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融合が進む検索・非検索連動型広告市場において、業界最高水準の広告プラットフォームの運用ノウハウを強みに国内外市場で新たな優位性を確立 [インタビュー]

 

転換期を迎えつつある検索連動型広告市場を前に、アイレップ代表取締役社長CEOの紺野俊介氏に市場の現状と今後、そしてその中でアイレップが目指す方向性についてお話をうかがった。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下智之)

 
 

非検索連動型広告との融合こそが過去数年の検索連動型広告の最も大きな変化

―検索連動型広告市場が、ここ数年でどのように変化したかについてお聞かせください。

interview_irep_2皆さん周知のとおり検索連動型広告は、過去数年でスマートフォンのクエリ数が伸びた一方でPCのクエリ数が減りつつあるというのが、まずは大きいトレンドとしてあります。
一方で、両者を合わせた総クエリ数は増えています。ただし、この中には一部商用化しづらいクエリも含まれているのが現状です。たとえばスマートフォンクエリ数の多いもの中で、芸能人の名前のようなものがあります。こういう場合、CMなどでタイアップしている商品がある企業では、広告機会とすることもできるのですが、それでもやはり一般的なクエリに比べると限定的にしか利用できないというようなものが出てくるのです。そうすると、われわれが広告の対象とするユーザーの検索クエリ数は、大きな増減はないという傾向となっているのが現状です。

検索連動型広告市場は、従来から引き続きGoogle AdWords・GDNとYahoo!スポンサードサーチ・YDNというプラットフォームがマーケットを牽引していること自体は変わっておりません。しかし裏側ではユーザーユーザエクスペリエンスを高めるため、広告のマッチング精度の改善が進んできました。これに合わせて運用者側も対応していく必要があるのですが、中には5年前、10年前と同じようなことをやっているケースも見られます。広告も含め検索サービスは、ユーザー、プラットフォーマー、クライアント間の関係であるものですが、相変わらず高い専門性が求められます。そこでわれわれのような専門性を持った広告代理店がそれに対応しています。専門性のあるスペシャリストを自社内に確保できる企業は自社で対応していますが、そのようなケースは非常に限られています。そこで市場では広告代理店のマーケットは、ここ数年継続して一定の割合でしっかりと成長しています。

検索連動型広告を活用したデジタルマーケティングの施策における直近2,3年の変化としては、その施策が検索連動型広告単体で完結するものではなく、リターゲティングやYouTubeなど他の手法と組み合わせた施策としてつかわれることにより、より進化した活用が定着したことが挙げられます。
YouTubeで接触をして、潜在的なユーザー層にアプローチし、顕在化したニーズを検索で刈り取るというような手法がその一例です。
近年、潜在ユーザー層を発掘するための考え方としてオーディエンス拡張という概念が広まりつつあります。ディスプレイ広告の領域ではプログラマティック取引の普及などにより、デジタルマーケティング施策の高度化が進んでいますが、検索連動型広告はかならずそこに組み込まれて重要な役割を担っています。

一方、ディスプレイ広告やネイティブ広告など、検索連動型広告以外のいわゆる非検索連動型広告の領域の市場規模の比率が高まりつつあります。この中で検索連動型広告市場の伸びは緩やかになりつつあります。デジタル広告領域の検索と非検索との比率が大きく変わりつつあることから、当然エージェンシーサイドも人的リソースの配置転換に対応する必要に迫られています。

また、プログラマティックの普及とともに、近年はディスプレイ広告領域において、広告クリエイティブの重要性の高まりがみられます。
場合によりシステムを活用してABテストを行うなどかなり細かく高度な運用をする必要が求められるケースも増えています。

クライアントの取り組みが、単純に検索連動型広告、あるいはディスプレイ広告を出稿しているというような、単純な広告枠や、広告商品ありきの発想ではなく、ユーザーベースを基軸として広告というものをどのように取り扱っていくかという考え方に切り替わりつつあります。その中でエージェンシーはユーザーと向き合いそれに適したデータの取り扱いをすることが必要となります。また、それに合わせてメディアごとの予算配分に関する提案などをしっかりすることが求められつつあります。単純に「Yahoo!のスポンサードサーチの運用が得意です」あるいは「Yahoo!のブランドパネルを今なら低価格で提供できます」というような話ではなく、クライアントの事業目線で、「どのようなユーザーにどのような広告で接触をさせるか、あるいはその中でどこにコストを使うことが最適である」というような視点で提案をすることが必要になることが求められつつあることも、トレンドの一つであると思っています。

 

―貴社は売上構成比でみると、従来サーチの運用に特化されて強みを発揮していたという印象があります。この運用力の強みをディスプレイ広告の領域でも発揮していかれるという印象がありますが、どのように自社の強みを見ておられますか?

サーチとディスプレイ広告という違いは若干ありますが、いずれにしてもエージェンシーは、Google社やYahoo社などの大手広告配信プラットフォームに精通していなければ、適切な広告運用が出来ないのが現状です。
現在、DSPやSSPなど、自社が最大手と称している様々なプラットフォームがありますが、最終的に一番ユーザーと接触しているプラットフォームは、Google社とYahoo社のプラットフォームです。われわれは、この二つのプラットフォームに関して十何年かの間で多くの知見を蓄え、それに対するシステム化を行っています。このことがわれわれの強みの一つであることは、現在も変わらないです。しかしながら、クリエイティブの領域については、我々は今後精力的に強みとしていく必要があると認識しています。

 

―検索連動型広告の市況について、GoogleのIR資料を見ると、スマートフォンへのシフトに沿ってCPC指標が下がりつつあるという印象を受けます。実態としていかがでしょうか?

Googleは国別のデータを開示されていないので、何とも言いづらい面もありますが、もともと、日本のCPCは海外と比較すると安いといわれているマーケットです。したがって、その影響は受けにくいのではないかと思っております。
検索連動型広告も、マッチング精度が上がり、ユーザーにとっても良い広告が出る方向に進化しています。これは広告主にとっても同様であり、ターゲットとして意図していないユーザーに広告が出なくなったことにより、ポジティブな意味で広告精度が高まりました。精度が高まることで、無駄なクリックに広告費を支払うことがなくなります。

PCからスマートフォンへとデバイスの比重が変化することにより、広告主間での競争原理が働きづらくなりつつあります。これは、単純に言うとスマートフォン上では検索連動型広告の広告枠が少ないからです。このことが平均CPCを下落させる一因となっています。

interview_irep_3恐らくは、eコマース事業者さんの中にはPCからスマートフォンにスムーズに移行できた企業もあれば、そうではなかった企業もあるかと思いますが、今までPC向け検索連動型広告で投資できた100万円が、スマートフォン向けでは先述の広告枠の制限により、広告でPCと同水準の規模でユーザーとの接点を持つことが難しくなり、予算消化が出来ずに結果として投資できる予算が減ってしまったというケースもあると思います。このように、一部でスマートフォンへの移行過程において、市場成長を停滞させる要因は見られます。
ただし、市場全体としては、引き続き緩やかな成長過程にあるといえるでしょう。
これがわれわれのビジネスにおいて大きなマイナスになっているという認識はありません。

 

―検索連動型広告市場全体の業界を俯瞰した時に、過去数年でどのような変化がありましたか?

一部外資系企業の参入や撤退が見られたくらいで、全体としては大きな変化はないといえるでしょう。

 

―検索連動型広告市場では、カオスマップのカオス度合いは収まりつつあるのでしょうかね。

検索連動型広告市場の区切りでは、もう複雑化はしていかないでしょう。むしろ、これからは検索単体で市場を語ってもよいのかという方向に向かっている気がします。

 

―検索連動型広告市場とディスプレイ広告市場との垣根をなくしているのは、リターゲティング広告の領域でしょうか。

はい、そうですね。デジタル広告のプロモーションにおいて、検索連動型広告とリターゲティング広告とは、相関で見ることが必要となっており、ゆえに区分けがしづらくなりつつあります。

 

―その場合は何カオスマップにしたほうがよろしいのでしょうかね?(笑)

難しいですよね。広義の意味では、検索連動型広告やリターゲティング広告は、運用型広告であり、使う側の目的という観点でとらえると関係性が高いですが、広告の表示のされ方、あるいは表現方法という観点や、デバイスという観点では分けられるものでるでしょうし。
しかし、さきほど申し上げたカオスという意味においては、配信手段などによっても新たにグループ化されるものが、結構出てきていますよね。

 

―従来の検索連動型広告市場という枠組みにおいては、それほど大きな変化はないということでしょうか。

はい、ないと捉えていただいてよいかと思います。

 

―次に、検索連動型広告に対するクライアント側の変化については、どうお感じになっておられますか?

繰り返しになりますが、単純に検索連動型広告という区切り方で捉えなくなってきたというのが、一つの明確なトレンドです。
また専門的な話になりますが、Googleなどのプラットフォームにおける設定方法や設定すべき内容が変わりました。これにより、プラットフォーム側のアルゴリズム全体、つまり検索アルゴリズムではなく、広告配信に関するアルゴリズムが変わってきており、これに合わせた設定が求められはじめています。それが出来るかできないかにより、クライアントの最適化の可否が分かれるようになりました。このようなことが、過去2年間ぐらいの間に起こりました。これは2年ほど前に起きたGoogleのエンハンストキャンペーン、ヤフーのユニファイドキャンペーンという変更が起きたことがきっかけであり、その延長線上で色々なことが変わりました。
Googleは、情報開示をしたうえで、広告クオリティの評価に関して、アルゴリズムのバージョンアップをしました。これに合わせて広告配信者は、設定変更を余儀なくされています。このことに気づいているクライアントやエージェンシーは、現在その変更に取り組んでいるというのが昨今の状況です。

 

―ディスプレイ広告の配信技術が検索連動型広告の配信技術へと追いついてきていますが、それにより検索連動型広告の運用のされ方に影響はあるのでしょうか?

ディスプレイ広告が伸びたから検索連動型広告が変わったということは、単体としてはないでしょう。さきほど検索連動型広告の配信ロジック、アルゴリズムが変わったという話と、検索とディスプレイとを組み合わせた配信がいくつか出てきたということのほうが大きいので、単体として影響受けているということは特段ないですね。検索連動型広告とディスプレイ広告とを組み合わせて運用する中で求められてきているのは、それに合わせた新しい設定や、予算の最適化処理です。検索とディスプレイという、二つの組み合わせでどう変わったかという考え方でみることのほうが重要です。
 
 

これまで培った広告プラットフォームの運用ノウハウを海外へと展開、国内ではチャネルを分けてクライアント層を拡大

―貴社は最近海外展開を進めておられますが、少し詳しくお聞かせください。

現在営業拠点として進出しているのは中国、インドネシア、ベトナムです。直近では、博報堂グループが拠点を置くタイを予定しています。いずれは米国など、より大きい市場に出ていくことも視野に入れてはいますが、目先はアジアです。ただし、アジアについてはローカルプラットフォームが強い中国・韓国などとそれ以外とを区分けしてみています。検索エンジンという観点でシェアを持っているGoogleが大きな市場を持っている場所は、このプラットフォームの運用のプロであるわれわれが大きな強みを発揮できます。展開の柱は、日本企業が進出していくアウトバウンド、現地から日本に進出する企業向けのインバウンド。そして、現地企業による現地展開という三つについて、今後一つ一つ向き合っていきたいというのがわれわれの考え方です。

 

―地域により、それぞれどの展開を優先するのかは、異なるのですよね?

若干異なります。例えば中国は、現地企業による現地展開についてはそれほど急に参入できないため、アウトバウンド、すなわち日本企業のクライアントと一緒に成長していくということが大きいです。
参入が難しい中国においても日本企業のクライアントをしっかりと抱えているわれわれは、現地企業との取り組みをする門戸は開かれています。
それ以外のアジア市場においては、われわれがこれまで蓄積してきたGoogleAdWordsプラットフォームの運用ノウハウは、現地企業からすると2、3年進んでいます。そのため、現地パートナーと提携することにより、勝機があります。地域によりインバウンド、アウトバウンドなどの比率は異なりますが、例えばインドネシアなどでは現地クライアントの現地展開の案件を受け始めており、それぞれバランスがとれた組み合わせで進めていきたいと考えています。

 

―海外売上を何年までにどのぐらいにするか、具体的な目標を設定されていますか?

海外売上の定義にもよるので一概には申し上げづらいのですが、広く海外関連売上の5年後を見据えると、全体の3割ぐらいにまではしていきたいと考えております。

 

―海外で提供するサービスは、やはり検索連動型広告の運用を想定されているのでしょうか?

検索連動型広告のみならず、運用型広告全般です。GoogleAdwordsのプラットフォームをベースにした運用型広告を中心に、先ほど申し上げたスキームで海外事業を進めていきたいと考えています。

 

―貴社グループには中小企業向けの広告代理店ロカリオがあります。こちらはどのような背景や考えのもと事業を開始されたのですか?

アイレップは、一定の広告予算規模以上の大手クライアントからしっかりとフィーをいただき、大手クライアントの要望に適したサービスを提供しています。
中小企業のクライアントの要望と、大手クライアントがわれわれに期待する要望は異なります。米国でも、中小企業向けには専業の広告代理店が対応しており、業態分化がなされています。
当社としてもそこをしっかりと区分けをする必要がありました。それぞれの規模のクライアントの期待値に合わせて、適切なサービスを提供していく必要性のもと、ロカリオを設立しました。中小企業向けの領域は今後しっかりと事業拡大を図っていく必要があります。
 
 

継続するプロダクトの変化と進化、非検索連動型広告との融合の流れにおいて、プラットフォームの運用ノウハウにおいて競争優位性と差別化を目指す

―次に検索連動型広告が現状置かれている課題と、今後検索連動型広告自体がどう変わっていくのかについて、お聞かせください。

interview_irep_4PLAなどのような新しいプロダクトが今後も増えていくのは間違いないでしょう。しかし検索連動型広告と非検索連動型広告との垣根はより低くなってくるのではないかとも思います。
検索連動型広告は、顕在顧客であるユーザーと企業の間で情報の需給関係が成立したタイミングで適切な場所に広告を配信することが出来るという、ユーザーにも企業にもわかりやすい広告として、まだプログラマティックという言葉がなかった時代から支持を得て、デジタル広告市場において最も市場を牽引してきたものでした。

検索という情報を中に含めたかたちで、ユーザーの行動データをもとに配信する仕組みが今、進化してきています。単純に検索連動という区切りだけにおいては、クライアントの予算も今後は減少するかもしれないと思っております。しかし、総じてデジタルという領域でユーザーと広告が接触する機会は今後も増えるでしょうし、ユーザーがインターネットというメディアを通して情報取得とか、何かしらの購買に伴う接触行動の頻度はまだ増えていくと思います。したがって、そこはしっかりとエージェンシーの取り組みも含めて、最終的には最適化されていくでしょう。ただし、広告フォーマットとデバイスが複雑化していくので、それに対する対応は、クライアントもわれわれエージェンシーもより必要になると思っております。

 

―検索連動型広告単体で、例えばクリエイティブの変化について、どのような方向に向かうとお考えですか?

一つはクリエイティブがダイナミックになりつつある点でしょう。それは先ほど申し上げたようにクリエイティブそのものがダイナミックというのもあれば、商品情報や在庫情報といった情報が時間軸でダイナミックになるというものも考えられます。また、この領域の運用はいずれ自動化されていくでしょう。クリエイティブの素材や構成要素だけインプットしておけば、あとはユーザーやクライアントの商品・サービスの提供状況に合わせてクリエイティブを自動的に作ってくれるような世界がいずれ来るでしょう。

あとはユーザーの接触状況がスマートフォンの登場で変わりました。したがって、それに合わせた検索連動型広告の新しい在り方論が恐らく今後出てくると思います。ユーザーの検索行動も当然ながら変わりつつあります。音声検索も増えつつあります。それにより、検索キーワードも当然変わってきますから、これに対する広告側のあるべき姿も当然少しずつ変わってくるでしょう。

 

―プラットフォームという観点では、これまで貴社はGoogleとYahoo! JAPANの二つのプラットフォームに特化されてきましたが、今後はどのような展開になりますか?

interview_irepソーシャルメディアは当然大きなユーザーとの接触面になりつつありますので、われわれもそこを見据えていく必要があります。特に、Facebook・Instagramと、Twitterですね。あとは、引き続きYouTubeに対しても、より取り組みを強化していく必要があると考えています。

 

 

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最終更新日:11/16/2015

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。