InMobiが語るAPACのモバイル広告、プログラマティック市場の現状と今後 [インタビュー]
日本を含むAPAC地域で、モバイル広告市場の初期から市場を見続けてきたインド初、アジアのモバイルアドネットワークの雄であるInMobi。同社は、現在のAPAC地域のモバイル広告市場をどのように見ているのであろうか。 InMobi ヴァイスプレジデント&アジア太平洋・中東・アフリカ代表のJayesh Easwaramony (ジャイェッシュ・エースワラモニー) 氏に聞いた。
(聞き手:ExchangeWire編集長 野下 智之)
InMobiが世界市場に新たに仕掛けるRubiconとの共同事業
-- JayeshさんのInMobiにおける役割と職務、またこれまでのご経歴についてお聞かせください。
私は現在、APMEA(アジア太平洋、中東、アフリカ)地域におけるInMobiのVPおよびGMとして、日本、韓国、東南アジア、オーストラリア、中東とアフリカにおけるInMobiのオペレーションを統括しています。以前は、アジア太平洋地域のビジネスデベロップメント部隊を3年間にわたって指揮していました。
InMobi入社前は、Frost & Sullivan社でTMTプラクティスのリーダーを務め、Samsung、SKT、Axiata、Telkomなどのモバイル業界やメディア業界の大手企業にアドバイスをしていました。Frost & Sullivan社の前は、インドのNewscorp社で有料テレビ事業や他メディアの投資の準備、またTataグループの通信ビジネス参入に携わりました。
-- InMobiの日本を含む世界各地の事業について、近況を教えてください
前年と比較して、日本を含む世界各国の市場でInMobiは着実かつ順調に成長を続けています。北米事業は当社に最大の収益をもたらす市場に発展しましたし、また欧州、中東、およびAPACの市場においても大きな成長を遂げています。
InMobiは現在、アドネットワークの規模を拡大することに注力しており、世界中の10億人を超えるモバイルユーザーに広告を配信しています。なお、日本市場においても、モバイル広告テクノロジーの革新性 を受け入れてもらえる余地はまだまだあると考えており、今後も大きな成長を見込めると確信しています。
-- Rubicon Projectとネイティブ広告のアドエクスチェンジ事業について詳しく教えてください。
InMobiとRubicon Projectは、モバイル広告向けとしては世界で初めて、プログラマティック・バイイングおよびセリングのマーケットプレイスを開設しました。このマーケットプレイスでは、これまでにないグローバルな規模でモバイル向けネイティブ広告の取引ができます。
私たち二社の提携により、数百の購入プラットフォームで構成された、世界最大級のモバイルファーストかつプログラマティックな取引ができる市場が構築されました。 これにより、数万の広告主が、30,000のモバイルアプリにまたがる合計10億人の月間アクティブユーザーにリーチできるようになります。
モバイルユーザーの動向に深い理解を持つInMobiは、最適なネイティブ広告をユーザーに効果的に配信することが可能です。また、これによるモバイルユーザーの広告へのユーザエクスペリエンスの向上をお約束 します。
InMobi Exchangeと Rubicon Project Advertising Automation Cloud の結びつきは、プログラマティックなネイティブ広告の売買市場を飛躍的に拡大させます。また このソリューションは、デジタルメディアの売買を次の次元へと導くものとなると信じています。
日本、そしてAPAC地域のモバイル広告、プログラマティック市場の現状と今後
-- モバイルのプログラマティック市場はAPAC地域で広がっていくのでしょうか?
世界市場において、モバイル向け広告費用のプログラマティックへの移行はどんどん加速しています。たとえば米国では、モバイルのディスプレイ広告費の15%がプログラマティックに費やされていると言われています。2015年末までには、米国の広告費の最大25~30%が、プログラマティックに移行するのではないかと予想しています。
APAC地域におけるプログラマティックへの移行はこれまで米国に対して遅れをとっていましたが、昨今、主要業界の広告主様から大きな関心が寄せられています。
また、ネイティブ広告は、その優れた広告効果から需要が急増しています。その為、InMobi ではネイティブ広告のプログラマティック市場の拡大化に力を注いでいます。
-- APACの各国(中国、インド、インドネシア、日本、オーストラリアなど)の将来性をどのように見ていますか?
APAC地域には、「成熟したデジタル市場」と「モバイルファースト市場」の2つのタイプの市場があると考えています。
「成熟したデジタル市場」には、日本、韓国、オーストラリアなどが含まれます。これらの国では、ブロードバンドの普及率が高いため、スマートフォンが一般化する前から、デジタル市場向けの広告費の比率が高かった傾向があります。
インドやインドネシア等の「モバイルファースト市場」では、モバイルがデジタル消費の中心となっています。スマートフォンユーザーが1億人を超えており、大変速いスピードでエコシステムが変化しています。
中国市場はすでに成熟しており、大規模なアプリのエコシステムとモバイルでの動画の消費が大きな原動力となっています。
モバイル広告市場の規模では、現時点で中国と日本が最大です。2015年、これらの国は40~50%のペースで成長を続けると予想され、非常に大きな将来性を有しています。その次が韓国とオーストラリアで、さらにインドとインドネシアが続きます。
-- ブランド広告主はモバイルへの投資を開始しつつありますが、日本ではまだそのような動きはありません。どのような理由が考えられますか?
日本のブランドの多くは、モバイルWeb上のバナーを利用しており、ネイティブ広告や動画のような新しいタイプのスマートフォン広告の手法を取り入れていません。これが主な理由でしょう。 また日本では、モバイルアプリではなく「Web サイト」を中心に考える傾向が依然として強いと感じています。今日のオーディエンスの多くはモバイルアプリを利用しており、そこには大きなチャンスが潜んでいます。実際、モバイルアプリはWebサイトに比べて利用頻度が65%以上促進されることがわかっています。リッチメディアのような創造性の高い広告手法も、日本ではまだ他国と比べてあまり浸透していません。
GoogleによるInMobi買収の噂
-- InMobiがGoogleに買収されるというニュースが広まりましたが、この噂が広まった理由は?
InMobiが買収されるという報道は、完全に推測に基づいたものでしかありません。InMobiはこれまで、高度な革新性 によりマーケットを牽引してきており、これからも席巻し続けます。お客様、パートナー様に対して私たちが築き上げてきた実績そのものが、InMobiがこの業界のリーダーであることを証明しています。InMobiは、モバイルユーザーに最高の広告エクスペリエンスを提供するために存在しています。潤沢な資金を擁する企業による買収の噂は、InMobiのように事業規模を拡大させ続けている企業にとって珍しいものではありません。
-- APAC地域と日本市場において、InMobiにとって今年の新たなビジネスチャレンジは何ですか?
InMobi のソリューションが持つ可能性を、広告主様へまだ十分に伝えきれていないのではないかと感じています。したがって、我々の課題の1つは、InMobiのプラットフォームとサービスがどのように広告主様のゴール達成に貢献できるかを啓蒙していくことにあると考えています。
また、様々な分野で競合他社が増えており、広告主が誤った方向に導かれてしまうことも十分に考えられます。それを回避するためにも、年内には、日本のマーケターに対して信頼できる有益な業界情報と最新のユーザー行動傾向の提供を目指しています。
(編集:三橋 ゆか里)
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。