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ネイティブ広告の利用:企業はなぜより良い広告に目を向けるのか

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

未来は明るく、そして未来はネイティブにある。DataXu社のCTO兼共同創業者Bil Simmons氏は、ネイティブ広告こそが現在デジタル広告が直面している問題のソリューションになると考えている。Simmons氏は、ExchangeWireに、進歩したテクノロジーと業界標準によってネイティブ広告がより広告主にとって魅力的なものになるためには、何がなされるべきかについて解説してくれた。

私たちは現在、多くのポップアップ広告のブラウザを閉じ、偏頭痛を起こすようなキラキラしたバナー広告に耐えなくてはなりません。デジタル広告がスタートしたばかりの時代には、きちんとしたルールも存在せず、そのためデジタル空間には様々な情報が混在し、消費者が欲しい情報にアクセスすることを妨げていました。

そのため、アドブロックのソフトウェアが非常に人気を集め、今日UKのユーザの22%が利用しています。
不適切で邪魔になるような広告に対して、消費者は不満の解決を求めましたが、企業が真剣に対応を検討することはありませんでした。
実際に、英国における企業広告は、今年のクリスマスシーズンにおいて50億ポンドも無駄に浪費されており、世界的に見ても、アドブロックにより2020年までに、200億ポンドもの影響がパブリッシャーにもたらすといわれています。

非常に多くの業界のプレイヤーが、広告がコンテンツと調和する形で共存が可能だ、と考えているのは非常に驚くべきことです。優れたユーザエクスピリエンスとパブリッシャーの高い収入の両方の実現が可能だと考えています。アドブロックの争いは、両者にとって良い形となって終焉すると考えられています。しかし一体どうやって可能となるのでしょうか?

高まるネイティブ広告への注目度

Dr. Bill Simmons,
DataXu社、CTO & Co-founder

ネイティブ広告は、ブランド企業、パブリッシャー、消費者のそれぞれにとって、未来のより良い広告業界へのドアを開くことでしょう。ネイティブ広告はエディトリアル環境とシームレスに統合し、配信されているコンテンツと調和します。これはWin-Winな関係で、視聴者はより優れたユーザエクスピリエンスを得て、パブリッシャーは広告収入やトラフィックを維持することができます。

ネイティブ広告の人気はこれらの利点だけによるものではありません。私たちのデジタル行動は変化しています。ネイティブ広告は古いフォーマットと比べても、それらにうまく調和するのです。モバイルやソーシャルが以前にも増して重要になる一方で、ディスプレイメディアの割合は減少しています。その代わりに、消費者はより多くの時間をFacebookやTwitterなどのソーシャルからのフィードに費やすようになっています。この変化は、消費者にとってバナーよりもスポンサーポストがより効果的になりつつある点を示唆しています。

ネイティブ広告はまた驚くほどに効果的です。 ShareThroughやIPGによると、消費者はバナーよりもネイティブ広告を25%多く閲覧するといわれ、ディスプレイ広告と比較しても52%も多くの消費者が、ネイティブ広告を閲覧していることになります。更に、ネイティブ広告はバナー広告と比較して18%も購入意思を高め、97%のモバイルメディアの買手は、ブランディングの目的を達成する上でネイティブ広告を非常に、または幾分効果的と回答しています。

しかしながら、利点は企業側だけではありません。デジタルコンテンツの収益化に苦しんでいるパブリッシャーもまた、収益を向上させることができます。国際ニュースメディア協会(INMA)の調査によると、調査に参加した89%のパブリッシャーが、ネイティブ広告は重要であると回答しています。

明るい未来

最近までネイティブ広告はウェブサイトのトピックにマッチするため、ダイレクトチャネルを通じて取引されるのが主でした。しかしながら、3月にIABはOpenRTB Native 1.1をローンチし、ネイティブのリアルタイム取引を標準化し、ネイティブが広く広まるためのきっかけを作りました。
現在、主要なアドネットワークやエクスチェンジが、プログラマティックチャネルを通じて、ネイティブ広告を取引しています。

広告業界がネイティブ広告の利用を続けることで、どのような利点や改善点を私たちは期待できるのでしょうか?

1. プログラマティック取引によるネイティブ広告における正確性が改善されます。ファースト、サードパーティからのサポートによって、マーケターはネイティブを利用して、広告は特定の消費者に向けて配信されるようになります。

2. プログラマティックネイティブが、ユーザエクスピリエンスの向上に適用されるようになり、単一のキャンペーンにおいて、様々なコピーやクリエイティブが利用されるようになります。広告取引において自動的に、パブリッシャー、ビューアーの両方にとって最適なインプレッションを見つけ出し、画像やテキストを選択するような取引が行われます。

3. 標準化が行われ、自動的な取引が行われることで、ネイティブ広告は、非ネイティグと比較しても、より簡単に実行されるようになり、効率化の改善につながるでしょう。また、ユースケースに応じてコピーやクリエイティブが自動的に適用されることで、プログラマティックネイティブキャンペーンは、拡張性の高いものとなるでしょう。

IABの公式なネイティブ広告に関するガイドラインは、昨年春にリリースされたばかりですが、エコシステムはネイティブの活用のための準備が整っています。最新の業界スタンダードに適用することで、企業は、現在ユーザエクスピリエンスが無視されていると感じている消費者からの信頼を取り戻すことができるでしょう。

Business Insider Intelligence社によると、5年のうちにネイティブ広告はアメリカのディスプレイ広告の74%を占めると予測されています。
ネイティブ広告をプログラマティックに取引をすることで、これほどのメリットがあるのであれば、英国もアメリカに遅れをとらないような対策が必要でしょう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。