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パブリッシャーが電子メールを利用してFacebookの独占に対抗するには

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

電子メールはFacebookよりも収益性の高い最古のマーケティングチャネルの1つであり、パブリッシャーにとって有益なものです。PostUp社の副社長Keith Sibson氏は、パブリッシャーが消費者と直接的な関係を築くことは、ソーシャルメディアプラットフォームの世界で競争力を発揮するために正しい戦略であると述べてくれた。

デジタルパブリッシャーはコンテンツを収益化することの苦心しながらも、プラットフォームへの依存度を高めています。しばらくの間は機能したものの、アルゴリズムの移行やソーシャルメディアの収益性の向上に伴い、パブリッシャーはデジタルでのビジネスモデルを維持するために、新しい方法が必要になってきています。

一方、電子メールによるニュースレターは、大きな変化を迎えています。これらの2つの出来事が同時に起こっていることは偶然ではありません。電子メールは、プラットフォームビジネスとは異なる形で、関係構築や消費者育成のためのツールとして、パブリッシャーにとっての収益改善のためのツールとして定着しています。成功をおさめるパブリッシャーは電子メールを活用しており、他のパブリッシャーも追随しようとしています。

コモンズの2つの悲劇:プログラマティック&プラットフォーム

パブリッシャーは、インターネットが印刷事業のビジネスモデルを追いやって以来、収益を最大化するための方策を求めてきました。伝統的なパブリッシャーは、オンライン広告インベントリを販売するために営業チームを使って広告販売モデルをデジタルに利用してきました。そして、プログラマティックの収益モデルにより参入障壁は取り除かれ、あらゆる規模のパブリッシャーにとって実務的なビジネスモデルが形成されました。しかし、誰もがプログラマティックから利益を得るために競争するにつれて、広告在庫が急増し、インプレッションあたりの収益が急激に低下しました。パブリッシャーは、現状のモデルが機能し続けるために、より多くの人々に広告を配信する必要がでてきました。

プログラム的な収入源を支えるために、パブリッシャーはFacebookに目を向けています。初期段階でサービスを開始した人々は、大勢の観客に広告を届け、クリックさせることで簡単にお金を稼ぐことができました。しかし、より多くのコンテンツクリエイターがFacebookのパイのために競争し、パブリッシャーは「コモンズのシナリオの悲劇」の真ん中にいることに気づいたのです。安価なコンテンツの供給過剰とパブリッシャー間の競争を促進するアルゴリズムによってオーガニック・リーチは減少し、収益も落ち続ける結果に繋がりました。

パブリッシャーは現在、他の環境で消費者から収益を上げる方法を模索しています。パブリッシャーは、プラットフォームの不都合な副作用を克服しながら、方策を見つける必要があります。簡単なクリックを追うことによって、パブリッシャーは消費者との直接的な関係を失いました。パブリッシャーは数百万のFacebookファンを所有はしていません。パブリッシャーは利益を確保するために、プラットフォームの気まぐれな変更の影響を受けない形で、消費者とコミュニケーションをとるための方法を確立する必要があります。

パブリッシャーはメールで消費者との関係を再構築

Keith Sibson氏、PostUp社
VP Product & Marketing

電子メールは間違いなく、これらの関係を構築するための最も効果的なコミュニケーションのツールです。アルゴリズムによってコントロールされているソーシャルメディアプラットフォームのフォロワーとは異なり、電子メールにおいてはアルゴリズムの変更など気にせず、パブリッシャーはいつでも好きな時に、好きなデバイスに対してリーチすることができます。所有者として自分の電子メールリストを活用することができます。電子メールは、企業がいつでも、任意のデバイスに対して、アルゴリズムの変更に依存することなく、消費者にリーチ可能な直接的な手段です。

ニュースレターはパブリッシャーに人気があるだけでなく、ユーザとのエンゲージメントを高める最も効果的な方法の一つです。電子メールでは、読者はヘッドラインを追いかけるも、パブリッシャーサイトの記事リストを探し求める必要もありません。電子メールは、読者の利便性を優先して、コンテンツを自分の好きなように完結させるための方法を提供しています。さらに、パブリッシャーの中には、自分のサイトよりもより多くの非公式のコンテンツを配信するために電子メールを使用する事業者もいます。ニュースレターのコンテンツのより個人的なトーンにより、パブリッシャーと読者の関係はさらに強力なものになります。

Facebookはすぐに無くなることは無いため、新しい消費者とのつながりを確保するために、パブリッシャーはソーシャルメディアの幅広いリーチ力を最大限に活用する必要があります。オーガニック・リーチのパフォーマンス低下やプラットフォーム内のソーシャル・トラフィックと競合する代わりに、パブリッシャーはこれらの消費者を電子メールの読者に変換することができます。 Facebookのフォーム機能やユーザ情報獲得の手法を活用して、パブリッシャーは消費者とプラットフォームに依存しない形でつながることができます。パブリッシャーが収益にツナ得られるのはこれらの独自の消費者からなのです。

電子メールで消費者から収益化

更なるリソースを必要とする他の通信チャネルと異なり、電子メールはパブリッシャーの収益の源泉になり得ます。広告ベースであれ、有料サービスであれ、電子メールのニュースレターは、あらゆるデジタルビジネスモデルを補完するのに多様な方法があります。

広告収入のみに依存しているサイトでは、電子メールを使用してトラフィックを増やすことも可能です。一般に、電子メールによりリーチする消費者は平均的な読者よりも魅力的です。彼らはセッションごとにより多くのページを訪問し、ソーシャルメディアから離脱してしまうユーザと比較しても、何度も多くあなたのサイトに訪問することでしょう。Facebook経由の訪問者は1訪問あたり平均1.2ページビューで、再訪することは恐らく無いのに対して、熱心な電子メールの読者は、セッションごとにページビューを増やし、何十回もサイトを訪れることでしょう。

プレミアムサイトでは、電子メールを使用して読者を有料の加入者に変換することも可能です。プレミアムパブリッシャーから定期的なコンテンツを直接受け取る利点は、読者にその価値を認めやすい方法です。 New York Timesは、電子メールニュースレターを購読した場合、2倍の確率で有料の購読に繋がったそうです。

パブリッシャーが、ニュースレター読者が有料ユーザに変換するのを待つ一方で、電子メール自体には多数の広告ソリューションがあります。電子メールにより、パブリッシャーは広告ブロッカーを迂回し、従来のバナー広告、ネイティブ広告、スポンサードコンテンツを、広告主にとって価値の高い、興味を抱きそうな読者に対して配信することができます。実際、PostUp社の顧客の何社かは、電子メールプログラムを通じて収入の3分の2を挙げています。

結論

これはよくあるストーリーと考えられます。パブリッシャーは流行りのプラットフォームの潮流に追いつくために多くの時間を費やしていましたが、彼らが求めた答えはより近くに存在するのです。電子メールは新しいものではありません。プログラムやプラットフォームにおける問題が浮上するにつれ、パブリッシャーはメールを利用する価値を再認識しています。電子メールはパブリッシャーの苦境を解決するための革命的な解決策ではないかもしれません。一方で、収益化の問題に対する答えが何であれ、電子メールは役割を果たすことができます。今後パブリッシャーは、電子メールの消費者開発と収益の可能性を利用せずに、競争に勝ち抜くことは難しくなるでしょう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。