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第三回:日本国内外のOutStream動画広告動向 |WireColumn

こんにちは、AOL プラットフォームズ・ジャパン齋藤です。またまた随分間が空いてしまいましたが、前回は米国の取り組みとして、数多くの動画コンテンツとInStream動画広告が多くのウェブサイトに掲載されていくための仕組みを、コンテンツエクスチェンジという手法でご紹介しました。今回は、日本国内外のOutStream動画広告をご紹介しながら、多様なOutStream動画広告を出稿される際の参考となるような情報提供ができればと思います。

OutStream動画広告を「InStream動画広告以外すべて」と考えると、ディスプレイ広告枠に動画広告を配信するIn-Banner動画広告もOutStream動画広告に含まれるなど、本当に多様になってしまいます。米国においても、OutStream動画広告は動画コンテンツが必要なく、動画広告が掲載可能なフォーマットを作りさえすれば掲載が可能という特徴があり、急激に伸びてきています。

日本はInStream動画広告の在庫が多くないためにOutStream動画広告を活用するという傾向が強いと思うのですが、米国ではInStream動画広告で実現が困難な点をOutStream動画広告でカバーしていく、という事を意図した広告商品も出てきていますので、そちらを紹介したいと思います。

ヒットする動画広告は大体使ってる?長尺も掲載可能なBeOn

例えばよくYouTubeのヒット動画広告として取り上げられるVolvo Trucksの事例です。非常に面白い動画広告ですが、実際これはYouTubeに動画素材をUPしただけでこれだけ拡散されるものなのでしょうか?

動画を拡散させたいプランナーがYouTubeに素材をUPするだけでは、目標の視聴数等もあり、さすがに不安かと思います。YouTubeのTrueView動画広告を出稿して視聴数を増やすことはできますが、どうしてもコスト的に高くなってしまいます。そこでAOLが提供するBeOnはパートナーとなっている多くの媒体社に働きかけ、PR表記を付けた上で、OutStream動画広告と動画広告再生プレイヤーを媒体に貼付してもらうのです。

それがYouTubeプレイヤーであれば視聴回数がYouTubeのアカウント上にもある程度反映され、急上昇やお勧めのトピックスとして取り上げられる可能性があがり、結果的にオーガニックな動画広告の再生も増えてくる仕掛けとなっています。OutStream動画広告を記事と共にコンテンツメディアに配信する事で、リーチの拡大、信頼感、自らの意思での動画広告再生を作り上げ、その結果として話題の動画広告として大手サイトに無料で取材されるケースもあるようです。

AOLは日本ではまだこのサービスを展開していないのですが、PRニュースのサービス会社が記事だけではなく動画プレイヤーも配信できるようにパートナーの媒体社に働きかけることによって、同じようなサービスが出来るかもしれません。

海外ではこのように、InStream動画広告で見せるにはなかなか難しい長尺素材を見せていく商品としてOutStream動画広告が活用されていたりもします。InStream動画広告の場合スキップボタンなしでは30秒が限界で、スマートフォンでの視聴環境になるとそれ以上に短くすることが必要言われている状況でもありますし、スキップボタンを付けたInStream動画広告は最後まで配信された場合でも「見たいと思ってスキップボタンを押さなかったのか?」「見ていなくて流れているだけなのでスキップボタンが押さないのか?」と、スキップボタンを押さないという同じアクションでも実際の行動は大きく異なります。こうした課題に対し、BeOnのように自然に動画広告の再生を促す仕組みは面白いと思います。

またこのような長尺の動画広告素材は、短尺とは異なる面白い計測方法が用意されているケースが多いようです。例えばBeOnではrealeyes社と連携しながら、モニターユーザーに公開前の長尺動画を見せ、反応を探りながら本公開の動画の構成を決めていく取り組みを行っています。

動画1秒ごとにモニターユーザーがどのような反応を見せたのか、顔の表情を読み取って、怒っている、笑っている、悲しんでいる、驚いている等の感情や反応を数値化していきます。それを分析する事で、例えばバイラルさせたい企業ロゴや商品・サービスを動画広告のどのポイントに入れていくのかという、最も難しいポイントをデータに基づいて検討することが出来ます。

事例としては、LG電子が液晶テレビの画質の良さをアピールしたバイラル動画広告事例で、上記リンクを見てもらえればと思うのですが、動画広告の最後に商品と企業ロゴを入れてしまっては、動画広告視聴ユーザーのテンションが相当下がってしまい、YouTubeやその他のSNS等でシェアされにくくなる事を、数パターンの動画広告の検証で事前に把握していました。この検証により最後にもうひとつネタを加えて動画広告を終わらせる事で、より拡散される可能性を高めています。

動画広告を自らの意思で再生したユーザーのインサイトを知ることで、特に難しい長尺の動画広告をより長く最後まで見させて拡散を促す施策を立てていく事が出来るのではないでしょうか?日本ではUnruly社が同じようにAffectiva社と連携して長尺動画広告を評価していく取り組みをされていますので、興味のある方は問い合わせてみてはいかがでしょうか?

多様化するOutStream動画広告

「オーバーレイ」OutStream動画広告

一方、短尺の動画広告を掲載していくOutStream動画広告はとても多様化してきています。日本の方がスピード感を持って続々と新フォーマットがリリースされているようにも見受けられます。恐らく日本の方がInStream動画広告の在庫が少ない分、進んで開発されていっているのかもしれません。

その中でもかなり活用されているフォーマットを挙げると、各社呼び方が違うのが問題なのですが、スマートフォン上でディスプレイをスクロールした後にも動画広告枠が残って掲載される「オーバーレイ」OutStream動画広告があります。このオーバーレイ型の動画広告の特徴としてはFacebook、Twitter、InstagramのOutStream動画広告とは異なり、長尺動画広告ではなく基本的には30秒までの動画広告に限られるのですが、最後まで動画広告を見る視聴完了率が高く、プランの結果としてはCPCV(完全視聴単価)が安くなる事が挙げられます。

また、オーバーレイOutStream動画広告はスマートフォンのAPPではなく主にWebsiteに掲載されるので、調査会社等の広告認知調査やターゲットリーチの計測も可能で、効果検証も可能になっていますし、Facebook、YouTube等のAPPをメインとするメディアに加えてプランニングすることでリーチの拡大が見込める事もあり、広告主サイドで数多く活用されてきています。

一方で媒体社側でも比較的高いCPMを背景にオーバーレイOutStream動画広告の導入が進んでいます。最近ではある程度広告主も増えてきているので、収益化の手法として認知されてきています。

ただ課題も多少存在します。ユーザーにとっては使用できる画面が小さく感じるため、不快感を抱く可能性があり、技術サイドやアドフォーマットとして配慮がなされているかを確認しておく必要があるかと思います。1人あたり、時間あたりの配信制限をかけているか?closeボタンが設けられているか?フリークエンシーキャップをかける事が可能か?ほとんどの場合これらのいずれかの配慮がされていますので、調査結果等でもネガティブな反応は見られていないようですが、出稿される際は確認した方がよいかと思われます。

縦型OutSream動画広告

C CHANNEL等のようなスマートフォンを縦で視聴するメディアの出現にともない、InStream型の動画広告もあるのですが、もちろん縦型のOutStream動画広告も多くのメディア、技術提供社から出てきています。特にFacebookやInstgram等でOutStream型の動画投稿コンテンツ、動画広告を見るケースが増えてきているのではないかと思います。アドフォーマットの視点から考えると、画面占有率も高く非常にインパクトがありますし、広告効果も高いと考えられ、今後MobileWebsite上でも相当多くみられるようになると思われます。ただ、先ほどのオーバーレイOutStreamよりも技術提供社によってアドフォーマットが大きく異なるので、出稿を検討される際にきちんと挙動を確認する必要があるかと思います。

縦型動画広告に関して海外の動向をみてみると、日本と同じように縦型動画サイト、APPが先行して展開されている状況で、縦型の動画広告自体をみるケースはまだそんなに多くありません。ただ相当に縦型のクリエイティブは各メディアや広告主の間で研究されてきており、tastemade.comのように同じコンテンツが縦でも横でもそれぞれに適した構図で見られるよう撮影され、横型はYouTubeやSmartTVに展開され、縦型はスマートフォンをメインに展開されるといったケースも見られます。手間がかかるのと、撮影の構図が限定されるという課題はありますが、非常にユーザーフレンドリーな展開かと思います。

広告主側で印象的だったのは、アパレル業界での活用です。横型のメディアよりも印象的に見せる事が可能なフォーマットとして、縦型を捉えていました。ファッションアイテムを纏ったモデルさんが、上から下までのトータルコーディネイトやスタイルを大きく見せる事ができ、非常にインパクトのあるクリエイティブ展開を始めています。

今後動画や動画広告を視聴する環境はますます多様化します。旧来の横型でもサイズの小さいスマートフォンの視聴から、家庭の大型TVまでものすごく差があります。スマートフォンの動画コンテンツや動画広告では、同時に映る人物が多すぎるとメッセージが伝わりにくいかもしれませんし、大型テレビの場合は同時に映る人物が1人だと場持ちがせず、寂しく感じるかもしれません。現在の縦型動画広告は、縦型の動画広告用素材がまだ多くない事もあり、横型でも掲載可能なアドフォーマットを採用しているところが多くあります。上下にディスプレイバナーを掲載し、タップ可能で補足説明ができるというもので、それはそれで意味があるものではありますが、本当の意味で拡大していくには、縦型ならではの動画広告の表現の仕方があると思います。その手法を発信していくのは常に縦型のコンテンツを作り、常にユーザーの反応をみているメディアや制作者ではないかと思いますので、私自身もそこから学んでいきたいと思っています。

多様化する動画広告にどう対応するか?

最後に、多様化する動画広告にどう対応していくのかというテーマですが、「色々あって良く分からないから、いつものメニューをやっています。」という話をよく聞いて残念に思ってしまいます。その点海外の広告主は明確です。目的と優先順位が決まっていて、次々と出てくる新しいアドフォーマットに関しては、音声やスキップボタンの有り無し、InStream、OutStreamに関わらず積極的に活用し、次期プランに関しては目的達成度で判断していくのです。技術提供者やメディアを信用し、ユーザーへの負荷が高すぎるアドフォーマットは結果的にメディアの不支持として帰ってくるという認識です。

また海外の動画広告を活用する広告主の主な目的は、ターゲットリーチの到達および認知~態度変容度を上げるというものが大半で、以下の手順の形に集約されてきている印象です。①動画広告素材は極力短い尺のものを用意(最大でも30秒まで)②ターゲットリーチのプランニングとしてターゲット含有率の多いサイトに配信③ターゲティングデータを使っての配信。※②との掛け合わせは、結果的にターゲットリーチが減るため行わない。結果はNielsenやコムスコアのリーチ計測、広告認知、態度変容で把握し、ユーザーのネガティブインパクトが相当大きい場合にのみフリークエンシーキャップをするか否かの判断を行うというものです。今後日本でも若者やビジネスマンを中心にTVCMではなく動画広告でアプローチしていく際に、多様化する動画広告を是非前向きに積極的に活用していただければと思います。

連載は今回で最後になりますが、今まで本当に有難うございました。

ABOUT 齋藤 司

齋藤 司

AOLプラットフォームズ・ジャパン株式会社
VIDEOマーケティンググループ

ラジオ、TVの放送作家を経て 2000年、雑誌をメインとした、広告代理店に入社。2003年11月デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社に入社し長年に渡り、 動画、SNS、TV局等のデジタルメディアを担当しWEB広告の啓蒙を行う。現在は、AOL プラットフォームズ・ジャパン株式会社にて動画事業を担当。 デジタルハリウッド等で動画広告に関する講師、講演も行っている。