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「予算はあるが、ロボットはキットカットを買ってはくれない」-ネスレのデジタルリードが語る

KitKatAndroid

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

ネスレの英国のデジタルリードによれば、広告主は、プログラマティック技術を使って購入された広告インベントリに対してはより高い金額を払うことをいとわないが、アドテクパートナーは100%の透明性を提供し、メディアオーナーはよりユーザーのエンゲージメントを高める広告フォーマットを生み出す必要がある。

英国ネスレのデジタルリードであるガウェイン・オーウェン氏は、ロンドンで開かれたIAB RTA (リアルタイム広告) 会議で登壇した。その中で彼は記者団に対し、年間30億ドル超を広告媒体に費やす同社は、プログラマティックによるメディアバイのコンセプトは受け入れるが、パフォーマンスの更なる確実性をより求めていると指摘。

「2014年はまさに (プログラム・バイイングのための) 実験と学びの年だった。その活動は、市場にもっと魅力的なブランド広告フォーマットをもたらすパブリッシャーによってより加速されていった」とオーウェン氏は述べた。

さらにオーウェン氏は、メディア・バイイングの透明性の大切さを強調し、こう付け加えた。「私は、(メディア・バイイングを通じて) もっとマーケットシェアを伸ばしたい。しかし、もし自分の広告が見られることがなければそれは適わない。ロボットはキットカットを購入できないからね。」

ネスレは2014年を、デジタル・エージェンシーや、アドテク事業者との関係を見直すのに費やした。米国では登録エージェンシーの数を15から8に削減し、同社が協同するデマンドサイド・プラットフォーム (DSP) の数を減らしている。こうしたプロセスは、オーウェン氏の言葉によると、「当時は非常に大きな議論を呼んだ」という。

しかし、同氏によると、このお菓子の大企業は今、結果としてデジタル広告パートナーとの関係をもっと信頼できるものに確立している。「私たちは、ビデオプラットフォームを色々変更した結果、現在では100%の透明性を確保できている。今や私はいつでもログインして自分の広告予算の内訳を一目で見ることができる」と述べた。

特に、キットカットやラウントリーなどのブランドを持つネスレは、オンラインのビデオ広告フォーマットに関心が高い。それは、視聴者の傾向がオフラインからオンラインに移行する中で、広告主が熱心に探求しようとしているものでもある。

「広告の面では、当社はテレビ主導の企業だ。だが、消費者がテレビから遠ざかり、ますますオンラインに時間を費やすようになってきている。ビデオが私たちにとって非常に魅力的な新しい機会を提供するようになっており、だからエージェンシーと一緒に働くことが重要だ」と述べた。

続けて彼は、高品質なメディアのオンラインインベントリを購入するプロセスを「金鉱を採掘するような」と表現し、視聴性が高く、視聴完了率の高い高品質な広告フォーマットに対するニーズを強調した。

「私たちはネスレであり、あなたと共に広告を出していきたい。もしあなた達が、なかなか手が届かないテレビの視聴者にリーチする機会を提供してくれるのであれば、それに対するお金は保証する」と話す。

彼はまた、プログラマティックでのメディア購入を検討しつつあった放送局を後押ししたサプライサイドプラットフォームと、フランスに本拠を持ち、ビデオ広告フォーマットを従来のパブリッシャー環境に持ち込んだTeads社を賞賛した。

オーウェン氏は、ExchangeWireの定期的な投稿者であるTremor Videoのシニア・プログラマティック・ディレクターのスー・ハント氏とパネル・セッションで同席し、いくつかの意見を述べた。ハント氏も、在来のパブリッシャーがプリントからデジタルに移行する中での直面する困難について話した。

ハント氏によると、こうした事態は、(静的バナー広告を販売していた) 初期のデジタル・メディア時代から、広告主が市場でますます動画広告フォーマットを求める現代のプログラマティックの時代において深刻化している。

「いつでも人間対機械の難しい議論がある。プログラマティックによる方法は、(最初の段階で導入を決断する責任のある人々を含む) 組織の仕事を犠牲にする」と彼女は述べた。

しかし、パブリッシャーには、プログラマティックでの広告購入のプロセスで減少しがちな広告によるマージンを確保する能力が求められている、と説明。「けれども、利用可能になるインベントリの分量は、すべての営業部隊にトレーニングをして営業活動をさせて、デジタル提案の一部としてプログラマティック広告を販売させるには十分でない」と言う。

また、ハント氏は、これらの「物事を正しく行っている」メディアのオーナーは、需要サイドのプレイヤーとより協調して仕事をしていると付け加えた。「それほど『「彼ら」と「私たち」』という対応は減ってきている。相手側が (自分たちの利ざやから) 何かを搾取しようといった考えの無い人々が進歩に貢献している」

この点について、オーウェンは「私はこの技術に関心があり、あなた達のインベントリに適切な価格を支払いたいと思っている。私はもっとお金を使いたい。プールの底を探しても、よいインベントリを見つけることはできないからね」とコメント。

彼はさらに、「もし私が25万のインプレッション数が必要であれば、パブリッシャーや、私のビデオ担当のパートナーと話をしなくてはならない」と話し、透明性の必要をあらためて強調した。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。