マンガ作品の本来の面白さを伝えたい-電子コミックに特化したアドウェイズの広告ソリューションとは

写真:電子コミック広告チームの皆さん

アプリ広告業界が成熟していくに伴い、特定のジャンルや目的に合わせて広告配信手法が細分化されてきている。注目されているジャンルは、やはり市場規模が大きいゲームとマンガ。その中でもマンガアプリに特化した広告ソリューションを開発したアドウェイズに、同分野の課題について語ってもらった。冒頭の写真を拡大して表示

(聞き手:ExchangeWire Japan 長野雅俊)

ゲームアプリとは対照的なマンガアプリの広告運用

会社紹介と自己紹介をお願いします。

相澤氏 アドウェイズは、2001年の創業以来、インターネット広告を主要事業としてきた企業です。「Smart-C」や「JANet」といった国内最大級のアフィリエイトサービスをはじめ、近年では有力アドプラットフォームの運用型広告に対応した総合管理システムである「STROBELIGHTS」や、全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」を提供するなど幅広く広告事業を展開しています。

会社は大きく分けてウェブ広告部門とアプリ広告部門に分かれており、さらにそれぞれ業種や業態ごとに細分化された部署を設けています。本日お話させていただく3人は、電子コミックアプリに特化した事業部門に所属する各責任者です。当社のアプリ広告部門においてはゲームに次いで顧客基盤が大きい部署であり、App StoreやGoogle Play Storeといったアプリストアの上位に位置する大手マンガアプリデベロッパー様の大半とお取引があります。

私は、営業部門のマネージャーを務める相澤一樹と申します。

庄司氏 営業担当者や運用担当者との会議を通じて、制作する広告クリエイティブを決定し、また制作担当者の管理を行うクリエイティブディレクターの庄司輝です。

光岡氏 Google、Facebook、Twitterなどのアプリ広告配信プラットフォームを活用する運用部門の責任者を務める光岡拓真と申します。

マンガアプリの広告運用についての課題をお聞かせください。

相澤一樹氏の写真

相澤氏 マンガアプリの数が爆発的に増加している一方で、一人のユーザーが日常的に利用するマンガアプリの数はせいぜい2、3個。よって、アプリをダウンロードしてもらうだけでは十分ではなく、その後いかに毎日ログインしてもらうかが課題となっています。すぐには収益につながらずとも、まずはアプリ利用を習慣付けて、継続利用してもらうことが何よりも重要です。

課金ユーザーを探し出して、いかに早く広告費用を回収するかが鍵となるゲームアプリの広告運用のあり方とは対照的です。

庄司氏 広告クリエイティブにおいても課題はあります。マンガアプリと言うと、これまでは過激な内容の文言や画像を掲載したバナー広告でユーザーの目を引くというのが定番でした。ただこの手法では、過激な印象だけを訴えるわけですから、流入率が良いとしても、サービス利用継続率につながりません。また道徳的な意味でも問題があります。

そこで当社では、マンガアプリ専門のクリエイティブチームを創設し、継続利用してくれる良質なユーザーを獲得するために、コンテンツ本来の面白さが伝わるような手法を模索しました。その結果、動画広告が一番適しているとの結論に至ったのです。

アニメ化されていないマンガをなぜ動画広告にするのか

なぜ動画広告にした方が「コンテンツ本来の面白さが伝わる」と考えたのでしょうか。

庄司氏 マンガの面白さを決めるのは、「ストーリー」だからです。静止画で伝えることができる情報量は限られます。何十ページまたは何巻にもわたるストーリーの面白さを一枚絵の中にまとめるというのがそもそも無理なのです。ストーリー仕立てであらすじや象徴的なシーンを表現するには、動画形式が最も適していると思います。

ただし、マンガの原作は静止画ですよね。どのように動画広告を制作するのですか。

庄司氏 広告主様より提供いただく広告クリエイティブの素材は静止画です。この静止画を、当社のデザイナーがソフトウェアを使って切り抜き、動かします。ストーリーの展開が分かるように次々と新しいコマを画面上に出していくだけではなく、それぞれのコマを画面上で上下左右に動かしたり、バックミュージックやト書きのようなものをつけたり、着色を施したりなどします。例えばスポーツ系のマンガであれば、主人公が持つボールを動かす、といった演出を施すこともあります。

原作において静止画として描かれた物体を広告目的で動かされたり、着色されたりすることを嫌がる原作者もいるのではないでしょうか。

相澤氏 出版社様とは予めすり合わせをした上で広告クリエイティブを制作しているので、苦情を受けたことはほぼありません。「この作品ではこういった着色はNG」といったようなことは事前に確認させていただいています。

少なくとも静止画広告をつくるよりはずっと多くの制作時間を要するのではないかと想像します。

庄司氏 実際に制作には時間をかけていますね。静止画バナーを一個つくるために必要なのはせいぜい2時間程度ですが、動画となると2、3日は要します。

また静止画バナーのように、最初から複数パターンを用意するということもありません。広告クリエイティブは一つのマンガ作品につき一個を用意し、広告効果の有無を分析しながら改善を続けていくという方法を採用しています。

光岡拓真氏の写真

光岡氏 また静止画であれ、動画であれ、広告クリエイティブは等しく磨耗します。ある一定の期間で区切り、次の広告クリエイティブの準備を進めていくということには変わりありません。動画の制作時間を見込んだ上で定期的に広告クリエイティブの入れ替えを行えるような体制を整備しています。

ただ静止画に比べると作成できる本数が少なくなるので、差し替え頻度が少なくならないようなクリエイティブ制作ラインの工夫も行っております。

視聴時間は3秒と10秒が鍵に

貴社が開発した動画広告の効果をお聞かせください。

相澤氏 動画広告を導入後、課題であったユーザーの継続率が大きく改善しました。正直なところ、弊社でも数年前まで過激な表現によるファーストインプレッションを重視していたことがあったのですが、そのころは10人のユーザーを獲得したら、翌日には3人が残っていれば良いという感じでした。つまり継続率は30%程度です。

ところが動画広告では、継続率が50%を超えることも珍しくはありません。とりわけスポーツ系やバトル系のジャンルがよりユーザーに刺さりやすくなったように思います。ストーリーそのものに興味を持つユーザーを獲得できているので、熱中してくれる読者も多く、その結果、課金ユーザーも増加しています。

つまり過激な表現を控えることで獲得件数は減ったけれども、動画広告を通じてストーリーそのものを打ち出すことができるようになったことで継続率は向上した、ということでしょうか。

相澤氏 獲得件数も落とさないように、パフォーマンス型の広告プラットフォームに対応した総合管理システムを活用し、媒体ごとの広告運用ロジックに則した形で動画広告の内容を改善するよう努めています。

光岡氏 当社が開発した「STROBELIGHTS」というシステムなのですが、これは主要なパフォーマンスの広告プラットフォームに対応した、広告代理店事業の中の業務上必要なものをすべて備えたプロダクトです。このシステムを通じて、Google(アプリキャンペーン)、Twitter、Facebookといった広告プラットフォームにおける動画広告に対するユーザーの視聴時間の測定と、各種のKPIとの関連性の分析を行なっています。例えばGoogleでは動画視聴開始から10秒以上、Facebookだと3秒以上という時間帯が重要なので、その前後の視聴率を改善するよう注力しています。

広告クリエイティブの勝ちパターンは人間が生み出す

分析結果をどのように生かして、視聴率を改善させるのでしょうか。

庄司氏 広告クリエイティブの変更が主となります。挿入するコマの順番を入れ替えるなどして、ユーザーの興味を引き付ける内容を3秒なり10秒前後に持ってくるといった具合です。この差し替えの判断を行うのは、私たち人間です。視聴率の計測まではシステムができます。ただし、視聴率がなぜ落ちたかを分析することは、AIにはまだできません。広告クリエイティブが、一番人間的な、まだAIが解明できていない最も複雑な部分だと思います。

マンガアプリの広告クリエイティブにおける、いわゆる「勝ちパターン」を教えてください。

庄司輝氏の写真

庄司氏 一般的な話として、のっぺりとしたストーリーはユーザーの興味を引きません。

例えば、バトル漫画であればカッコいい技を使うシーンだけを見せる、という単純なものではなく、バトルがどういう流れで繰り広げられていくか、バトルの展開やストーリー性を重視した起伏のある動画の方が好まれる傾向はあると思います。

相澤氏 またマンガアプリのダウンロードを促す際に、必ずしも人気タイトルが有効というわけでもありません。アニメ化や映画化された作品であれば既に質の高い動画が世の中に出回っていることもあり、思ったほどユーザーの目を引かないという場合もあります。「あまり知られていないけど、意外にもこういう名作があるよ」という形で押して、アプリをダウンロードしてもらった後で人気作品にハマるということの方が多いとの印象を抱いています。

「ストーリー仕立てにして、商品の魅力を伝える」という手法そのものは、マンガ以外のジャンルのプロダクトにも容易に応用できそうな気がしますが。

相澤氏 どうでしょう。各業界特有の課題はそれぞれ異なります。だからこそ、ソリューションもそれぞれの課題ごとにしっかりと適応させなければなりません。何らかの特化ジャンルでうまくいったことの横展開というのは、それほど容易ではないというのが実感です。

今後の展望についてお聞かせください。

光岡氏 今はアプリが主ですが、当社ではウェブにおける電子書籍の広告運用も取り扱っています。今後はウェブでも動画広告を促進していきたいです。ウェブはアプリ以上に静止画が主流。アプリストアのように厳しい規約が用意されていないということもあり、かなり過激な広告表現に頼っているという現状があります。アプリで成功例をつくることができたので、ウェブでもユーザーのモラルに反しない、マンガ本来の魅力を伝える広告クリエイティブを活用することができればと思います。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。