急成長を続ける日本のオンライン動画広告市場が次に超えるべき目標

サイバーエージェントが公表した、同社オンラインビデオ総研とデジタルインファクトが共同で実施したオンライン動画広告市場規模の予測と、広告主のオンライン動画広告利用動向に関する調査結果から、日本においてもオンライン動画広告が本格的に普及し、市場が急成長期にあることが疑う余地がない状況となった。

 

動画広告市場規模推計<デバイス別>(2014年-2020年)

同結果によると2015年のオンライン動画広告市場は前年比6割増の500億円規模に到達、また今後スマートフォン向け需要が主導し、2017年には1000億円規模に、2020年には2000億円規模に到達する。

 

今年に入り、Web・アプリ向けを問わずスマートフォン向けの動画広告商品が相次いでリリースされている。また、プログラマティック領域でもスマートフォンへの対応が進みつつある。動画広告市場は、過去数年間のYouTubeに依存した状況から変わりつつあり、インストリーム広告の領域でYouTubeにYahoo!・GyaOが追随、またインフィード広告、その他のアウトストリーム広告の領域ではFacebookやTwitter、その他新興のアプリ・メディアが単独あるいはネットワーク広告として登場するなど、広告商品の多様化が進んでいる。

 

無論、広告主側のすそ野も広がりつつある。動画広告市場予測に先立ちサイバーエージェントが公表した、大手広告主企業の動画広告利用状況に関する調査結果がそれを物語っており、動画広告の出稿率は年々増加の一途をたどっている。

大手広告主企業の動画広告出稿率(経年変化)

下記の調査結果からも見て取れるように、動画広告への投資姿勢に関してはまだ様子見の広告主も多いようだが、大勢としてはおおむねポジティブにとらえられているようだ。

2015年の動画広告予算の予定

広告主が動画広告に投資するうえでの環境も、ここ数年で大きく改善された。過去動画広告が広告主に対して敷居を高くしていたのは、クリエイティブの制作である。

 

テレビ広告を出稿する広告主であればともかく、それ以外の広告主が新たに動画広告向けにクリエイティブを用意するのは、それなりのエネルギーが求められ、それに耐えうる予算を持っている、あるいはデジタルにおける新しい取り組みが好きで熱意ある担当者がいる企業でなければ、なかなか実現は容易でなかった。

 

しかし、ここ数年で制作側のエコシステムが出来つつあり、例えば先日ヤフーが資本業務提携を行ったViibarのようなクラウドソーシングで低価格でクリエイティブを用意してくれるようなサービスの登場は、広告主のオンライン動画広告への投資をより気軽なものにさせてくれた。

またこのようなサービスは、テレビ広告をただ単にオンライン動画広告に転用するということのみにとどまらず、Webならではのクリエイティブを増やす後押しをしている。
 
動画広告のクリエイティブ素材

このように更なる成長に向けて環境が進みつつあるオンライン動画広告市場であるが、まだ超えるべき目標も少なからず残されている。そしてその一つが下記の調査データが示しているユーザーからの信頼の獲得である。

Intrnet Users In Select Countries In Asia-Pacific Who Trust TV Advertising, March 2015 110115-5

 

信頼度の差 テレビ広告 vs オンライン動画広告

このデータは、Nielsenのデータを参照し、eMarketerが公表した、APAC全域におけるテレビ広告、オンライン動画広告に対するユーザーの信頼度に関する調査結果である。

各国のインターネットユーザーに対して、テレビ広告とオンライン動画広告それぞれを完全に、またはある程度「信頼している」と回答したユーザーの割合を示している。

全体的な傾向を見ると、南アジア・東南アジア諸国の新興国ユーザーはテレビ・オンライン動画広告を問わず、広告に対する信頼度が高く、東アジア・新興国は信頼度が低い傾向がうかがえる。これを前提にすると、日本におけるオンライン動画広告に対するユーザーの信頼度は全12か国中で11位であることはさておき、テレビ広告の信頼度との差の開きも大きく、インドネシアに次いで2位となっていることは、オンライン動画広告がテレビ広告と同様のステージに上り、より多くの広告主から比較検討をされる場に上がるには、まだまだ改善されるべきことが残されていることを示唆している。

 

新しい市場は、大きくなり周囲からその存在が認知され、影響力が多くなることで課題が出てくるのはある意味において健全なことであるととらえ、前向きにこの課題に取り組んでいくことが、次のステージに向かうために求められることなのであろう。

 

 

 

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。