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フェイスブック ジャパンとフィードフォースが語る、フルファネルでダイナミック広告を活用する方法 [インタビュー]

Facebook / Instagramのダイナミック広告について、フェイスブック ジャパン 中小企業事業担当 パートナーマネージャの大谷直史氏と、ダイナミック広告に特化した広告運用サービス及びデータフィードの構築支援サービスで業界をリードするフィードフォース取締役の喜多宏介氏に、その活用の現状やトレンドについて伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

フルファネルで取り組むFacebook / Instagramダイナミック広告

― Facebook / Instagramのダイナミック広告は、いつ頃からできるようになりましたか?

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大谷氏 Facebookのダイナミック広告は2015年からスタートし、その後2016年5月からはInstagramへもダイナミック広告を配信できるようになりました。日本ではInstagramアカウント数の伸び率が非常に高く、2015年以降、月間アクティブアカウント数が約2.5倍増え、2017年9月時点で2000万となっています。したがってダイナミック広告の配信面はFacebookのみならず、Instagramも活用していただいたほうが広告パフォーマンスを高めやすい状況にあります。

― ダイナミック広告のFacebookとInstagramへの配信面の比率は、現状どのようになっているのでしょうか?

大谷氏 当社の広告はアクションをとってくれる利用者を、Facebook、Instagram、またはオーディエンスネットワーク(広告ネットワーク)のどのプラットフォームで獲得するかによって各プラットフォームの配信ボリュームが決まります。したがって、広告キャンペーンごとの目的に応じて、配分比率がすべて異なります。

Instagramに広告を配信する場合、Instagram用に独自のキャンペーンを展開しないといけないというイメージを持たれているかもしれません。しかし、ダイナミック広告においては、InstagramをFacebook広告の配信先の一つとしてとらえていただくのがよいと思います。Facebook、Instagramそれぞれに同時配信することも出来ますし、Instagramのみに配信することも可能です。

利用者はInstagramで欲しい商品を探したりするなど、発見の場としてInstagramが利用されるケースも増えています。ブランディングだけではなく実際のアクションを促す機能もあるので、ブランディング目的、獲得目的、どちらでもご利用いただけます。

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喜多氏 当社がサポートする広告主様によっては、ご予算を100%Instagramに寄せるケースもあります。Facebookのエンジンは優秀でコンバージョンしそうなユーザーがどの面にいるかというのを判断できます。

お客様に「Instagramをやりましょう」とお話しした時に、「Instagramはきれいな画像を用意したほうがよいのでは?」というイメージをやはり持たれています。とはいえ、Instagram用の画像を用意できないことも多いので、今ある画像を使いトライアルで走り始めることもあります。その際に600×600ピクセルの正方形の画像が必要なのですが、正方形の画像を持っている企業はまだまだ少ないです。そこで弊社で画像を成形してデータフィードを用意し、Instagramに配信が出来るようにデータフィードの最適化を行っています。

― Facebookは2016年頃からフルファネルでのFacebook広告の活用を提案されていますが、実際のところ広告主側の反応はどのような状態でしょうか。

大谷氏 私が担当している中小企業事業の領域では、まさにこれから本格展開していくところです。フルファネルで実施となると、獲得フェーズだけではなく、認知・興味フェーズでCPAやコンバージョン数とは異なるKPIを設定する必要があります。ブランディング目的の広告に触れたユーザーの方が最終的なコンバージョンに繋がりやすかったという事例が国内でも出てきているので、弊社としてはこれからもそのような成功事例を広告主さん、代理店さんと作っていきたいと考えています。

Facebookダイナミック広告は、元々サイト訪問履歴があるユーザーのみに配信する広告でした、現在はブロードオーディエンスに配信することができるようになり、サイト未訪問の方にも広告配信できるようになりました。この機能を全ての広告主様にお使いいただけるようになったのが2017年9月からなので、これから益々ダイナミック広告を認知、興味フェーズのお客様に対して配信していく流れが加速していくと予想しています。

喜多氏 広告効果の点で言いますと、CPAをクリアすれば良しというのではなく、どの媒体から来たユーザーがどのくらい購入しているのかも評価していただきたいと思います。そこまで成果を追えている広告主様であればFacebookのエンジンは優秀ですから、LTVでみてもすごくよい結果になるということがわかります。

― Instagramは、今後どのように普及が進んで、進化していくでしょうか?

大谷氏 Instagramでもストーリーズをはじめ、動画の視聴が飛躍的に伸びています。一昨年と比べ昨年は総動視聴時間が約8割増加しました。また1日あたりに投稿される動画の数も約4倍増加しています(ライブ動画を含む)。動画視聴のトレンドはこれからも継続するものと考えています。またInstagramはより日常生活に密着したプラットフォームへと進化しています。以前はアートやフィルタをかけて雰囲気のある写真を投稿するという利用法が主流でしたが、現在はペットやファッション、料理、旅行などより生活に密着したテーマの投稿が増加傾向にあります。

Facebookも後押しする業界別ダイナミック広告、越境EC

― ダイナミック広告について、業界別でそれぞれどのように活用が進んでいるかをお聞かせください。

大谷氏 ダイナミック広告は元々eコマース事業者にご利用いただくメニューとしてロンチしました。現在ではダイナミック広告が持つ機能的な強みを他業種の広告主様にも享受していただきたいと考え、現在横展開を進めています。現在、旅行業界・不動産業界・自動車業界などに対応しています。例えばECの場合は「商品を見た」「カートに入れた」「購入した」などのユーザー行動シグナルをトラッキングして最適な広告配信を実現しますが、旅行業界向けの場合は、サイト上で指定した旅行日程など、旅行ならではのユーザーシグナルを捉え、広告配信に活用するイメージです。

喜多氏 日本では人材業界のFacebookダイナミック広告の活用が進んでいると思います。新しい施策にチャレンジする広告主様が多いですね。

― 今、Facebookダイナミック広告の越境マーケティングでの活用が注目されているとのことですが、こちらについても詳しくお聞かせください。

喜多氏 お客様から、ツアー系の広告を台湾とタイに配信できないかというご相談をいただきました。そこでデータフィードを言語ごとに用意できるか確認したらできるということでしたので、広告配信を行うことになりました。Facebookさんからもサポートをいただきながら配信したところ、とてもパフォーマンスがよかったです。Facebookのダイナミックを海外に配信して、効率よくインプレッションを稼げて効果がよいとわかったため、これは可能性があると強く感じました。

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大谷氏 Facebookでは、「越境」のことを「クロスボーダー」と称して、アウトバウンドもインバウンドも注力しており、サポート体制を強化しています。
具体的には「クロスボーダーインサイトハブ」という、海外オーディエンスに対して広告配信する際に有益な情報を提供するサイトを公開しています。クロスボーダー配信用にターゲティングの機能も拡充しています。最近では類似オーディエンスを海外で探せるようになりました。これにより日本のお客様のデータを元に、海外でその日本のお客様に類似したユーザーを見つけ、広告配信ターゲットとして設定することができます。

喜多氏 海外配信の場合、国内サイトと違いブランド認知にKPIを設定するケースが多いです。ですが、Facebookダイナミック広告であれば、認知を獲得しながらプラスαでユーザーが購買しそうなものや興味関心のあるものが広告で表示されます、というお話をしています。これはいままでになかったものです。

フィードとタグの重要性(クリエイティブ最適化、機械学習)

― フィードとタグの重要性、クリエイティブ最適化、機械学習などについて詳しくお聞かせください。

喜多氏 日本でダイナミッククリエイティブが流行ったもとになったのはCriteoです。Criteoフィードはシンプルなので始めやすく、Yahoo!JAPANのような良質な配信面を持っており、高い成果を上げています。広告主様は成果がよければ、データフィードのチューニングをしなくてもいいという雰囲気もありますが、Facebookのような精緻なデータを持つプラットフォームもありますので、しっかりとデータフィードを用意することで高い成果を出したいと思っています。

Facebookのデータフィードには必須項目と推奨項目がありますが、必須項目は当然として、推奨項目も必ず入れるようにお客様にお願いしています。データフィードに含まれる情報が多いほどFacebookのエンジンは学習しますので、推奨項目ではありますができる限り入れていただきたいです。ただ、難易度が高い推奨項目もあります。それに対応するのはハードルが高いのですが、弊社がデータフィードベンダーとして広告運用まで行う際には、Facebookの精度の高いエンジンを活用して広告効果を最大化するためによいデータが必要です。ですから、推奨項目ですが必須項目だと思って頑張って入れましょうという提案をしています。

タグについても、ユーザーの行動情報は取得した方が絶対によいです、そのためにはタグをすべての階層に入れねばなりません。ただ、その実装は意外に負荷が高く、技術的なハードルがあると感じていますので、そこはしっかりサポートしていきたいと思います。

大谷氏 商品在庫数などを正確かつリアルタイムで広告に反映できているのが理想の状態です。いかにフィードをリアルタイムで更新していただくか、が成功の鍵となります。

データフィードへの取り組み、広告代理店はもっと危機感を

― Facebookのダイナミック広告を運用する上で、広告代理店にはどのようなことが求められますか?

大谷氏 お客様に広告素材のアセットをいただき、それを入稿するという通常のネット広告の流れとは異なりますので、まずデータフィードの扱いに慣れていただくことが必要です。その点フィードフォースさんはデータフィード領域に特化されていて、かつFacebook広告の新機能の把握や理解がとても速いです。また、ダイナミック広告を設定する場合、お客様のサイト構造も理解していなくてはなりませんので、通常のディスプレイ広告とは異なるリソースやスキルが必要とされます。

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喜多氏 当社はもともとテクノロジベンダーですが、広告運用も行います。お客様に機能のキャッチアップも含めたサービスを提供してコミュニケーション・デリバリーを行わなければ、プラットフォームの機能を最大限活用することができません。テクノロジベンダーが広告運用をしてしまうということに関しては、従来の広告代理店さんには危機感を持っていただきたいです。

大谷氏 広告なのでクリエイティブは重要な要素ですFacebookのニュースフィード上では、アテンションのない広告はそのまま利用者の親指を止めることなく、スクリーン上を通過してしまいます。ダイナミック広告においてクリエイティブの要素、つまり画像や広告ユニット内に表示する情報はデータフィードの中に登録されています。従ってデータフィード内の情報のチューニングができなければ、クリエイティブを改善することができません。ダイナミック広告を配信される広告主様はフィードの扱い方、最適化を得意とする広告代理店のサポートを得ることで、成果の最大化を図ることができると考えています。

今後広告運用は更にオートメーション化が進むでしょう。パーソナライズして情報を届けていくので、人の頭で考えて細かい調整を行うには限界があります。利用者にとってベストな広告を自動的に出す最適化はどんどん進化していくでしょう。常に大きな変化の中でビジネスを行っていることになりますが、パートナーの方々と知恵を絞り、広告主のブランディングやビジネス構築に貢献したいと思っています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。