ベトナムはデジタル広告成長の転換点〜Google Vietnamトップが語るベトナム市場の魅力

東南アジアの中でも成長著しいベトナム。オフショアの拠点としても有名だが、街中至るところにある無料WiFiカフェや都市圏などでの高いスマートフォン所持率などモバイルインターネットの普及が高い国としても知られている。一方で、デジタル広告の市場は、まだ全体の5%程度と遅れをとっているのが現状である。
そんなベトナムのデジタル広告の現状と可能性について Google Vietnam社の Country Managerである Nitin Gajria氏に話を伺った。

(聞き手:Asia Plus 黒川賢吾)

―ベトナムのインターネット利用の環境及びデジタル広告市場について教えて下さい。

ベトナムのインターネットエコシステムは極めてエキサイティングです。人口の半分以上がインターネットを利用しており、4000万台ものスマートフォンが利用されています。3G環境も極めて良い上に廉価です。スマートフォンの値段が更に下がる傾向を見せている上に、WiFiはどこにいっても無料で多くのお店や場所で利用可能です。そんな中、消費者は明らかにデジタルにシフトしていますが、一方でマーケターはその流れに乗り遅れています。しかしながら、これは時間が解決してくれる問題だと考えています。

これはベトナムだけに限った話ではなく、世界中で見られる傾向です。消費者のデジタルに関する動きは、広告主を大きく上回っています。これは組織の形態に依存する部分もあるかもしれません。多くの組織が、「デジタルマーケティング」を異なる部門で取り扱っているため、全体のマーケティング戦略の中で語られる代わりに、サイロ化してしまっています。こういった傾向には変化が見られ、広告主の中には新たなデジタルジャーニーにおける新たなステージに踏み入れている企業もあります。こういった変化のスピードは今後もっと加速していくと考えています。

―モバイル広告の現状は如何でしょうか?ベトナムでのモバイル広告市場は未だに小規模ですが、問題はどのような点にあるとお考えですか?

モバイルは非常に大きなチャンスである一方で、多くの企業がモバイル広告の環境に順応し切れていません。これは慣れ親しんだ環境のせいかもしれません。広告主はリーチや、フリクエンシー、GRPといったものに慣れ親しみすぎた為、CPM、ビュースルーレート、CPC等といったものに順応しきれていません。しかし、この問題は時間が解決してくれると考えています。次の問題点は計測に関してです。消費者の購入に至るまでのカスタマージャーニーを細分化されたモバイルで計測するには、複雑な作業を必要とします。この点に関しては、私たちは広告主と密接な関係を築き、イノベーションに向けて数々の実験を行っています。そして、最後の問題は、慣れ親しんだ商慣習です。広告主は10年もの間、同じように確立したマーケティングプロセスに従って業務を進めています。それは戦略、クリエイティブ制作、メディア購入などがリニアなプロセスとして成り立っている形が典型的です。しかしながら、デジタルや特にモバイルにおいては、これらのプロセスはより相互依存の関係が必要です。

―新興国で多く指摘されるのが、広告主、エージェンシー、パブリッシャーの知識不足です。ベトナムでも同様の問題をお感じになりますか?またその為に業界が行っていることがあれば教えて下さい。

ベトナムの広告主は非常に理解力が高いです。彼らはデジタルの重要性を理解している一方で、彼らの消費者はデジタルにシフトしています。また、同時に広告主は、ビジネスを成長させることの重要性も十分理解をしています。そういった中、現在の業界の取り組みにおけるチャレンジは、デジタル広告に関して「何故行うか」ではなく、「どう行うか」という点でしょう。この点においてベトナムでは、MMA(Mobile Marketing Association)や他の知識の深いリーダー達による組織において様々な取り組みがなされています。

Google社のこの問題に関する取り組みを挙げると、ちょうど最近YouTube Guru Programをベトナムにて立ち上げました。これにより、エージェンシーの担当者はオンラインビデオについての知識をつけ、YouTube上で如何に成功につながるマーケティングキャンペーンを実施するのかという点を学ぶことができます。

―ベトナムの消費者のインターネット利用について、何か他のアジア諸国と比べてユニークな点などありますか?

他の東南アジア諸国と同様、ベトナムはモバイルファーストの国で、PCよりもスマートフォンからのウェブアクセスが多い特長があります。ベトナムの消費者はモバイルで検索、サイト閲覧、動画視聴を行います。実際、ベトナム市場でユニークなのは、最後に述べた動画視聴の部分で、ベトナム人はオンライン動画が大好きです。ベトナムはYouTubeの視聴時間において世界中でトップ10に入ります。これはベトナムの、無料でどこにいっても使えるWiFi環境やシームレスな視聴体験、廉価なネットワークデータ利用費用といった特長と関連するものです。また、非常に質の高い3Gの接続環境により、バッファリングの必要なく動画の視聴が可能です。

―ベトナムではGoogle、Facebookといった環境以外でのメディアの数は限られますが、プログラマティックの普及についてはどのような考えをお持ちですか?

今後、2~3年の間に、よりプログラマティックによるメディア購買は広がっていくと思います。広告主のデジタルについての理解が促進されるにつれ、拡張性の高いデジタル利用について思いを巡らせるのは自然なことで、そこにプログラマティック普及のチャンスがあります。デジタルに理解を示す幾つかの広告主は、GoogleのDoubleClickなどとプログラマティックについての話を既に進めています。

―ベトナムにはUnileverやP&Gのような大企業とともに、多くの中小企業が存在してますが、ベトナムにおけるデジタル広告市場を牽引する広告主はどのような業種の人々でしょうか?

デジタル広告は、データ重視の広告です。デジタル広告は透明性が高く、計測が容易なため、マーケターにとって投資効果が見えやすい特長があります。これは予算が限定される中小企業にとっての利点であり、今まで広告投資を行っていなかった多くの中小企業が、現在広告にお金を費やしています。このような広告主は今までは口コミに依存していましたが、彼らのローカルコミュニティ以外へ顧客基盤を拡大し、国境を超えて海外市場にもアクセスするような好例も出てきています。こういった中小企業の新たな市場進出の素晴らしい実例によって、他の企業が同様の動きを促進し、ベトナムのデジタル市場の成長に繋がっていきます。ベトナムのオンライン教育を手がけるTopica社などはウェブの拡張性、及びスピードを活かして顧客基盤を海外に伸ばした好例と言えるでしょう。2007年の創立時点では、Topica社はハノイにオフィスを構えるだけでしたが、2010年にインターネットの利用に移行し、AdWordsの活用を始めました。彼らはAdWordsの新規顧客開拓における効果の高さにすぐに目をつけました。現在、彼らはシンガポール、インドネシア、フィリピン、タイにオフィスを構えるまでに成長しています。タイだけでも彼らは3000人を超えるオンライン受講生を抱え、現在も成長しています。

―ベトナムにおけるデジタル広告の将来性について教えて下さい。また将来の成長を牽引するサービスにはどのようなものがあるとお考えですか?

ベトナムは、デジタル広告のエコシステムが成長する転換点にあると思います。今後数年の間に、広告主はよりデジタルへの理解を深め、効果計測やプログラマティックなどの分野における成長が期待出来る一方で、消費者のデジタル利用と広告主の投資の間のギャップも埋まっていくでしょう。ベトナムが他の東南アジアにとって、デジタル広告利用の見本になる可能性も感じています。

私が期待するエリアはオンライン動画、効果計測、プログラマティックなどの分野です。これらのエリアではテクノロジーや、サービス内容、支出の面から多くのアクションが生まれてくると期待しています。

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ABOUT 黒川 賢吾

黒川 賢吾

株式会社Asia Plus CEO/Founder

主にNTT、ソニー、ユニクロにて海外プロジェクトやマーケティングを担当した後、2014年にAsia Plusを創業。ベトナムにてスマートフォンを活用したマーケットリサーチ事業を手掛ける。