APAC地域のプログラマティックビデオ市場の半分を占めるプライベートマーケットプレースとは
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
プライベートマーケットプレースによってプログラマティックによるメディア購入に勢いがつき、この専門的かつ明確なインベントリ取引の需要は、アジア・太平洋地域で益々大きくなってきている。
SpotXchangeによれば、同社のプログラマティックプラットフォームによって販売されたインプレッションの40%以上がプライベートマーケットプレースで取引されており、前年と比較すると2015年上半期で112%拡大している。
ExchangeWireは、SpotXchangeの創設者でCEOであるMike Shehan氏 を取材。プライベートマーケットプレースの魅力や、アジア太平洋地域でより受け入れられ易い理由などについて聞いた。
-- プライベートマーケットプレースの利用が増している要因は何でしょうか?
パブリッシャーや広告主は、予算をダイレクト取引などマーケットプレースでの取引に移すことで、お互いにより親密な関係の構築を目指しています。親密な関係があれば、インベントリの状況や価格について透明性が高まり、双方がより利益を得られるのです。
この仕組みにより、プログラマティックでのトレーディングに消極的な従来のメディアバイヤーは、オープンな環境でのマーケットプレースに抵抗を感じた際に実験的に試してみることが出来ます。また、買い手と売り手の両者がより適切な管理を行えることで、複雑な作業が軽減され、付加価値の高いインベントリへのアクセスが可能になります。
-- 業界が高い透明性のある取引を望むことを前提とした場合、プライベートマーケットプレースへの傾斜は、ステークホルダーをその逆の方向に導いているとは思いませんか?
実はこれは、業界にとって一歩前進することを意味します。マーケットプレースによって、バイヤーはより多くのオプション、コントロール、アドレサビリティ、効率化を実現できます。かつ、個々の広告がインプレッション毎にどこに配信されたかを把握することも可能になるのです。
-- プライベートマーケットプレース運用の利点と課題は何ですか?
プライベートマーケットプレースが広告主に提供するのは、双方向の透明性、プレミアムパブリッシャーからの高付加価値のコンテンツ、オーディエンスターゲティング機能、自動化、スケールメリットといったものです。例えば、約90%のインベントリを従来の直接販売で販売し、残りをプログラマティックによるマーケットプレースで安売り販売しているパブリッシャーは追加価値を逃しています。我々のマーケットプレースの提供するオプション、効率性、アドレサビリティを利用することで、より多くのインベントリに20%〜30%のプレミアム料金を課すことができます。
プライベートマーケットプレースの主な課題は、期待値の高いツールとして注目を集めて筒あるということに関係しています。買い手、売り手の両者の立場から見たセットアップに関する理解や、この仕組みを最大限に活用する方法については、今まさにパブリッシャーと買い手の双方が検討しています。買い手と売り手の当初の期待値と結果とは、必ずしも一致しません。パブリッシャー側が高価なCPMで一番高価格帯のインベントリとして取引しようとしているのに、いくつかの広告主は、オープンマーケットプレースと同じやり方、即ち小規模なユーザーを見つけようとするやり方でプライベートマーケットプレースに取り組んでいます。
-- APAC地域では、クオリティの高いインベントリが少なく、スケーラビリティーに欠けるため、プライベートマーケットプレースによって、プレミアムインベントリをその価格を支払う気のあるブランドに保証する事が出来ます。しかし当然それは小規模のブランドが敗れることを意味しています。より少額の予算でも大きいスケールを必要とするマーケターにとっては、他にどのような方法がありますか?
必ずしもそうではありません。広告主は、自身またはメディア代理店経由でのパブリッシャーとの関係に直接販売のインベントリについては委託しています。プライベートマーケットプレースの利用まで広げるかどうかを決めるのは、これと同じ関係なのです。自動化のお陰でより多くの同様な関係を構築することが出来、更にはそれが急速に広まっていきます。
世界的には、プライベートマーケットプレースはSpotXchange 経由のインプレッションの40%以上を占めています。APAC地域において同様に、今年末までにプログラマティックビデオ広告販売の50%を占めるであろうと予測しています。
-- APAC地域のパブリッシャーは、パブリックとプライベートのマーケットプレースのどちらとの連携を強化すべきでしょうか?
これは二者択一の問題と考えるべきではありません。並行利用、即ちオープンとプライベートマーケットプレースの組み合わせによって、プログラマティックバイイングの威力を増し、広告主にとって更に高いレベルの効率や効果を発揮するのです。購入側も販売側もそれぞれの取引形態の強みを活用するべきです。
-- アジアのモバイル市場は、幾つものOSやプラットフォーム、OTTアプリがあり、非常に複雑でフラグンメント化されています。そのようなアジアのモバイル広告領域においては(優れた管理能力、ターゲティングが行える)プライベースマーケットプレースがより適していると考えてよいのでしょうか?
そうです。バラバラで複雑な要素で構成されるような環境においては、プライベートマーケットプレースは両者にとってビデオキャンペーンのパラメータをより明確に設定することが出来、取引しやすくします。
APAC地域でSpotXchangeのプラットフォームを使ったモバイルビデオに費やされた広告費用は、2015年第2四半期で先年同四半期と比較して96%伸びています。また広告主が、このメデイア予算を大きいブランディング等のビデオキャンペーンに採用していくに伴い、今年のモバイルビデオのCPMはかなり上昇するでしょう。現在、該当の地域では、我々のプラットフォームでのモバイル利用は29%を占めます。この数字は世界平均やヨーロッパ、中近東地域より先行しています(それぞれ19%、11%)。
(編集:三橋 ゆか里)
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ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長 慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。