ライブ配信から広がるGunosyの動画ビジネス [インタビュー]

動画広告、動画ライブ配信等、メディアの動画コンテンツ化が進んでいる。情報キュレーションアプリ「グノシー」でお馴染みの株式会社Gunosyは、独自の動画ライブ配信に加え、2018年7月にサイバーエージェントとの合弁会社「株式会社VIDPOOL」を立ち上げ、インストリーム型動画アドネットワークの取り組みも開始した。

同社が目指す動画コンテンツビジネスについて、取締役COO 広告事業本部長の長島徹弥氏、執行役員広告事業本部プレミアム広告推進部部長の近藤洋司氏、メディア事業本部メディア運営推進部動画チームマネージャーの岩館大地氏、株式会社VIDPOOL 取締役の岡田和久氏にお話を伺った。

(聞き手 ExchangeWire JAPAN 野下 智之)(編集 同 川口 幸映)

動画コンテンツの狙いは「サービスの差別化」

貴社で動画コンテンツの取り組みを開始した背景をお聞かせください。

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長島氏 情報キュレーションアプリ「グノシー」のサービス開始から5年ほど経ち、ニュースアプリ市場はプレーヤーが一巡した印象です。これからはアプリのオリジナリティを出して差別化を図っていく必要があります。少し前はニュースアプリ自体が目新しいものだったのでそれだけでユーザーに訴求できていましたが、ニュースアプリが汎用的になった今、新たな切り口で訴求していかないと新規ユーザーの獲得、既存ユーザーの継続は難しくなってきました。

このような背景から、新たな切り口のコンテンツを探していたところ、2017年11月頃からアメリカを中心とした英語圏でライブ配信のクイズゲーム「HQトリビア」が流行していることを知り、ここからヒントを得ました。、日本版のLIVE型クイズゲームを企画することから、動画コンテンツの取り組みが始まりました。

どのような番組を配信しているのでしょうか?

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岩館氏 ユーザー参加型クイズ番組「グノシーQ」は、MCを務めるタレントがクイズを10問出題し、10問連続でクイズに正解した参加者が賞金を山分けできるという15分程度の番組です。2018年2月24日から配信をスタートし、3月1日以降は毎日21時30分から配信しています。

コンテンツにもよりますが、視聴者は40~50万人で、1問目のクイズに参加するのは1万5,000人ほどです。「HQトリビア」は英語圏全体が対象で母数が大きいというのはありますが、参加者が100~200万人規模なので、「グノシーQ」ももっと多くの参加者を集めたいですね。

近藤氏 「グノシー」全体のユーザー層と比較すると、「グノシーQ」の視聴・参加者は年代がやや高めで30~40代が多いです。視聴者がどのようなモチベーションで参加しているかを分析して、参加者数増に繋げていきたいと考えています。

「ユーザー参加型」であることは一つ大きな特徴になると考えていて、参加型を崩してしまうとライブ配信でなければならない理由がなくなってしまいます。ライブ配信でなければきちんと編集した動画を配信する流れになりますが、当社では作り込んだ動画コンテンツではなく、カジュアルでインタラクティブな動画を配信していく方針です。

岩館氏 「グノシーQ」の他には、2択クイズに解答して正解者で賞金を山分けする「究極の人間二択ショー」や、芸能事務所に所属するアーティストとのコラボ番組の配信等も行っています。配信数は1日1本、もしくは1本以上のペースです。

広告商品としての動画ライブ配信の強み

動画ライブ配信のマネタイズ手法は様々だと思いますが、どのようなマネタイズをお考えでしょうか?

近藤氏 タイアップ広告商品として動画ライブ配信を提供しています。ライブ配信の番組内で商品やサービスを紹介するというスタンスです。マネタイズは基本的に広告タイアップのみで、広告主からメディアコストをいただいています。

金額規模は、明確に決まっているわけではありませんが、1日1回の配信で数百万円という提案です。数週間に亘って複数回配信するといった要望がある場合には、それに応じて個別に提案しています。金額へのリアクションはクライアント様によって様々ですね。視聴者は数万人なので少ないと捉えられるかもしれませんが、「インタラクティブなライブ配信」で数万人にリーチできるのが当社の強みなので、ライブ配信の価値を理解していただけるように丁寧に提案を続けてきました。お陰で代理店からの引き合いも徐々に増加し、商品価格に対する理解は少しずつではありますが得られているように感じています。

ですが、カスタマイズの自由度が高すぎる商品なので、代理店様にも扱いやすいフォーマットにしていく必要があります。代理店商流に載せられる商品にしていくことは目下の課題です。

ライブ配信を広告商品として使う狙いはどのようなところにあるのでしょうか?

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近藤氏 商品・サービスの認知、Webサイトや実店舗にアクセスしてもらうためのきっかけ作りとして商品設計しています。ダイレクトレスポンスではなくブランディングに近いですね。

ライブ配信で認知のきっかけを作ってから、その先はどのような展開が考えられますか?

近藤氏 現状は既存コンテンツとの組み合わせがメインになると思います。当社は元来、記事広告でセールスをしてきたので、記事広告との組み合わせは一つ考えられます。15分のライブ配信では魅力を伝え切ることが難しい商品・サービスでも、ライブ配信をきっかけにして認知してもらい、そこから記事広告に触れてもらう流れを作ると、購買へのモチベーションにも繋がると思います。

長島氏 将来的にはライブコマースにも繋げていきたいので、ライブコマースとして受け入れられるフォーマットを追求していかなければなりません。「グノシー」はユーザー層が幅広いのでよく検討する必要があります。

当社が運営している女性向けメディア「LUCRA(ルクラ)」でもライブ動画を配信していますが、ユーザーは若い女性が多く、グノシーと比較してユーザーはセグメントされています。、この世代のユーザーとインスタグラマーは非常に親和性も高いため、例えばインスタグラマーの生メイク動画番組を配信するだけではなくて、実際に番組内で商品の販売までを行うといったことも今後のマネタイズの方向性の一つとしては考えられると思います。

インストリーム動画広告でも新たな市場を開拓

次に、サイバーエージェント社との合弁会社株式会社VIDPOOLの設立経緯についてお聞かせください。

長島氏 インストリーム動画広告はこれまでYouTubeがメインでしたが、ここ数年で動画コンテンツを軸としているアプリやWebメディアが増加しており、これらメディアの方々と上手く連携を図れればネットワーク型の広告商品としてパッケージを作れると予測していました。どの企業もインストリーム動画のネットワークは構築していなかったので、良いビジネスチャンスと考えたのです。

事業パートナー選定のポイントとなったのは、販売販路を持っていること、広告は勿論ですがテクノロジーや動画メディア市場に対して当社と同じような未来像を持っていることでした。更に、新しい市場を作っていくことになるため、企業間で仕切りを作って役割分担するのではなく、双方向で介入できる関係性でなければならないと思いました。このようなことを総合的に考えると、サイバーエージェント社との協業が双方にシナジーがあるという結論に至りました。

事業はインストリーム動画広告のネットワークに特化していますが、どのようなビジネスモデルを構築されているのですか?

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岡田氏 在庫は料理レシピやスポーツ等の動画プラットフォーマーを集めていますが、それだけだと十分ではないのが現状です。新聞・放送等のメディアも動画コンテンツを増やしつつあるので、提携を進めているところです。

媒体はスマートフォンで、Web・アプリと両方で行っています。アプリの方が確実にユーザーエンゲージメントを取れるので、アプリに特化できると良いのですが、そうなるとクライアント様に十分な在庫を渡せないのでWebも平行している状態です。現状の在庫規模は月間延べ3億PV程なので、今後10倍以上には増やしていきたいと考えています。

長島氏 メインターゲットはブランド広告主を想定しています。広告を出稿する動画は、ライブ配信動画、TikTokのような投稿型動画、通常の編集された動画の3パターンに分かれていくでしょうね。

岡田氏 このビジネスの規模感は、ゆくゆくは月商で数億円の規模になると考えています。2020年には5Gも始まりますので、今後もどんどん拡大していくのではないでしょうか。

グノシー流、ライブ配信市場拡大への挑戦

メディアの動画化は業界全体的に進んでいますが、その流れは加速していくのでしょうか?

長島氏 そのように考えています。携帯キャリア側の戦略も、端末販売よりも「ユーザーにいかにコンテンツを消費してもらうか」という流れになっています。通信環境も年々改善されているので、動画コンテンツを見てもらうための投資も進んでいくと思います。日本のプラットフォーマーである携帯キャリアの施策が進めば、動画コンテンツの市場は拡大していくでしょう。

動画コンテンツ事業について、今後の目標をお聞かせください。

近藤氏 ライブ配信動画で今までにない広告にチャレンジすることが、今のミッションの一つです。決まったフォーマットはないので、数字を見ながらも、ユーザーに喜んでもらえるものを作っていきたいです。番組編成と広告のバランスを維持することは、ライブ配信動画を広告商品としていく上で大きなテーマだと考えています。

長島氏 広告商品としてはテンプレート化した方が拡販しやすいですが、今はプロダクトを作り込んでいるところなので、オーダーメイドで色々なことに挑戦できるタイミングだと思っています。クライアント様から直接要望を聞きながら提案できるフェーズなので、外に向けてもPRする機会があればどんどん紹介していきたいです。

岡田氏 インストリーム動画広告については、デマンド側・サプライヤ側とも動画広告に積極的に挑戦できるような地盤を作っていきたいですね。そうして動画広告を活性化していくことができれば、自然と市場も伸びていきますので。

長島氏 サプライヤ側は動画コンテンツを作りたいと思っても、マネタイズの懸念から踏み込めない企業が多いのが現状です。動画コンテンツのマネタイズができることを証明して、市場活性化に繋げていきたいと考えています。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。