されていないのが現状です。

 

田中 それがどれだけ大変かというと、例えば10個ほどDSPなどを含めソリューションを使っている場合には、10個異なる管理画面を開いてタグを個別に設定しなくてはいけません。他社のタグマネジメントを使っていたとしても作業負荷はあまり変わらなくて、管理画面へのログインはひとつでも、ベンダー毎にタグを設定しなくてはならないのが一般的なのです。

これが運用ともなるともっと大変になるのです。よくあるのは、リターゲティングを始める時に、まずクッキーのデータをためる必要があるのですが、2週間ぐらいたっても最初に設定したタグだけでは充分なデータが取得できないことがあります。その場合、追加で他の似たようなページにタグを足すのですが、複数リターゲティングを運用している場合には、ベンダー毎に追加の設計と設定の作業が発生し、煩雑になってしまうという訳です。

そこで、今回リリースした「TagKnight」の『管理』機能は全く視点を変えています。「TagKnight」の画面上でまず取得したいデータの全体像を考えてマスタールールを作ります。どのページでどのようなデータを取得するか、と言った感じです。そしてそれらのルール毎に、紐づいたベンダーのタグを設定することができるのです。すなわち、ルール視点でこのルールに紐づいたベンダーとタグはこれとこれ、というように管理できるようになるのです。すべてのベンダーのオーディエンスのコントロールをひとつの管理画面で一元管理できるというわけです。

そして管理画面上では、ルール毎にどれだけのPVやUUがあったのかデータがわかるので、リターゲティングの精度をあげるために、最初の設定から徐々にターゲティングユーザーを絞っていき、ルールの最適化を行うことが簡単にできるというわけです。

これにより、お客様や代理店様は、タグ設定の作業負荷を気にせずに、戦略レベルにより時間を費やす事が可能になります。

 

図2_rule_resized

 

■ 増え続けるアドテクノロジーのフル活用を可能にする

田中 あとひとつ、「TagKnight」には強烈なおまけが付いています。それが、タグ読み込みの『高速化』です。自社システムで実験してみたのですが、ワンタグを貼っただけの時と比較して、50%ほどスピードが早くなりました。

 

– これはどういうロジックで高速化になるのですか。

田中 いろんなロジックがあるのですが、すごく分かりやすい話で言うと、複数埋め込まれたタグの中で速いほうから読み出すというものがあります。例えばデータセンターが近いと物理的に速かったりするわけです。

 

– それでは10個タグが入っていたうち、1個遅いのがあったときに、そのタグが一番最初に読み込まれてしまうと他のタグの読み込みがすべて遅れてしまうので、速いものを先に読み込ませるということですか?

佐藤 通常ウェブサイトを上から下まで読むときには、コードは順番に読まれるのですね。ただ、タグというのは順番に読むべきものではなくて、いろんなサーバーに問い合わせがいくものなので、一遍に問い合わせてしまえばいいというのが考え方です。通常Javaスクリプトを順番に貼っていくと順番に組み合わされるので、われわれのコンテナの中に入れたタグを一遍に読み出してしまうというわけです。

 

– なるほど。「TagKnight」はタグのリスク管理もでき、オーディエンスのマネジメントもでき、かつ、タグを増やしても遅くならないので、どんどんソリューションを増やすことができるので、アドテクノロジーをフル活用しようというユーザーさんにたくさんメリットがあるということなのですね。ちなみに「TagKnight」でのタグのルールっていうのは、いわゆるアド系のタグのみのマネジメントですか。

田中 今のところそうですね。

 

■  デジタル活用の本来のメリットは効率化による戦略への有効的な時間活用

–  Fringe81の今後の方向性を教えてください。

田中 そうですね、僕らはやはりソフトウエアの会社だと思っていまして、このようなサービスを提供している理由は、より広告代理店様や広告主様も含むお客様に戦略を考えるところに時間を使っていただきたいと考えています。例えばタグの設定などというものは、やはり機械やソフトウエアに任せておいて、時間を有効に使っていただけるような環境を提供したいのです。そうでもないと、テクノロジーがなぜか人的工数を増やしてしまい、ネット広告の活用は大変なものだという認識が広がってしまいます。

せっかくDSPや新しいテクノロジーが出てきているので、ソフトウエアのパワーで作業を効率化し、戦略のための時間を買っていただくことを目指しています。この点に関して、僕らは崇高に目標を掲げています。

 

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ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。