歴史ある大企業で成功を収めたプログラマティックのシステムとは?[読売新聞×プラットフォーム・ワン]

Interview_Yomiuri+PlatformOne

ExchangeWireが9月に開催するイベント「ATS Tokyo 2014」では、ケーススタディのセッションに読売新聞東京本社広告局広告第六部の國谷一樹氏が登壇する。セッションに備えて、読売新聞の取り組みの背景について國谷氏と株式会社プラットフォーム・ワン常務執行役員CPO田辺雄樹氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan編集長 大山忍)

 

 

 

 

ブランドの価値を棄損しないプログラマティック システムを導入

 

–まず、國谷さんの現在の役割と責任範囲を教えてください。

 

Yomiuri 國谷氏國谷:読売新聞の全媒体における広告セールスは、すべて広告局というひとつの組織で行っています。私はそのうちの広告第六部というデジタル広告のセールス部署において、主にプログラマティックの広告を担当しています。そのマネタイズを最大化していくことが一番のミッションです。

 

 

–田辺さんに質問です。読売さんのプログラマティックの導入状況をご説明いただけますか。

 

田辺:日本における媒体社さんにとってのプログラマティックというと、タグをサイトに設置し、余剰在庫の範囲でただ単純にDSPとRTB取引きする、という形が一般的です。ですが、読売さんには手売りの純広告以外は可能な限りイールドオプティマイゼーションし得る構造となるよう、私たちのサービス「YIELDONE®」をご利用いただいています。また同時に、サイトに掲出する広告素材を可能な限り事前審査していただくことで、自媒体のブランド毀損を未然に防ぐ構造も提供しています。シンプルに余剰在庫のマネタイズのみを目的とすることとは逆行しますが、読売さんならではのプログラマティックとの向き合い方でないでしょうか。

 

 

–クライアントであるブランド企業を意識されたシステムですね。

 

國谷:そこが非常に有り難い部分です。媒体価値を下げたくないので、原稿は全て事前に目を通して掲載可否を判断していますが、プラットフォーム・ワンさんの管理画面はそれがやりやすいんです。

 

 

–140年という歴史ある企業で、プログラマティックという新しい技術を導入するにあたって苦労された点は。

 

國谷:まず、社内の理解を得ることが大変でした。現在でも紙の売り上げが大部分を占め、デジタルはまだまだ小さい。そんな状況下での新たな取り組みにはどうしても慎重にならざるを得ません。そこは社内における翻訳者、そして伝道師としての活動が重要でした。

サーバーの導入、契約、法務部への契約書のリーガルチェックなどは、当然ただ提出するだけでは終わりません。その一手がいかに社の利益に貢献するのかを説明し、少しでも前に進めやすくするかは社内のアーリーアダプターの使命ですね。

 

 

 

歴史あるビジネスとウェブならではのロングテールという両輪

 

–手売りからプログラマティックに変更したことによるメリットを教えてください。

 

國谷:ひとつはセールス力の再配置です。第六部は、現場の8人でデジタル媒体全ての広告枠を販売しています。そのためセールス力の選択と集中が必要でしたが、僕らが必死に頑張ってもどうしても売れない部分は、プラットフォーム・ワンさんがプログラマティックでお金にしてくれます。

なるべく高い収益を出してくれるという安心感があるので、プログラマティックを見る私を含む2人でそこに集中して、残りの人間はページビューの価値を理解してくれるクライアントさんに高付加価値広告を売っていくことが出来ています。

また、ページビューの伸びが頭打ちの現在、1ページビューの単価をいかに上げるかが重要ですが、そこもシステムで自動的に最適化してくれるのもありがたいですね。

 

 

–最適化して出来た余剰人員を、コンテンツ力、提案力というところに再配分し、全体的な収益を上げる構図ですね。

 

國谷:それを目指しています。紙の新聞のビジネスモデルはロフティヘッドで、ロングテールとは真逆の部分です。新聞広告は全国版カラー1ページの定価が5000万以上という世界で、それを支払えるナショナルクライアントを相手に商売をしてきました。

私たちが得意としてきたこの手法はウェブでも使えます。例えば、読売は@CARSというクルマに特化したWebマガジンを持っているので、メーカーとタイアップして新車のレビューをして、試験レポートなどで1ページ作ってグロスの代金をもらうことが出来ます。

一方、多種多様なニーズを含み、かつ単価がそれほど大きくないロングテールの部分は、人間が全てを追うとなると時間がいくらあっても足りません。この部分をプログラマティックで拾っていけば、ロフティヘッドとロングテール、両輪でマネタイズしていけます。

 

 

–これまでのコンテンツ力に加えて、ウェブならではのプラスαの強みはありますか。

 

國谷:双方向性と言われていますけど、それを可視化出来るようになったのは大きいですね。私たちは発言小町という人気掲示板を持っていて、そこにスポンサー向けの有償PRトピックを用意することができます。

例えば、その掲示板で、カロリーが高いから普段は我慢しているけれど、本当は食べたいものを募集しました。それを広告主の栄養士さんと一緒に試作して、実際に店舗で低カロリーなのに美味しいグラタンを提供しました。

これまでの一方的なスポンサーメッセージと違って、PRトピックに自分で書き込めて、それが実際のメニューとして提供される。つまり他人事が自分事になったわけです。ウェブという媒体を使うことで、クライアントとユーザーのエンゲージメントを強くすることに成功しています。

 

 

–プログラマティックの環境ではデータが採れますが、それによって得た付加価値はありますか。

 

國谷:ヨミウリ・オンラインでは、記事中にレクタングル枠があります。ここは純広でもCTRが高い場所で、右カラムのファーストビューレクタングルの0.1%に対して、記事中は3倍ほどあります。しかし、記事中はトップ面に出ないなどの理由で、枠としてはそれほど売れていませんでした。とはいえCTRが高いので、強気なフロアプライス設定をしてプログラマティック市場に出してみたところ非常に高く売れたのですが、その理由はCTRに加えて、90%超の高いインビュー率にありました。これを、枠として手売りをする際のセールストークに使うようになりました。

また、ニュースサイトという特性上、皆さん記事をきちんと読み終わってから広告に気付くパターンもあります。これがわかったことで、フェイス・トゥ・フェイスのセールスにおいて、「一番重要なのはGIFの最後のコマです」といったクリエイティブに関する提案も出来るようになりました。掲載終了後のレポートにおいて、読み通りだったという納得感も得られます。全業種で平均的なCTRしかデータとして出せなかったこれまでとは、セールスの質や格が違ってきますね。

 

 

 

ブランドとプログラマティックをさらに融合させたシステムへ

 

–日本ではプレミアムパブリッシャーのインベントリーが少ない状況ですが、どんなことが課題なのでしょうか。

 

Platform One 田辺氏田辺:2点考えられます。デジタルでは、広告露出の結果が一定の範囲で顕在化されますし、広告主様側でさまざまな評価、効果検証を行うようになっています。そんな中、市場全体における「広告枠をなるべく安く買うことだけで広告効果を上げる」というスタンスが強いと、プレミアムパブリッシャー在庫の単価は相応のものとなるためニーズと一致せず、市場に広告在庫を拠出するモチベーションも高まりません。また、これまで純広告でお付き合いされてきたような広告主様のキャンペーンが、必ずしもプログラマティックを活用されているわけではないことも原因のひとつと言えるでしょう。

これら2つの課題を解決する手法として、「YIELDONE®」ではプライベートエクスチェンジという取引モデルを提供しております。このモデルの導入により、プログラマティックにおいても、特定の広告主様・媒体社様両者が合意する条件下(主にCPM単価)で、純広告でしか購入できない広告枠へも特定銘柄を優先して露出する構造が可能となります。また純広告さながらに、一定期間内で露出量を保証しながら取引するケースにもご活用が出来ます。

DSPには広告露出機会の購入条件、SSPには在庫拠出、とそれぞれのサービスをシンプルに活用することも良いですが、元来在る両者の複雑なニーズにも、こういった手法を提供することで対応していきたいと考えています。

 

一方で少し考え方を変えますと、広告主様は、ご自身の尺度で広告露出の価値を決め、プログラマティックにおいてはそれをCPMに換算して取引を行っています。これと同じアプローチを媒体様側もしてみてはどうでしょう。つまり、インプレッションやクリックと言ったこれまで一般的だった指標にとらわれない、自社サイト、ないしコンテンツの価値を証明し得る新たな指標開発をまず検討してみる。オリジナルである必然はないですし、リーチやGRPの転用といった既存の尺度でも良いと思います。媒体様ごとに違うのかもしれません。新たな売り手の指標を広告主様に理解していただきながら、それをCPMに換算して取引するという形が実現すれば、純広告以外でもプレミアムパブリッシャー在庫がプログラマティック市場に流通する一助となるのではないでしょうか。

 

國谷:評価指標は欲しいですね。例えば極端な話、ニュースサイトの1クリックと、アダルトサイトの1クリックの価値は一緒なのか。コンバージョン増加目的の通販広告と、企業広告やブランドリフト広告におけるクリックの価値は同じなのか。

 

田辺:CPA最小化やコンバージョン数最大化を目的とするプロモーションにおいて、短期的にこれらに寄与する広告露出面はポイントサイトが多くなるケースがあります。ですが、こうしたプロモーションを展開する広告主様において、これまで以上に注視する指標となってきた「LTV」を考慮すると、そうしたサイトで獲得されたコンバージョンの「LTV」への寄与は低く、中長期的なプロモーション展開の判断を誤ってしまっていた、という調査結果を数多く耳にしています。その細かな理由の説明はここではさておき、全ての商材でそうであるとは断言できないながらも、こういった事象は國谷さんの問題提起にも通じるところです。また今後においては、クリック、すなわち広告主様サイトへの流入元の価値も見直されていくのではないかと肌で感じています。

 

 

–今までパフォーマンス系が多かったデジタル広告ですが、ブランド企業の傾向はどうでしょうか。

 

國谷:お問い合わせ件数も増えていますし、ブランドコミュニケーションをウェブでやりたいというクライアントさんも増えています。

 

田辺:第三者配信サービス活用の一般化が進んでいることもありますが、DSPと プライベートエクスチェンジとの併用で、ディスプレイのプロモーション全体のリーチを把握できる時代になってきています。また、デジタルのみでのデータ収集に課題を感じながらも、アンケートを通した態度変容調査も可能になりました。

この限りではまだまだ不足している感は否めませんが、一歩一歩、ブランドさんがデジタルに対してもっとポジティブになれる下地が整ってきたのかなとも感じています。

 

 

–2年目の取り組みについてはイベントで発表していただきますが、次に目指していらっしゃるところは。

 

國谷:ブランドリフト提案とプログラマティックを融合させていきたいですね。弊社とプラットフォーム・ワンさんの2社で提案を投げかけ、キャンペーンを丸々もらいます。「ヨミウリ・オンライン×クライアント名」で良質なサイトやコンテンツを作って誘導しつつ、離脱した人はプラットフォーム・ワンさんで追いかける、とか。

リーチを広げるため、プラットフォーム・ワンさんが別ターゲットを設定して、LPはうちのサイトにするなど、弊社とプラットフォーム・ワンさんで共同の商品開発をしていきたいと思います。

 

田辺:読売さんの「ヨミドクター」で、医療の広告主さんや啓蒙クライアントを獲得して、読売オンライン×○○製薬といったコンテンツも組めますね。

Interview_Yomiuri+Platform One

 

–企画力、コンテンツ力という御社の強みと、プログラマティックを掛け合わせてブランドキャンペーンそのものを最適化していくわけですね。

 ありがとうございました。

 

 

(編集 : 三橋 ゆか里)

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大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。