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時代とともに変わり、データ連携で進化するソーシャルメディアマーケティング機能 [インタビュー]

数年前と比べて、ソーシャルメディアを活用したマーケティング手法は様変わりした。過去数年と比べた現状および今後の方向性について、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC) メディアサービス本部 メディアセールス局 第三メディア部長 佐瀬 博久氏、およびメディアサービス本部 メディアセールス局第五メディア部 チームリーダーで、グループ会社株式会社トーチライト ソーシャルアド推進室 マネージャーを兼務する 川下のぞみ氏に聞いた。
また、今回のインタビューに合わせて、DAC協力のもと、ソーシャルメディア領域の業界マップの更新を行った。(本インタビュー最下部に記載)

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下智之)


時代とともに変わるマーケティングにおけるソーシャルメディアの位置づけ

DAC_021216―まずはお2人の自己紹介と、DACグループの中での役割についてもお聞かせください。

川下氏: 私はDAC媒体部門で、FacebookとTwitterの窓口担当と、トーチライトにおける広告運用の担当をしております。

佐瀬氏: 私は、同じくDAC媒体部門でLINEの窓口担当をしております。

―DACとトーチライト社とは、現在どのような連携をしているのでしょうか。

川下氏: DACは媒体の仕入れをしており、トーチライトでは、仕入れた媒体の運用を行います。
LINEは、先日LINE社との連携をリリースさせていただいた、米国のCRMソリューションツールGIGYAを活用した運用を行っております。
また、Facebook、Twitter、InstagramはトーチライトのSherpaというソーシャルメディア向けの広告運用管理ツールを活用した運用をしております。Sherpaを通じたこれら三つの媒体に関しては、DAC経由の案件を全て運用させていただいております。

―3年ぐらい前と今と比べて、ソーシャルメディアマーケティングの領域が、どのように変わったかについてお聞かせください。

佐瀬氏: 当時と比べて、媒体の環境が大きく変わりました。LINEが企業向けの公式アカウントを開始したのが、2012年6月頃です。

当時はまだ、Facebook、Twitterなども含め、それぞれの媒体のアカウントの立ち上げがやっと軌道に乗り始めた頃で、これからそれぞれのアカウントで何を発信するかということを考えていたころでした。媒体特性を踏まえ、マーケティング活動においてそれぞれをどのように使い分けていくかということを、まだ模索していた時期でもあります。

川下氏: FacebookやTwitterに関しては、アカウントを持っている広告主はいましたが、どちらかというとCRM、カスタマーサービスに特化した感じで、既存の顧客向けのコミュニケーションツールとして使われているケースが多かったです。また、広告主も、「きれいどころ」と言ったらおかしいかもしれませんが、コアなファンが多いブランドやサービスのファンを可視化するためのメディアとして使われる色彩が強かったです。

しかし、その後LINEの普及もあり、FacebookやTwitterも含め、ソーシャルメディアは、コアなファンとのコミュニケーションツールというよりは、スマートフォン、デジタルで幅広くリーチを取るためのメディアという位置づけに変わりつつあると感じております。極論を申し上げると、広告出稿をするためのメディアですね。スマートフォンでユーザーにリーチするためのメディアとして、これらのメディアの活用は不可欠になりつつあります。無論、そのためには、これらのメディアで企業ページを作ることが必要になります。

―広告主の方は、LINE、Facebook、Twitterの使い分けをどのようにされているのでしょうか?

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川下氏: まずメディア特性として、Facebook・Twitterと、LINEとでは、ユーザーと広告主のブランドとの距離感が違うように感じています。LINEは、非常に多くのユーザーがブランドとのエンゲージメントをしますが、FacebookやTwitterと比べると、全体的にはライトなファンが多いです。Facebookで「いいね」をしたり、Twitterでフォローしたりするユーザーは、もう少しコアなファン、ファンの濃度が違うと認識しています。

プロモーション目的としては、LINEは、クーポンを配り店頭に誘導するというような、販売促進目的で利用される広告主に多く使用されています。初期のころよりLINEに公式アカウントを開設されている広告主が、コンビニエンスストアやドラッグストア、飲食店など店舗型企業が多いことが、これを物語っているといえます。
Facebook、Twitterは、最近はアプリユーザーの獲得目的も多いですが、認知獲得やエンゲージメント促進などを高めたりする使い方が多いです。
FacebookやTwitterの場合、広告主は、企業アカウントと「いいね」や「フォロー」でつながっているユーザーとは定常的なコミュニケーションをし、大量の認知獲得をする際には、つながっていないユーザーも含め、広告を利用します。

融合により競争が過熱するソーシャルメディアマーケティング業界

―最近のソーシャルメディアマーケティング業界の動向として、何か感じられている変化はありますか?

川下氏: かつて、ソーシャルメディアマーケティング支援事業を行っていた事業者が、広告運用を手掛けるようになり、広告会社と事業形態が近づいてきていると感じております。

初期のソーシャルメディアマーケティングの考え方は、企業はファンをある程度囲っておけば、広告出さなくとも無料でリーチができるというものでした。
ですが、最近ではこれが変わりつつあります。Facebookでは、エンゲージメント率を上げても、リーチが伸びにくくなってきています。
そこで、広告主のマーケティングを支援する際には、それまでのオーガニックの施策以外にも、広告によるプロモーションを提案し支援することが必要となりました。

―ソーシャルメディア領域で、新しいサービス業態の登場や、それによる業界マップの変化はみられますか?

Photo2佐瀬氏: LINEとそれ以外では、状況が異なりますが、LINE周りではエコシステムが出来つつあります。LINEという国内で6000万人規模のユーザーが使用するプラットフォームがAPIを公開したことにより、その周辺にツール会社が出始めてきました。LINEビジネスコネクトにより、LINE上で公式アカウントを持つ広告主は、ユーザーと1対1のコミュニケーションを取れるようになりました。更にAPIを介して弊社のDialogOneといった外部ツールを活用することで、ユーザーセグメントを作成し、最適なコミュニケーションを取ることが出来るようになりました。これにより、事実上広告会社をはじめ、マーケティングオートメーションを提供する事業者、ソーシャルメディアマーケティング支援事業者など、今までは競合にはならなかった事業者が同じ領域でビジネスをするようになり始めました。

―Facebook、Twitterの周辺はいかがですか?

川下氏: Facebook、Twitterも同じ状況です。運用設定や管理という領域では、私たちが提供するツールは「どの会社が広告主の管理画面を取ることが出来るか」という点において、Facebook、Twitterが提供する管理画面ですら競合となります。ですので、Facebook、Twitterのツールよりも私たちのツールの方が見やすい理由などをはじめ、FacebookやTwitterには出来ないことをこちらで工夫していく必要があります。ソーシャルメディアに直接買いつけをせず、DACにお任せいただくメリットを広告主に提示していくことがポイントです。私たちだけにしかご提供できない機能、私たちのツールだと広告会社に使っていただきやすい環境を作ることが一番大切なことであると考えております。

データ連携がもたらすソーシャルメディアマーケティングの更なる可能性

―トーチライトが開発されたソーシャルメディア広告運用管理ツールSherpaの開発背景について教えてください。

Photo3川下氏: 私たちがSherpaを開発するに当たり、米国数十のサービスを研究して、どのようなものが、日本の私たちの立ち位置のツールとしてあるべきかを工夫しました。FacebookでAPIパートナーとなっているツールの管理画面を見ると、何らかの領域に特化しているという傾向が見られます。広告運用会社向けに特化したもの、CRMに特化したもの、セルフサービス向けに特化したもの、他社のCRMツールと連携したDMP寄りの機能に特化したものなど様々です。その中で私たちはメディアレップの立ち位置で、広告会社向けに提供するツールとして、Sherpaを開発しました。広告会社との共存のしやすいツールにしようという考えが込められております。広告会社には、ツール操作に詳しく自分で運用をしている人もいれば、全然知らない人もいます。したがって、UIは見やすいものにしたいと考えました。
DACグループでは、既に広告会社に広く使っていただいているMarketOne®というDSPを持っております。見た目がこのツールと近ければ分かりやすいのではないかという考えに至りました。
ですが、運用がすごく複雑になってくると、簡単に見せる管理画面よりも、アナリストの人が活用しやすい管理画面が必要となりますし、運用のPDCAサイクルをいかに速く回せるかという命題のもとで、より機能の自動化していくことの必要性を感じております。一方で、FacebookもTwitterも、パートナーに対して求める条件があり、これに対応する必要があります。

―今、FacebookやTwitterと連携させるデータに、何かトレンドはありますか?

川下氏: 広告主のデータを使うイメージですね。広告主のDMPと接続し、FacebookやTwitterのカスタムオーディエンス機能を使い配信します。
広告主が持つ会員組織情報、サイト上の行動情報などを使い、これらを組み合わせてFacebookやTwitterに流し込み、両者の配信ロジックを加味して配信してくれます。

―それはLINEでも同じ状況ですか?

佐瀬氏: はい、そうですね。LINEでは、LINEビジネスコネクトを活用することで、現状二つのデータを活用することができます。まず一つは広告主の顧客データとの連携です。LINEの識別子を広告主が保有する顧客データ(会員情報)と紐付けることで、顧客データに基づいたセグメント配信が可能になりました。もう一つは広告主がLINE内に開設した公式アカウントの中で生まれるユーザーのアクションデータとの連携です。弊社のDialogOne内で、LINEの識別子とユーザーのアクションデータを紐付けて蓄積しておくことで、広告主の公式アカウントの中で「どのユーザーが」「どんなメッセージに対して」「どのようなアクションをとったか」が把握できるようになり、そのアクションデータに基づいたセグメント配信が可能になります。

―ソーシャルメディアマーケティングの効果指標は、今どのような広告主がどのような指標を使われていますか?

佐瀬氏: LINEに出稿する広告主の予算は販促費から捻出されるケースも多いですが、その場合、指標はユーザーの店舗来訪数や、クーポン使用数であることが多いです。一部の広告主では、クーポンにLINE独自の番号が付与されており、店舗側でそれを確認しPOSでクーポンナンバーを取得して効果を測っているケースもあります。EC系のクライアントの場合はECサイトの来訪者数、購買金額を指標としています。
一方で、金融・自動車メーカーなどは、商材購買までの検討期間が長いことから、購買ではなく、友だち数やメッセージに対するアクション数をエンゲージメントの指標として採用するケースもあります。

―FacebookやTwitterはいかがですか?

川下氏: 一般的なデジタル広告の配信先サイトと同様に、CPCやCPAなどが多いです。一方で、Facebook、Twitterで提供している動画広告に関しては、視聴完了率などの指標が用いられます。実はこれらのメディアでは長い尺の動画の場合によく見られる傾向があります。完了単価などの定量的な評価だけではなく、それらのメディアで動画を見せることの価値を定性的に図るために、ブランドリフトを図る取り組みをはじめております。他の動画サイトの方が視聴完了を単価だけで比較すると安くなるケースが多いためです。これはインフィード広告の価値を探るきっかけにもなっています。第三者機関にリサーチを依頼してブランドリフトの効果を図る取り組みを、一部の広告主が始めており、このようなケースは増えつつあります。

―ソーシャルメディアマーケティングの今後の方向性および、貴社グループのお取り組みの方向性についてそれぞれ聞かせてください。

佐瀬氏: 既に一般的な大きいプラットフォームが出揃っている状態で、実名であればFacebook、匿名での利用も可能なTwitter、One to Oneコミュニケーションに向いているのはLINEというような棲み分けも出来ています。今後は、特定の領域に特化した少し小さなソーシャルメディアが出てくるのではないかという感じがします。

川下氏: Instagramは、新しいソーシャルメディアとして今後成長すると思います。このInstagramのように、FacebookIDを使って出せるメディアが増えていくということにおいて、Facebookはすごく強みを持つと思っております。Facebookが今事業を拡大しているオーディエンスネットワークを通して、Facebook外のアプリに広告配信をすることも可能です。
Facebookという面ではなく、FacebookIDに紐づいたネットワークが形成されていくと、今後どの場所で、どのようにユーザーにリーチし、どういう広告メッセージを出せば広告効果が上げられるのかということが課題になってくるはずです。その時、いかに私たちがデータとツールを活用してよいオーディエンスを作るかということに取り組んでいく必要があります。
Twitterについては、現状広告主が重視されている拡散からさらに一歩進んで、拡散した後の効果、サイト誘導やコンバージョンもですが、Twitter上でのコンテンツ=ツイート自体のリーチ効果がどうであったかをより突き詰めていく必要があると思っています。現在私たちが開発したSherpaはこれに対応できる機能の実装を進めており、これを活用し広告の使い方をもっと違うものに出来るような開発を進めたいと考えております。

―LINEに関してはいかがでしょうか?

佐瀬氏: 私たちは、LINEは、マスコミュニケーションと、One to Oneコミュニケーションとを両立させる、今までできなかったことができるようになった場であるととらえています。公式アカウントを持つ広告主のメッセージ配信を、例えば月に2回はマスコミュニケーション的な使い方をし、よりメッセージを細分化させたOne to Oneでのコミュニケーションを月8回にする、というような使い方が今後増えてくるのではないかと思っております。そのほうがより効果が上がるとみております。今まで家庭、学校、移動中の電車の中、店頭など、場所に応じて媒体を変える必要であった取り組みのすべてとは言いませんが、一部のユーザーに対しては、ユーザーの一日の行動範囲における全てを、LINEとのコミュニケーションで完結することが出来るようになるのでは、という期待もしております。このようなメディアの可能性を信じてその実現に向けたサービス開発や広告会社・広告主への提案を進めていきたいと思っております。

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最終更新日:5/23/2016

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本マップは、米LUMA Partners社のLUMAscapeのカテゴリをベースに、日本国内でのサービス提供を確認できたカテゴリのみ掲載しています。

本マップ作成にあたり、事前にロゴ・サービス名称の表記に関して事前許諾を得ておりませんので、もし本マップへの掲載に問題がある場合は、 ExchangeWire Japanまでご連絡ください。問題箇所に関しましては、できる限り迅速に対応させていただきます。

問い合わせ先: japan[アット]exchangewire[ドット]com

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。