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「市場を先に押さえ、市場より早く成長。」CyberZが挑む、東南アジア市場No.1戦略 [インタビュー]

スマホ広告代理店国内最大手のCyberZが一昨年より注力しているのが海外広告事業だ。統括責任者である、取締役の青村陽介氏に、同社が先手を打って展開している東南アジア地域における、ゲームを中心とするアプリプロモーションの市場環境と需要動向、そして同社独自の同地域での事業戦略について聞いた。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

― 自己紹介をお願いします。

photo12009年にサイバーエージェントに入社し、1年間はCAテクノロジーという、SEOの小会社で営業をしておりました。2年目から。立ち上げ間もない10名未満の規模のCyberZにメンバーとして入社しました。その当時のCyberZはまだガラケーのビジネスをしていましたが、2012年に業態変更以降多くのスマホアプリディベロッパー様とお仕事をさせていただいております。
現在は国内外における代理事業の役員を担当させていただいております。弊社の海外事業に関しては4年前に米国からスタートしましたが、アジアの立ち上げからは私が担当役員として携わらせていただいています。今は韓国と台湾に支社を設立したほか、中国にも出張ベースで事業展開しています。今後東南アジアにも注力していく予定です。

― 東南アジアのスマホアプリ市場の現状についてお聞かせください。

まさに盛り上がりはじめていると思っております。当社のお客様でもかなり注目をされていて、投資という形で広告予算を割いて出稿されている企業が増えているところです。お客様は、国別では、日本からの出稿もあるのですが、一番大きいのは韓国からですね。韓国と中国のアプリゲーム企業がかなり東南アジアへの展開に注目しているとい印象です。アウトバウンドというより、日本が絡まないアウト-アウトと言えるかもしれません。実はそちらの方がビジネスとして大きいですね。

海外進出でホットな地域はタイ、次いでインドネシア・ベトナムに注目

― 単純にインバウンド、アウトバウンドではなく、アウト-アウトとなっているきっかけは何かあるのでしょうか。

文化的、経営方針的な部分もあるかとは思いますが、日本の企業よりは韓国や中国の企業のほうが海外進出にバリアがない、という面はあると感じています。韓国や中国の企業が台湾に展開していますが、これは私たちの海外ビジネスにおいても大きな割合を占めています。またその流れで、台湾に注目している企業がタイにかなり注目している現状があって、韓国や中国からタイという流れがあります。それらの企業の中でタイを「ネクスト台湾」と狙っている企業が増えてきているのです。

― タイの次だとどのエリアがヒートアップしていると感じますか。

青村氏:インドネシアとベトナムですね。インドネシアはインターネット広告の市場はかなり大きいので、ポテンシャルはかなり大きいと思っています。ベトナムはというと、まだ市場としては大きくはないが、成長率が非常に高いので、このままいけば大きくなるのではと思います。

― ユーザの課金の状況は各国によって異なるのでしょうか。

タイは上がってきている印象です。ですが、かなり戦略的にやらないと回収できないので、プランニングが命ですね。インドネシアとベトナムはこれからというレベルで、タイと比べると回収は弱いです。企業様の戦略としては、「いつか絶対来る」と考えて、ユーザのプールを先に作るという捉え方でチャレンジしている企業が多い。タイに注目している企業は韓国、インドネシアは中国が多い印象です。また、インドネシアはe-コマースが伸びてきているようですね。ローカライズは必須ですし、回線の状況は良くない、決済も整っていないという状況で、これからという感じではありますが、ポテンシャルを感じている企業様は多いです。

タイは、韓国企業の他にも中国企業からも注目されている印象があります。その中で韓国企業は、タイ以外は回収ができないと踏んでいるので中々投資しないが、中国企業は、回収はできないけれど先に押さえるといった傾向があるので、少人数で最初に行き、プロモーションを行うというような形で進出する企業も多いですね。

― 通信環境は地域によって異なると思いますが、それによってゲームの作り方は地域によって変わってくるのでしょうか。

photo2そのような面もありますね。また、タイにはオンラインゲームの土壌があり、韓国系のタイトルがある程度受け入れがいいのではないかと感じています。また、タイでは、e-Sportsが盛り上がっていますね。
当社はこの地域で、「ENGN」(エンジン)というインフルエンサーマーケティング支援サービスをリリースしています。東南アジアを含めた世界40カ国を対象に、ゲーマーやYoutuberをネットワーク化してインフルエンサーを活用したマーケティング支援を行っています。

Google、Facebook、LINEなどのメガプラットフォームだけではない!オフライン広告も含めた施策提案

― 東南アジアのメディア環境には、地域的な特徴は見られるのでしょうか?

動画の活用についてですと、通信環境の悪い地域ではメディア側が動画を出さないようにインターフェイスを変えていたりすることはありますが、逆に通信環境の良いところだと動画はかなり注目されています。例えばベトナムではテレビ・雑誌に規制が入っていて、視聴できるコンテンツにも制約がある中で、YouTubeが伸びているといった現状があります。当社もインフルエンサーのマッピングやTrueViewなどの在庫として期待しています。
ソーシャルメディアの利用状況も特徴的です。Facebookはどの地域でも強いのですが、タイではLINEの利用率が高いです。またインドネシアでもかなり利用率が伸びてきています。LINE社の動向は当社が戦略を立てる上でも重要であり、今後の同社の同地域での取り組みには注目しています。

― 東南アジアでは、Google、Facebook、LINEなどの外資系メディアの存在が大きいと聞きますが、実際にどのような位置づけにあるのでしょうか。

この三社は東南アジアにおけるマーケティングでは、まず外せません。
現地メディアもありますが、費用対効果を考えると重要なこの3メディアから、プロモーションを開始される企業様は多いです。

その他、最近少し面白いなと思ったのは、NAVER社のSNOW(スノー)が東南アジアで少しずつ普及してきているということです。まだ現地で話題沸騰という状況には至りませんが、数字上は東南アジアもふくめて2000万ダウンロード規模に達していると聞きます。

― 東南アジアと日本とではアプリマーケティングの特徴にどのような違いがあるのでしょうか。また広告主が特に留意すべきこととはどのようなことでしょうか。

効果面で言うと、1インストール単価が日本と比較して安く、5分の1、10分の1程度なので、ボリュームを集めるのは容易です。ただ課金や売上がついてこないのが一番の特徴で、そこをどう回避するかが論点になるところです。そこで見合うラインで投資するのか、あるいは1位まで取りに行くかという判断になってきます。

― アプリプロモーションをするうえで、東南アジアでここは押さえておくべきという媒体はありますか。

やはり先ほどのGoogle、Facebook、LINE。そして、YouTuberでしょうか。あとまだまだオフラインの広告の影響力も大きく、この辺りも全域でサポートさせていただくことは重要だと思っています。オフライン広告の取り扱いは、当社は現地のパートナーシップを活用しています。例えば台湾ではOfferme2社と提携しています。オフラインを同社から仕入れていますが、このようなパートナーシップを、東南アジア地域でも進めていくことは、今視野に入れて動いているところです。

― 日本からも台湾に出ていくゲーム会社が増えている印象があります。

そうですね。しかも、パブリッシングというよりは直接やるというケースがとても増えています。自分たちで出て行って、マーケティングもハンドリングをして、代理店を使っていくケースですね。細かく言うと、パブリッシング会社にゲームのタイトルごと貸してレビューし合うというモデルだったものが、自分たちで現地に何人か送ってマーケティング拠点をして、マーケティングするというケースが増えています。理由として、マーケットの動きがあるという点が挙げられると思います。日本はマーケットがあまり動かず、ヒットタイトルが限られますが、台湾はマーケットが結構動いて、新しいものがどんどん出てくる。ユーザもどちらかというと新しいものが好きな傾向があります。台湾は回収も見込めるということで、思い切り踏んでいるところはあるのでしょう。
当社もOfferme2社と提携していますが、日系企業にも韓国企業にも、現地の代理店と組みたいという企業様は結構いらっしゃって、2コ1でやっているというのが結構大きくて、やっておいてよかったと思っていますし、タイもいずれ同じようになると思っています。当社は大きい会社じゃないので、先に行って先に勝っておくというのを会社の戦略としてとても重視していて、勝ち方も後で追いつけないように先にリスクを取ってどんどん勝つという考え方です。東南アジアはいよいよそういうフェーズかなと思っています。

市場を先に押さえ、市場より早く成長するのが基本戦略

― 改めて、貴社にとっての東南アジア市場の位置づけと、この地域での現状、そして今後の戦略や展望についてお聞かせください

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市場を先に押さえるというのが当社の基本線です。成長を続ける東南アジアは、要地になると考えて先手を打ちたいと考えております。

具体的には3つあります。
1つ目はF.O.Xを基軸にした、導入企業様のプロモーション支援を行っていきたいと思っています。
主力のGoogle、Facebook、LINE各社とは深い連携が出来ており、F.O.Xを基軸に提供できるサービスの深さを出して、まずは全域で効果を出せるようにしたいです。

2つ目はローカライズ。クリエイティブの支援や、現地の文化を理解して広告配信をする必要があり、ここを強化しています。これに絡んでOfferme2社のようなパートナーシップも現地で深く検討しているところです。

3つ目は、Google、Facebook、LINE以外のメディアがない現状を踏まえて、当社が主力な広告プロダクトを作ることです。先日リリースしたENGNではパートナーシップを提携しているので、MCN周りの商品で、お客様の効果、スケールメリットを得られるようにサービス成長していくというのがラインナップになっています。

東南アジアのアプリプロモーション市場は2018年には2015年の3倍程度になると踏んでいます。当社の経営の基本線は市場の成長性より早く成長するという軸なので、少なくともタイとインドネシアは1、2年のうちに3倍になるビジネスにしたいと思っています。全体の業績影響としてはまだまだこれからだが、全体感を見渡した時に無視できない市場ですし、現在高いシェアを取れている台湾アプリマーケティング市場と同水準のシェアをこの地域で獲得することを目指したいと思っています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。