「“コンバージョンしない”コンテンツ」はどう評価する?イスラエル発アトリビューション解析ツールTRENDEMONと導入企業リクルートキャリアの取り組みとは? [インタビュー]

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メディア運営に関わった経験がある人ならば、誰もが「お金にはならないが大事なコンテンツ」の扱いに悩んだことがあるだろう。テクノロジーは多種多様なコンテンツを適切に評価できるのか。アトリビューション解析ツールを提供するTRENDEMONの日本代表とリクルートキャリアのオウンド・メディア運営責任者に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 長野雅俊)

目指すはコンテンツ測定の世界標準

― 自己紹介をお願いします。

ハレル氏 TRENDEMONの日本事業における責任者を務めるハレル・ポラートです。2014年にイスラエルで設立された当社は、オウンド・メディアを運営するB to Bの米国企業を中心とした約130社とお付き合いがあります。コンテンツに投資し、コンバージョン指標を持つあらゆる企業が対象顧客です。日本市場には2017年に参入し、既に50社近くのお客様とお取引させていただいています。

デジタル時代とも呼ばれる現代ではありとあらゆることが計測可能となりましたが、コンテンツ評価はいまだ多くの課題を抱えています。我々の目標は、この課題に対する解決策を提供し、コンテンツ測定の「世界標準」になることです。

石井氏 リクルートキャリアのブランドコンテンツグループに所属する石井束査です。「リクナビNEXT」や「リクルートエージェント」といった当社の転職サービスをまだご利用していない方々とコミュニケーションを図ることを目的に、「リクナビNEXTジャーナル」を始めとするオウンド・メディアの編集や運用を行う組織のマネージャーを務めています。

― コンテンツ分析ツールはほかにも多くありますが、TRENDEMONの特徴は何ですか。

ハレル氏 これまではGoogle Analyticsがコンテンツ分析ツールとして広く使われてきました。素晴らしいツールですが、限界が露呈してきたというのも事実だと思います。「ファーストタッチ」と「ラストタッチ」以外にも重要な指標が次々と生まれてきたからです。

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ウェブ上のカスタマー・ジャーニーは複雑化していく一方です。もはや「検索からランディング・ページにたどり着き、コンバージョンする」という単純な導線だけではありません。しかもユーザーはより洗練され、バナー広告には見向きもせず、読み物として良質なコンテンツを追い求めるようになってきています。つまり以前よりもずっと多様でかつ長い距離のカスタマー・ジャーニーを追う必要があるのです。サイトを訪問してから4カ月を経てやっとコンバージョンするということも決して珍しくありません。TRENDEMONは、広範囲なカスタマー・ジャーニーにおける異なる段階ごとのアトリビューション分析ができるということに最大の特徴があります。

TRENDEMONが扱うカスタマー・ジャーニーの範囲

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(出典: https://trendemon.jp/

石井氏 リクルートキャリアにおいても、Google AnalyticsやAdobe Analyticsといった計測ツールを利用してきました。ただこれらのツールでは、会員登録や資料請求には直接的には結びつかないけれども良いコンテンツ、というものを適切に評価することが難しいです。TRENDEMONであればCVに間接的に寄与した「質の高いコンテンツ」を可視化ないし構造化できるのではないかという期待を持って、導入しました。

ハレル氏 TRENDEMONのトラッキング技術では、ワンタグを入れるだけでクロスドメインかつクロスデバイスをトラッキングすることが可能となります。リクルートキャリア様のような長期検討商材の場合、転職ユーザーがコンバージョンするまでのジャーニーは極めて長くなり、接触コンテンツ、メディアも多岐にわたります。

通常であれば、このようなカスタマー・ジャーニーを全て可視化しようとした場合、作業工数として莫大な時間を必要としますが、TRENDEMON上ではすでに解析されたデータがダッシュボード上で一目で分かるようになっております。さらに、アトリビューション分析においても一般的なツールと比較して平均で10倍以上の速さで分析結果を出すことが可能です。

コンテンツの評価指標がPVしかないのは問題

― カスタマー・ジャーニー全体を把握すると、オウンド・メディア運営においてどのような施策が打てるようになるのでしょうか。

ハレル氏 TRENDEMONの調査では、コンテンツがビジネス・ゴールに寄与するコンテンツの割合は平均で全体のわずか15%に過ぎないということが分かっています。この15%がどんなコンテンツであるかを把握し、より良い質の高いオウンド・メディアをつくっていくというのが一般的な施策となります。

TRENDEMONは実装が非常に簡易であり、タグマネージャーを使ってコードを1行追加するだけなので、実装作業は20分以内に完了します。あとはマーケッターがKPIを設定すれば、分析作業はすべて自動化されるのです。コンバージョンに関する数値以外にも、何人がコンテンツを再読したか、特定のページがカスタマー・ジャーニーのどの段階で最も機能するのか、何人が特定のページを読んだ後に回遊したか、また何人が広告キャンペーンを通じてウェブサイトを訪れ、その後オーガニックに再訪したか。これらの指標をまとめてTRENDEMONがスコア化し、「ランディング」「ナーチャリング(育成)」「コンバージョン」といった各段階において最もパフォーマンスの良いコンテンツを特定します。

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石井氏 コンテンツ制作をする立場としては、記事の品質を評価するときに、PVやソーシャル・アクション数などを用いることが多いのですが、本当にそれらのKPIがビジネスに貢献しているかは分かりにくい状況にあります。従って「CVに寄与しているか」どうかというような、アトリビューション・スコアが可視化されることで従来の指標だけではない形でコンテンツのPDCAを回すことが可能になり、結果としてより大きなビジネス・インパクトを創出できるのではないかという期待ができると思います。

― 再読率や回遊率などを合算して独自の方法で各コンテンツをスコア化しているとのことですが、例えばコンバージョンとランディングそれぞれに対する加点の仕組みを調整するなどのカスタマイズはできるのでしょうか。

ハレル氏 当社のアトリビューション分析モデルそのもののカスタマイズは行っておりません。少なくとも現段階では変える必要性を感じていません。我々としては、例えばコンバージョンとランディングのどちらがより価値があるかを判断することよりも、カスタマー・ジャーニーのどの段階においてどのようなコンテンツが効果的なのかということを把握することこそが重要であると考えています。

ただ当社のもう一つの特徴として、顧客にデータを提供していることが挙げられます。その他の分析ツールはダッシュボードを提供しても、データそのものは保有できないことが多いのとは対照的です。必要であれば、我々が提供する生データを使って、各社独自のアトリビューション分析システムへと統合することができます。

また新機能を随時リリースしています。最近では、ブランディング・キャンペーンに対応する機能を用意しました。ブランディング効果を計測するため、複数回にわたりサイトに戻ってきたユーザーや、一度に3、4ページをまとめて読み込んだユーザーを特定し、そうしたユーザーがトラフィック全体の何割を占めるのか、ということを可視化します。

米国では「コンテンツ・マーケティング」は死語

― TRENDEMONの顧客の多くは米国にいるとのことですが、コンテンツ・マーケティングに関する日米の違いについてお聞かせください。

ハレル氏 コンテンツ・マーケティングが成熟している米国では、「コンテンツ・マーケティング」は死語です。マーケッターはただ「マーケティング」と言います。一方の日本におけるコンテンツ・マーケティングの本格的な取り組みはまだ始まったばかりという印象です。企業がソーシャルメディアやYouTubeの自社アカウントを持つことが当たり前になったことと同様に、今や名の知れたほぼすべての企業がオウンド・メディアを持っているのではないでしょうか。そしてどの企業も、オウンド・メディアへのトラフィックに関するデータを収集することに高い関心を持っています。自社ブランドに興味を示したユーザーに関するデータを収集そして保有することはFacebook、YouTube、Instagram、Twitterではできないから、というのが一番の理由でしょう。

― マーケッターとしての立場から、コンテンツ・マーケティングを行う一番の意義は何ですか。

石井氏 日本の転職市場で活動する求職者は孤独です。同僚や上司には相談できないし、転職を経験したことのある知人や友人自体が少ないので、誰に相談したらいいか分からない。そこで検索して転職に関するコンテンツを読むことで、「やり方」を知ったり、「不安を解消」されたりする方が多くいます。ところが、ウェブ上には本当なのか嘘なのかよく分からないコンテンツが無数にあり、そこで当社はきちんとした事実や経験に基づいた記事を提供することによって、転職関連情報の透明度を上げていきたいと考えているのです。

また転職サービスは無数に存在していて、求職者は無料で複数のサービスを併用しているケースが多い。だからこそ、日頃から広く社会人ユーザーたちとのエンゲージメントを高めておくことで、思いついたらすぐに当社サービスを使ってもらえるような環境を作っておきたいと願っています。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。