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韓国のモバイルデベロッパーは、国内市場の激化により グローバル広告市場を目指す

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

国内市場の競争が厳しさを増す中、韓国のモバイルおよびゲームデベロッパーは、より大きな広告収入を目指してグローバルマーケットに目を向けている。

このような試みを成功させる為には、これらの開発者は世界の消費者を念頭においた商品作りと世界的な配信を行うことができるマーケティングおよび広告エージェンシーを見つける必要がある、と最近韓国のソウルにオフィスを開設したMatomy社のCOO Sagi Niri氏は述べる。

ExchangeWireとのインタビューにおいて、Niri氏は韓国のデベロッパーがグローバル市場で苦戦する理由および、国内市場で直面する問題点について語ってくれた。

―ソウルでの拠点を開設し、貴社の韓国市場での成長戦略を教えてください。

韓国は世界で最も変わった市場であり、かつ最も大きなモバイルゲーム市場でもあります。私たちのゴールは韓国のモバイルパブリッシャーや開発者に対してのゲートウェイとなり、彼らのすぐれた商品を世界中の消費者に届けるサポートをすることです。

―韓国における最初のターゲットおよびゴールについて教えてください

私たちはモバイルゲーム市場をターゲットとしながら、FacebookおよびGoogle広告にフォーカスしていきます。私たちのゴールはビジネスをAPACにおいて拡大し、大手広告パートナーとの関係性を強化し、モバイルテクノロジーにおけるサービス提供範囲を広げ、韓国のモバイルゲーム市場を世界市場と結びつけることです。

私たちはモバイル動画市場やインターナショナルなモバイル市場との連携に非常に大きな潜在性を感じています。

―これらの成長を遂げるためにはどのような問題に直面すると考えていますか?また、これらの問題をどのように解決していくのでしょうか?

Sagi Niri氏, Matomy社私たちは韓国市場に進出することで、韓国国内の広告主やパブリッシャーに対して、新たにグローバルな消費者と出会う機会を提供したいと考えています。ビジネスの交渉、期待感、文化的な問題などの違いなどから慎重な準備が必要なのは理解していますが、これらのエリアは私たちにとり経験のある分野です。韓国国内のチームとともに、私たちは現存するクライアントに対して、新たなパートナーと引き合わせ、品質の高いグローバルのオーディエンスを提供していきます。

私たちは引き続きAPACに注力し、モバイルおよび動画広告分野への投資を行い、継続的な成長を遂げていきます。ソウルにオフィスを開設し、ビジネスを本格的に開始することができました。私たちの韓国チームはこの国の文化を熟知しているため、私たちが提供するサービスにおける共通性や違いについて、しっかりと順応しています。

―韓国のモバイルデベロッパーが広告主のニーズに関して抱えている問題点はどのようなものでしょうか?

韓国市場では非常に多くのモバイルゲームが日々登場しており、国内市場は非常に激しい競争と市場の成熟化が進んでいます。彼らが開発しているゲームの正当な対価を得るには、デベロッパーはグローバル市場に目を向ける必要があります。多くのデベロッパーが、文化的にも言語的にも韓国市場のみに向けられており、この点で苦労しています。

―これらの問題にどう立ち向かうのでしょうか?

まず、韓国のデベロッパーはゲームを開発する際、グローバル市場を念頭に入れる必要があります。次に、世界市場に出ていく為には、グローバル市場での配信および収益化に長けたプロフェッショナルなマーケティングおよび広告企業と提携する必要があります。

―韓国のモバイルおよびアプリデベロッパーは、どのように収益化を達成するのでしょうか?この成長戦略において、プログラマティックがフィットする可能性はありますか?

韓国のデベロッパーはTuneやAppsFlyerのような、世界的なデータトラッキングツールを用いて広告収入の最大化に努めるべきだと思います。

プログラマティックは韓国ではまだ新しいコンセプトです。プログラマティックを理解していない状態では、多くのデベロッパーにとり、どのようにこれを自社の成長戦略に組み入れるかを考えるのは困難です。しかしながら、プログラマティックを理解する人々は増えてきており、利用が進むにつれてよりサービスを認知する人は増えてくると考えています。

―韓国のモバイル広告主が現在直面している問題点と、解決に向けて取り組んでいる事項について教えてください。

国内市場は限定的であり、デベロッパーはグローバル市場に目を向け始めていますが、どのような海外市場にシームレスに進出していけば良いのかがわからず、グローバルデジタルマーケティング企業にサポートを求めています。そしてもう一つの問題点は、世界的に見られることではありますが、いかにゲームの開発と合わせてマーケティングに予算を割り当てるかという点です。

デベロッパーは徐々にマーケティングがゲーム開発において非常に大きな要素となる点に気づき始めており、より注意を向けるようになっています。

―いくつかのグローバル市場においては市場の閉鎖性が問題になっています。韓国のテクノロジー市場においては同様の問題は見られますか?

最近、韓国において、モバイルユーザーが$100ドル以上の製品を購入した場合にはデジタル証明書をインストールしなくてはならないという法案が棚上げとなりました。こういった規制緩和はデベロッパーが作業を進める上において好意的な兆候です。しかしながら、ギャンブルなどのゲーム分野においては多くの禁止事項があり、多くのパブリッシャーは制限が少なくオーディエンスの大きなグローバル市場に向かっています。

―テレビや紙媒体などと比較して、アプリやゲーム開発などは、昔からあるパブリッシャーではありません。彼らの要求はこれらの昔からあるパブリッシャーとどのように異なるのでしょうか?

伝統的なパブリッシャーは情報にフォーカスしている一方で、デジタルパブリッシャーはインタラクションを重要視します。インタラクションは、ユーザーが広告を見た後に、アクションを促すことで向上していきます。モバイルパブリッシャーはより多くのコントロールおよびターゲティング機能を有しており、広告に関心を示す人々に向けての配信が可能です。つまり、あなたの予算にあった形で、より効果的に結果を求めることが可能なのです。

―韓国における要望は、日本やシンガポールのような、同様にモバイル普及率が高い国と比較してどのように異なるのでしょうか?

顧客とのエンゲージメントを通じて、リテンションを高め、より高品質なユーザーを増やしたいという目的は同じですので、要望も似ています。より高品質なユーザーというのは、よりハッピーなユーザーでエンゲージメントの高いユーザーを指しています。APACにおける相違点は、モバイル市場が非常に高い成熟を見せる中で、韓国のモバイルゲーム産業は、APAC域外の市場に目を向けている点になります。

―現存するアドテクのツールはこれらのニーズに合致しているのでしょうか?ギャップはどのような点に見られますか?

韓国国内のデベロッパーがグローバル市場に進出するのに、彼らの顧客をリモートで管理する必要があり、言語、文化、時差の違いに関する問題に直面します。私たちの産業はグローバリズムに対応する為に、前例のない形で発展を続けています。しかしながら、実際に顔をあわせて会議を行い、最後に握手で終わるような対面型のコミュニケーションに代わるものはありません。だからこそ、世界中の戦略的なハブとなる地域に戦略オフィスを設けることは、産業にとって非常に重要なのです。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。