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クロスデバイスデータの本当の価値を明らかにする

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

Yahoo UKとEnders Analysisは、2020年までにクロスデバイス戦略が英国全体のオンライン費用の58%を占めると予測している。 この統計はマーケッターにとって驚くべきことではない。 平均的な英国の世帯が7つ以上のインターネット接続デバイスを所有しており、それぞれがオンラインでの購買において利用されていることからも、クロスデバイスが注目を集めているのは不思議ではない、とTapad社EMEA地域VPのTom Rolph氏は説明してくれた。

デバイスとデータセットの量が増えることは、マーケッターにとっては必ずしも素晴らしいこととは限りません。 いかにデータを特定していくのかを考慮しない限り、マーケッターは意図せずにユーザー体験を損ねてしまいかねません。 検索行動、購入意思、デバイス使用状況を通じて消費者を特定することで、マーケッターはパーソナライズされ、かつ信頼できる体験を提供し、コンバージョンの促進を実施することができます。

自動車の潜在能力が自動車知識と運転能力に依存するように、クロスデバイスの力はマーケッターがいかにその能力を理解するかにあります。ここでは、クロスデバイスがマーケッターにとって戦略の一部となるべき主な3つの理由について見ていきましょう。

クロスデバイスはコンバージョンだけに留まらない

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Tom Rolph氏、Tapad社 VP EMEA

消費者が1つのデバイスでコンバージョンを達成したからといって、別々のデバイスにおけるコンテンツのやりとりに価値がないわけではありません。 例えば、そのインサイトによって、モバイル対デスクトップ、またはモバイルとタブレットのどちらが好きなコンテンツかであったかの理解は有益です。こういった情報は、モバイルがデスクトップを上回り、より利用されるデバイスになり、スマートフォンが検討段階において影響力の高いデバイスである現状において、非常に重要なことです。

マーケッターは、「ラストクリック」に目を配るだけではなく、モバイルなどの影響力のあるデバイスのアクションがデスクトップ上の消費者の意思決定にどのように影響するかを考えなければなりません。考え得る事例としては、ホームページのデバイス間の引き継ぎです。こういったブランド戦略は高額になりがちで、キャンペーン終了とともに活動も終了に至るケースがよくあります。しかし、このキャンペーン結果を最大限に活用するためには、あなたの戦略はそこで終わるべきではありません。マーケッターは、キャンペーンのデータを活用して、正しい時に適切に消費者に最も効果的なデバイスにてリーチするためにクロスデバイス戦略を活用することができます。例えば、デスクトップでのホームページの引き継ぎ後に広告をクリックした消費者に対して、モバイルでよりパーソナライズされたメッセージを表示し、広告へのエンゲージメントを促すことができます。マーケッターがこの2度目の接触で成功した場合には、この消費者が購入する可能性が最も高いと考えられるデバイスや時間を指定しリーチし、コンバージョンにつなげることが可能です。

クロスデバイスは、データを使用して消費者をよりよく理解し、将来の広告の成果向上のために、すべてのデバイスにおける動向を把握できるようにします。 検討から購入までのますます複雑になるカスタマージャーニーをトラッキングできることは、マーケッターにとって、デバイス中心ではなくユーザー中心の観点で消費者の動きを把握できることを意味し、ユーザー体験をより深く理解することができます。こういった背景から、 現在より多くの企業が独立したID管理ソリューションやデバイスグラフを使用し、データを活用することで全体のテクノロジースタックに役立てているのです。

クロスデバイスはデータのサイロをつなぎ合わせる

当社独自のデータによれば、消費者の35%は検討をしたのとは異なるデバイスでコンバージョンに達しています。これは、オーディエンスが1日のさまざまな時点で複数のデバイスの複数のブラウザでアクセスを行い、複数のチャネルを介して企業、インフルエンサー、会社同僚などから情報を収集していることを意味します。 その結果、企業は細分化されたデータソースと直面する必要があり、サイロ化されたデータをカスタマージャーニーの洞察に繋がるような有意義なデータに置き換え、効果的な顧客エンゲージメントに関する戦略を立案する必要があります。

このソリューションは、潜在顧客と既存顧客の両方に関して機能します。単一のデータ分析によりモバイルとデスクトップ・タブレット上の消費者行動を理解するだけでなく、マーケッターが同じ消費者に対して重複広告を配信したり、広告費を浪費したり、消費者を不快にさせるような問題を解消します。 すでに購入済みの靴の広告を見たり、同じ広告を全てのデバイス上に表示されたりすることをユーザーは望んでおらず、意味のある消費者体験を維持するにはデバイス間の理解が不可欠です。 つまり、マーケッターはデータを見直して、クロスデバイスにおけるデータをつなぎ合わせることができる必要があります。この単一での顧客理解の機能は、マーケッターに消費者との個人的な関係を構築する大きな機会を提供します。

クロスデバイスによるキャンペーンの効率化

クロスデバイスデータの価値を十分に理解するためには、マーケッターは消費者が複数のデバイスを利用している点を認識し、消費者データが共有される様々なチャネルの過剰性について気をつける必要があります。関連性の高い、トラフィックが多いサイトにおける複数デバイスの利用から、近隣の店舗に関する位置情報まで、クロスデバイス戦略によりキャンペーンの効率性を高め、無駄なデータを削減することができます。これは、クロスデバイスにより、チャネルと関連デバイスの間の関連性を理解し、企業のマーケッターが測定可能で透明性の高いキャンペーンを提供することができるからで、特に世帯あたりのデバイス数が増えるほどに効果を発揮します。例えば、初めて購入する車への憧れのあるティーンエイジャーは、ルックス、エンジンサイズ、その他の周囲が憧れるような機能を重視して車を選ぶかもしれません。一方、最終購入決定を行う可能性が高いその両親は、安全機能と価格に重点を置いています。クロスデバイスを使用すると、意思決定プロセスに応じて複数のユーザーにアプローチし、適切なコミュニケーションをパーソナライズすることができ、最終的に無駄な広告費や無関心なコンテンツの提供を避けることができます。

デバイス間のデータを活用することで、マーケッターは、どの時点で顧客離脱が発生するのかを正しく特定し、単一的で統一されたユーザー認識を行い、消費者が認知から購入までどのような経路を経たのかを理解することができます。その結果、データの利用は安価になり、情報のオーバーロードは問題ではなくなります。 現在、マーケッターは無駄な広告費用を甘受する代わりに、クロスデバイスのデータを理解することで、より適切なタイミングで正しいデバイスに対して正確なターゲティングを行うことができます。

クロスデバイスマーケティングモデルに移行することで、マーケッターは、新しいチャネルや情報過多の環境にも関わらず、より費用対効果の高い施策を実現することができます。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。