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20,000社以上の広告主を抱える米国リターゲティング大手AdRollが日本上陸。日本責任者に聞くサービスの特徴と日本展開 <インタビュー>

AdRoll 香村-竜一郎氏

リターゲティング広告グローバル大手のAdRollが日本に上陸した。Google日本法人 執行役員を経て同社日本法人責任者に就任したAdRollマネージングディレクター 香村 竜一郎氏に、サービスの特徴や日本参入の背景、今後の展開について聞いた。

 

 

 

競馬新聞編集から飲食店経営を経てインターネットビジネスに飛び込んだ多彩な経歴

 

--香村さんのバックグラウンドについてお教えください

 

大学を卒業後、ノエビアという化粧品会社に入社しました。ノエビアでは幸いにも創業者に近い営業推進部門で仕事をすることが出来ました。創業者のあふれる企業家精神に感化され、その後、友人と一緒に起業しました。

当時は若気の至りで、資金も人脈もないのにメディアを作ろうということで、日本にいる外国人をターゲットにした英字の競馬新聞を立ち上げました。8か月ほど運営しましたが、なかなかビジネスにすることが容易ではないと気づきました。その頃、会社で借りていたオフィスの大家さんが経営している飲食店を改装するという話を聞き、改装するくらいなら私たちに運営をさせてくれとお願いをして、飲食店経営に事業を切り替えました。これが大成功を収め、気付けば3年後には11店舗を展開していました。時期を同じくして、オンラインビジネスへの興味が湧いてきました。

 

結局、友人との会社を去って個人経営の飲食店を経営しながら、当時創業間もないアイレップに入社しました。メディアと広告主双方の成功事例を見ることが出来るだろうと考え、まずは修行の意味で広告代理店にお世話になりました。これが私が初めてオンラインの世界に飛び込んだきっかけで、2001年のことです。

 

アイレップでは高山さんという素晴らしい起業家に出会うことができ、ここでオンラインとは何かということを一から勉強することが出来ました。アイレップで学べること、貢献できることがひと通り終わったと思ったタイミングで、次のステップとしてオンラインサービスの事業者側の経験を積むためにGoogleに転職をいたしました。

Googleの広告営業を経て、モバイル広告営業部門の日本事業立ち上げ、その後広告ソリューション全体を見渡す、広告ソリューション推進本部を任せてもらいました。Googleでは2〜3年で勉強が終わるかと思っておりましたが、奥が深い会社で気が付いたら9年半お世話になりました。

 

 

 

米国発グローバルアドテク企業の日本参入背景

 

--AdRollという会社について教えてください

 
adroll

AdRollは、2007年に創業したリターゲティング広告が強みの世界最大規模のリターゲティング・プラットフォーム会社です。広告主は世界で20,000社以上にのぼります。創業者の一人で現在CEOのアーロン・ベルは、もともと天才的なエンジニアで、NASAのプロジェクトやMicrosoftでのエンジニアリングを経て起業しました。米国サンフランシスコに本社を置き、ニューヨーク、アイルランドのダブリン、英国のロンドン、オーストラリアのシドニー、そして日本に拠点があります。

 

企業ミッションは、「広告主の規模を問わず、幅広くディスプレイ広告を提供する」というものです。 もともとアドネットワークとして立ち上がったAdRollですが、その2年後には米国でRTB技術が普及し始めたことでネットワークを構築する必要がなくなると判断し、DSPにシフトしました。その中でもリターゲティングを前面に訴求したことで広告主に支持され、3年ほど前から売上が急成長しています。2012年から2013年の1年間で、売上は2.5倍以上になりました。

 

 

--日本市場参入の背景について教えてください

 

AdRollが成長するに当たり、グローバル展開をしていく必要があります。欧州市場には2013年に参入し、大成功を収めています。アジア市場では2014年のオーストラリアに続き、今年は日本にフォーカスして展開を図ることになりました。アジアで成功を収めるには、大変魅力的で大きなリターゲティング広告市場を持つ日本を押さえることが不可欠です。今後、アジア全域で展開を進めていくためにも、まずは日本で足掛かりをつけようと日本市場への参入に踏み切りました。

 

日本のリターゲティング広告市場には、既に多くのプレイヤーが参入していますが、この市場はまだまだ伸びていく市場です。したがって、当社が参入する余地があるとみています。

 

 

 

幅広い広告主が使う、シンプル・透明・ソーシャルなAdRoll

 

--サービスの特徴について教えてください

 

一つ目の特徴は、AdRollのサービスが、業種や企業規模を問わず幅広い広告主様に使っていただいていることです。

AdRollでは、広告主の広告出稿額に下限を設定しておらず、また米国ではセルフサービス型で提供されています。したがって、広告主の規模を問わず幅広い広告主に使っていただくことが出来ます。

 

二つ目の特徴は、広告配信の管理画面です。非常に使いやすく、管理画面から様々なレポートを出すことが出来るため高い透明性を実現しています。どのメディアにどのように幾らで配信されたかが非常にわかりやすいため、最適化がしやすく何よりパフォーマンスを出しやすいのです。

 

三つ目の特徴は、広告の配信先としてソーシャルに強いという点があります。AdRollは、FBX とAd TechにおけるFacebookのマーケティングパートナーであるため、Facebookのニュースフィード面に広告を配信することが出来ます。この配信面は非常に効果が高いです。

また、AdRollの管理画面からTwitterのアカウントと同期させることが出来ます。これにより、Twitter側からAdRollで設定した配信のセグメントをターゲットしてTwitter広告を配信することが出来ます。さらにAppleのiAdインベントリのプログラマティックな広告取引を支援する認定パートナーでもあります。

 

 

 

--プロダクトの内容や広告主層について教えてください
 

AdRoll 香村 竜一郎氏日本ではリターゲティング広告を提供していきます。リターゲティング広告は、ダイナミック(動的な)リターゲティングと、スタティック(静的な)リターゲティング広告の二つがあります。ダイナミックなリターゲティング広告のことを、当社ではダイナミックな広告と呼んでいます。ダイナミックな広告はAdRoll独自のアルゴリズムを基に提供しており、高い広告効果を実感する幅広い広告主に使っていただいています。BtoBを始めとするいくつかの業種の広告主は、取扱商品点数が限られている、また購入に至るまでのリードタイムが長いなどの理由から、必ずしも広告のクリエイティブをダイナミックにする必要がないケースもあるからです。

 

当社の広告は、米国で業種別に見ると、高い比率でBtoBの広告主に使っていただいていることも大きな特徴です。BtoB業種の広告主は、認知、興味関心、購買に至るまで長い時間を使い、ユーザーをファネルの中で育てていくというマーケティング志向を持っており、当社のリターゲティング広告の手法がマッチしているのです。その他、Eコマース、自動車、金融、人材など幅広い業種の広告主に使っていいただいているため、売上構成比でみるとスタティックなリターゲティング広告の売上構成比が高い状況にあります。

 

 

 

日本では、運用力が世界最高水準の広告代理店と共に展開

 

--日本における展開について教えてください

 

2015年は、100%広告代理店を経由して販売することになります。日本の広告代理店は世界でもトップクラスの広告運用力があります。知識も豊富で技術力も高く、サービスのきめ細かさも世界で群を抜いています。こうした理由から、広告代理店に広告運用を管理してもらうのが良いだろうと考えています。広告運用管理画面は、広告代理店に管理してもらうことになります。

 

このため、日本では大手広告主の方々にもお使いいただけると想定しています。既に大手広告主の企業様からもお問い合わせいただいています。

 

AdRoll 香村-竜一郎氏メディアの買い付け先としては、DoubleClick、Facebook、BidSwitch、AppNexusなどとグローバル提携をしています。この中には日本のSSPと提携しているところもあり、日本のSSPの在庫の買い付けも可能です。今後は、日本のSSPとの直接の接続も進めていくことになると考えています。

 

 

--今後の具体的な予定があれば教えてください
 

まずは3月から一部の広告代理店を通して提供を開始します。そして今年夏前後には、全ての広告代理店を通して提供を開始します。既に予想を大きく上回る反響をいただいており、日本での成功に確信を持っています。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。