APACのマーケターはユーザー理解を深めるためにモバイルデータに注視すべき [インタビュー]

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

モバイルを中心に、消費者がますます多くのデータを生成するに伴い、アジアパシフィックのマーケターはビックデータ分析に足を踏み入れ、アトリビューションや明確なユーザー体験の創造に努めるようになっている。

本記事では、位置情報サービス分析プロバイダー「Near」のChief Revenue OfficerであるShobhit Shukla氏にインタビュー。この変化に富む業界における課題と、リアルタイムインサイトによってブランドがいかにサービスを差別化すべきかについて語ってくれた。

 

現在のユーザーデータ収集における重要な進歩について聞かせてください。

ブランドにとってユーザーデータほど価値のあるものは少なく、メディアバイングからユーザーエクスペリエンスプラットフォームの開発まで企業の全ての活動に影響します。従来、そうしたデータは全てケーブルやDSL回線で収集されていましたが、モバイル技術によってそれが崩壊することでそれがどう変わっていくでしょうか?

現在、消費者はますますモバイルデバイスに魅了されています。2019年までにスマートデバイス(3Gと4G両方で)の市場占有率は127%拡大し、月間データトラフィックは24.3エクサバイトを占めると予想されています。端末の価格帯の低下が、モバイルデバイスをインターネットの主要なアクセス手段として利用する人の数を引き上げています。

消費者がいくらデスクトップPCやタブレット、スマートフォンを使い分けていたとしても、モバイルデータはまもなくユーザーデータの主要な情報ソースとなるでしょう。モバイルデータの急激な伸びは、マーケティング担当者にとっては金脈と言ってよいですが、いくつかの新しい課題も見つかっています。モバイルデータのマイニングとは、クッキーに基づく技術に頼らず、オフラインのデータを利用することです。モバイルデータを効果的に利用するには、マーケティング担当者にユーザーのリアルタイムのインサイトを引き出す能力が必要とされますが、この能力は現状のサードパーティーデータプロバイダーの範囲を超えていると言えます。
 

ブランドはこれらの課題にどう対処すべきでしょうか?例えば、いかにオフラインのデータにアクセスし、モバイルデータを利用していくのでしょうか。

ブランドは、モバイルプラットフォームが提供する位置情報を利用できます。実店舗を所有するブランドは、こうしたデータを利用してどのような人が店舗を訪問するのか、店舗の外では何をしているのかを知ることが出来ます。働いているのか、学生なのか、それとも専業主婦なのか。モバイルデータは消費者の行動に関する「信頼できる情報源」になり、こうしたデータを利用することでブランドは価値あるインサイトを得られるでしょう。

モバイルデバイスのデータを利用するには、クッキーに依存しない技術を検討する必要があります。モバイル効果測定において一般的で永続的な共通因子となるのは、iOS用IDFAとAndroid用Google IDです。どちらの識別子もそれぞれ使いやすい上、プライバシーに配慮されています。そしてクッキーとは異なり、モバイル識別子はより永続的であるがゆえに、ユーザーデータのキュレーションと効果測定を戦略的かつ長期的に行うことが可能になります。
 

サードパーティーデータプロバイダーがリアルタイムのインサイトを提供出来ないとすると、マーケティング担当者はどうインサイトを利用すればいいのでしょうか。

リアルタイムのインサイトが得られそうな活動は次第に増えています。特に高速回線に接続してスマートフォンを長時間利用するユーザーに関してはそうで、例えばNearのようなベンダーは、ユーザー固有の位置情報を大規模に活用して、インサイトの獲得に注力しています。また、我々は現在大手小売りチェーンに協力して、顧客の行動を競合と比較して把握する活動をサポートしています。彼らはこれを単にデジタルマーケティングの取組みに活かすだけでなく、オフラインマーケティングやイベント企画にも利用しています。

リアルタイムのインサイトなくして、マーケティング担当者はモバイルキャンペーンのアトリビューションを測定出来ないでしょう。実際、位置技術は現状ではモバイルキャンペーンのアトリビューション手法を確立する唯一の定評ある手法となっています。例えば、位置情報が提供するリアルタイムのインサイトによってマーケティング担当者は、顧客の購入がモバイルアプリ内の広告によるものかどうか正確に判断する事が出来ます。
 

このことはモバイルを含む大量のデータからインサイトを引き出したいマーケティング担当者に大きな課題をもたらすのではないでしょうか?

ビッグデータによって、マーケティング担当者は一連の課題に直面しますが、そのうちの一部はその複雑さに由来するものです。それゆえ、その活用と運用を習得するには時間が必要です。別の問題は、既存のデータを新しいデータソースに結合する必要があることで、これは結果的に統合の問題に行きつき、ただでさえ複雑なビッグデータ利用方法をさらに複雑にしてしまいます。

またビッグデータが比較的目新しいことからも、その扱いに必要とされる専門知識に精通した熟練の専門家はそう多くありません。

別の重要な課題は、アジア太平洋に関わりが深いものですが、言語の数の多さに関係するものです。この問題は、地域をまたいでビッグデータを展開する際に重大な技術障壁になることが分かってきています。問題の解決方法の一つとして、出来るだけ多くのアジアの言語にわたってデータを抽出出来るようなエンジンに投資することが挙げられます。
 

業界で現在議論の的になっている点ですが、このような状況の変化はアトリビューションにどのような影響を与えるのでしょうか?

オフラインのアトリビューションには大きなチャンスがあります。例えば、オンラインでの消費が実店舗の訪問にどれくらい効果があるかを測定する等に活用出来ます。デバイス識別子に紐づいた位置の軌跡情報はデジタルでの投資対効果とブランド毎の「家の外」での消費を測定する方法として魅力的です。

例えば、ある特定のデバイスが、スマートフォンに直接広告が表示されるか、もしくはチェーンの立て看板の近くに来たかのいずれかで、ファストフードチェーンの広告と触れたことを確認したた場合。そのデバイスを追跡して、その後どこかのファストフードチェーンの店舗に現れたかどうかを確認できます。我々は、このモデルを様々なパートナーと共に検証しており、例えばShellでは、結果的にガソリンスタンドへの来店数を14%増加させることが出来ました。

アジア太平洋は、興味深いことにモバイルデバイス経由のユーザーの普及、発見、トランザクションにおいて飛躍的に進んでいます。これまでの当社の業務の大半がアジアだったことは、アジアのマーケティング担当者の間でデータとアトリビューションに対するニーズが拡大している証拠だと言えます。
 

意味のあるファーストパーティーデータを収集するための最善の戦略とはどのようなものでしょうか?

この分野はマーケティング担当者が投資すべきものですが、プライバシーに関する課題もあります。またファーストパーティーデータは、ある点を超えると拡大が難しくなります。というのは、特にモバイルの場合、ユーザーは大半の時間をゲームや、エンターテインメント、ソーシャルネットワーク、動画といった特定のコンテンツに使う一方、必ずしもブランド固有のアプリをダウンロードすることに利用しないからです。
 

つまり、アジア太平洋のマーケティング担当者は、サードパーティーデータではなくファーストパーティーデータを重視すべきということなのでしょうか?

どちらに対してもオープンである必要があります。規模と正確さに関しての議論に繋がりますが、両方とも投資に着手すべきです。しかしながら、入手可能で、活用が待たれているサードパーティーデータはすでに大量にあり、それが最初のステップと考えられます。
 

IoTのような新技術によって、マーケティング担当者がどのような新たなパーソナライゼーションを提供出来るかいくつか事例を教えてもらえますか?

マーケティング担当者は、全く新しいレベルのパーソナリゼーションを実現することでサービスの差別化が可能になります。様々なプラットフォームにわたって顧客の購買傾向を分析し、さらに買物中のある時点における顧客の正確な位置を詳細に把握することが出来ます。このデータがあればマーケティング担当者は、以前は不可能だった消費者のデバイスや製品の利用方法に関するデータを利用できるようになるでしょう。この事により、顧客のブランド全体との付き合い方がより明確に見えてきます。

リアルタイムに店頭での通知を実現する機能とターゲット広告によって、マーケティング担当者の保有するインサイトがカスタマイズされ、それぞれの顧客に固有のものになっていくでしょう。
 

IoT がマーケティング担当者にもたらす課題とはどのようなものでしょうか?

一つは、広告から体験への変化でしょう。IoTが進歩するにつれて、消費者は常に大量の動画や広告に触れる様になります。そうした大量の広告の中で目立つためには、サービスを個人に合わせる必要があります。一律広告の時代は終わり、重要なのはメッセージがユーザー固有のものになり、顧客の心がブランドに徐々に掴まれていく体験を提供することだと思います。

さらに、モバイル技術の進化に伴い、画面は今後より小さくなり、機能が増え、タスク志向になるでしょう。従って、マーケティング担当者は、ますます独創性をもって広告やメッセージがこうした画面に最適となるようにする必要があります。

データ志向の考えから、マーケティングとデータサイエンスは、ゆっくりですが確実に融合しつつあります。これを異なる2つの技術と見るのではなく、業界は両面を取り入れなくてはなりません。マーケティング担当者はデータサイエンスにも精通すべきかという問題ではなく、いつ精通するかの問題と考えるべきでしょう。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

 

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。