日本版、広告テクノロジー業界マップ2013(ディスプレイ広告)&2013年業界予測:DAC徳久氏インタビュー

『広告テクノロジー業界マップ』第三弾は、2012年までに一通りのプレイヤーが出そろい、今年はツールの活用、統合、そしてプレイヤーの淘汰が予測されるディスプレイ広告です。

今回は、株式会社プラットフォーム・ワン 代表取締役社長CEO 兼 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)取締役CTOの徳久昭彦氏に、ディスプレイ広告市場について、2012年の振返りと、2013年の市場予測についてお話を伺いました。

 

(聞き手:ExchangeWire Japan編集長 大山忍)

 

 

 

■  データ中心の広告に大きくシフトした2012年

DAC_MrTokuhisa_resize– 2012年の日本のディスプレイ広告市場は一言で言うと、どんな年でしたか?

徳久 そうですね、PCに関してはいわゆる純広告から、データ中心の広告にかなりシフトした年だったと思います。意外と急激だった印象を受けます。

スマートフォンに関しては、市場全体として思いの外苦戦した印象です。スマートフォンのディスプレイ広告市場自体は伸びてはいるのですが、フィーチャーフォンの落ち込みをカバーできてないまま年末まで来てしまった感じでしょうか。おそらく、モバイルディスプレイという領域でいうと日本市場は若干規模がシュリンクしてしまった気がします。

アメリカはもともとモバイルの広告市場がなかったので、伸びる一方に見えますが、日本はフィーチャーフォンの広告市場がそれなりにあったので、それをカバーしきれなかった分、市場規模としてアメリカにあっという間に抜かれてしまったような印象を与えていると思います。

– PCのディスプレイ広告市場が急激に伸びたと思われる要因はなんでしょうか?

ディスプレイの純広告は伸び悩んでいるのですが、いわゆるDSPやRTBなどデータを使っている広告では、感覚値でいうとおそらく倍以上伸びたのではないかと思います。2011年までの数年はリスティング広告が伸び続けていき、ディスプレイ広告が効果の面で対抗しきれないという感じだったのが、2012年はディスプレイもデータを使うことで『パフォーマンス広告』として使えるという事に広告主さんがかなり気付き始めましたし、広告代理店やバイサイドの人たちもそれに気が付いてきたという感じだと思うのです。

ただ、ディスプレイ市場全体という意味で言うと、純広告としてのいわゆるCPM課金の部分は減り、パフォーマンス広告が増えただけなので、市場全体としてはあまり増えてはいない感はありますね。

 

 

■ 著しい飛躍がみられたリターゲティング広告

– 2012年にディスプレイ広告市場で新規で伸びた業種はありますか?

徳久 データをうまく使ったという意味で言うと、やはりEC系の広告主を中心としたクリテオさんは急激に伸びましたね。データを持っている広告主さんにとって、リターゲティングはとても有効であるということが改めて認識されたという感じですね。そういった意味ではやはりデータを広告主さんが上手く活用すればディスプレイ広告は非常に効果的で、時にはリスティングを上回るような効果があるということが分かってきた。ただ、全ての広告主さんがデータを上手く収集し、ハンドリングできているかというと、そうではないので、これから課題になると考えています。

 

■ データのオーナーシップの明確化が成功の鍵

– 2013年のディスプレイ広告市場で伸びる分野、課題の分野はありますか?

徳久 先ほどの話にもありましたが、私はデータがやはりとても大事だと思っています。中でもアメリカでアンケート調査が出ていると思うのですが、広告主さんの社内でのデータのオーナーが誰なのかという状況が課題だと思います。

ビッグデータとかバンバン出てきていて、データを使うと有効だというのは分かっているのだけれども、これ誰がやってくれるの?に対する回答がまだ今は不明確。要は自社サイトを管理しているようなIT部門なのか、セールスマーケティングの部門なのか、それともCRMのような顧客管理をやっている部門なのか、社内のデータオーナーが誰なのかというのが大手の伝統的な企業の中ではまだ分からない状況なのです。

ECやウェブ志向というか、データベース志向で商売をされている方はデータを使えるのだけれども、どちらかというとオフラインのデータを使ってきた方が、オンラインのデータを使うとなった時に、いろんな手法は出てきているし、社内で責任持って進める人が必要なのですが、そのような人材を確保するのは難しいのではないでしょうか。

部門をまたがってデータを管理していくのはアメリカでもやはり難しいと言っているので、日本もその状態がもうすこし続くだろうなと僕は思っていますね。

 

■ データのインテグレーションと活用人材

– 日本のディスプレイ広告市場が活性化するために今後必要なもの、あるいは現在成長の足かせとなっている要因はありますか?

徳久 最近ではソーシャルをやると認知が低コストで広がりやすいというのは、広告主さんたちはみんな気付いたのですよね。だけど、「いいね!」ボタン押して認知させといてそこからどうするの?というのが、現状ですよね。それをディスプレイだったり、サーチや、メール、テレビCMと言ったようにつなげて考えたコミュニケーションの設計ができる、あるいはテクノロジーを開発する事ができればディスプレイの価値はちゃんと出てくるのだけれども、現状の組織体制がバランバランの縦割りになってしまっている。そうなると、じゃあもうソーシャルだけでいいじゃん、よく分かんないしといった感じになってしまい、結果ディスプレイの価値もよく分からない状況に陥っている節があるかなと思います。

これではなかなかブランディング効果に関してもよく分からない。でも実際、テレビをリアルタイムで見ない人が増えているわけじゃないですか。そういう人たちに対してどうやってリーチするのか、ブランドをちゃんと知ってもらうのかというと、やっぱりディスプレイをやらなきゃいけないのだけども、なんかよく分からないね、というのがおおかたのブランド担当者の今の状況かと思います。

これらのギャップを埋めるために、ソーシャルのデータをオウンドのデータと結び付けられる、すなわちインテグレーションできる「テクノロジー」と、データをつなげて考えられて、上手く使いこなせる「人材」というのが今年は必要だと思います。

人材に関していえば、代理店だけがその人材をそろえれば良いわけではなく、予算や社内調整という視点では広告主さんの社内にも、あるいは専門家という意味で独立系のコンサルティング会社にもそれらの人材を期待すべきですね。

 

■ 動画によるコンテンツのリッチ化が、媒体価値を高める

– 2013年のディスプレイ広告業界で注目しているものは?

徳久 僕が一番注目しているのは動画ですね。コンテンツにしてもテクノロジーにしても手法にしても、やっぱり動画です。

先ほどのスマホの話につながっているのですが、スマホが媒体価値を持つためにはやっぱり動画のコンテンツをもっと使わないと駄目なのですね。PCに比べて読めるテキスト量には限界がありますよね。せっかく通信環境が整ってきていて、スマホでも動画を見られるのに動画専門サイト以外では、動画のコンテンツって全然ないですよね、日本は特に。アメリカではパプリッシャーは滞在時間単価を上げやすいということで、よく動画を使っています。

だからウォールストリートジャーナルや、ニューヨークタイムズも、動画のコンテンツをたくさん増やしていますよね。それによって、ページビューあたりの滞在時間が増えると当然単価を上げやすいし、エンゲージメントも上げられる媒体になれるじゃないですか。アメリカはそうやってコンテンツをどんどんリッチ化している。

リッチなコンテンツにならないとリッチな広告はできないじゃないですか。テキストばかりのスマホサイトでは、ぱっとしないバナーを出すしかない。だからやはりスマホのコンテンツをリッチ化させることがすごく重要。それが結果的にディスプレイ広告の価値を上げると思うのです。

アメリカもPCに関してはどんどんリッチ化していって一生懸命単価を上げようと頑張っていますけれど、PCコンテンツのリッチ化すらまだ日本はできていないので、PCとスマートフォン、タブレットも含めて動画を活用してコンテンツがリッチ化されることを期待しています。

 

—  2013年のDACの注力ポイントは?

徳久 もっとデータを活用できるようなプラットフォームや、もっとしっかりしたアトリビューション分析サービスをご提供していきたいなと思っています。それと、クリエイティブのような制作と広告の距離をもっと縮めて一体化させたようなものを作っていく、特にクリエイティブ的なムーブメントを作っていくのが一つ大事だなとは思っています。

バナーとリスティングだけのアトリビューションだけだと僕はそもそもよく分からないと思っているのです。その間にはたくさんのエンゲージメントを高めているコンテンツが本来あるはずで、そこをノーカウントでリスティングとバナー広告で効果を測定するという話はおかしいのではないかなと。

 

– 最後に、マーケッターの皆さんにメッセージをお願いします。

徳久 そうですね。新聞雑誌の広告などと違ってデジタルはある意味すぐ止められる。しかもデータもどんどん取れるので、色々試していただきたいと思っています。うちのだけ使ってくださいというのは全然なくて、やはりテクノロジーというのは、クライアントさんや商品・サービスなどによってピチッとフィットする場合とそうでない場合と、やはりそれぞれに特徴はありますのでいろんなものを使って効果をみていただきたい。

そしてテックプロバイダーっていう立場で言うと、僕らはどんどんテクノロジーを磨いていって進化させているつもりなので、3カ月前に駄目だったツールがもっと良くなっていることもあります。なので、このテクノロジーは使えないよねと早計に考えないで、どんどん問題点をフィードバックしていただいて、一緒に育てて進化させていきたいです。それによって当然お互いにリターンがあると思いますので。

 


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大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。