自身の人生に則したマーケターのキャリアを築くために必要なこと- 第2回「MCA道場」が開催

写真1:鈴木 健氏

一般社団法人マーケターキャリア協会(MCA)は9月13日、都内にて、マーケターのキャリア育成を目的とした「MCA道場」の第2回講座を開催した。

「自分のオリジン」を起点に考える

「マーケターの資質」をテーマとした本講座を担当したのは、MCA理事で株式会社ニューバランスジャパンDTC&マーケティングディレクターを務める鈴木健氏。同氏は冒頭で、人生は「一度きり」であるがゆえに、「自動化すべきではなく、意識する努力が必要」であると強調。マーケターになる資質を探る前に、まずは自分自身について深く知る必要があると論じた上で、自身の半生を振り返った。

鈴木氏は幼いころ、漫画家になることを夢見ていたという。酒屋を運営していた父親に「どうすれば漫画家になれるのか」と相談したところ、「絵がうまくなければいけない」と言われたことを受けて、絵の塾に通い出し、学校では美術部に所属。こうした経験を通じて、絵の技術だけではなく、「絵を描くように抽象的に物事を考える」習慣を身につけた。

また自営業者であった親には休日らしい休日がなく、家族でそろって出掛ける機会がほとんどなかった。幼少時にはそのことに不満を覚えていたが、大学生になるころには、親と同じように流通業界で働きたいとの思いを抱くようになる。

ここまで述べた後、鈴木氏は参加者に対して、各々が次の3点について考えを整理し、他の参加者たちと話し合うことをワークショップの課題として挙げた。

・自分のオリジン
・自分の得意なこと、好きなこと
・自分の人生で当たり前だと思ったことVS変えたいと思ったこと

参加者たちは、「早くして父親を亡くして以来、周囲の人間が何を考えているのかをよく考えるようになった」「田舎出身ということもり、幼いころからアウトドアに興味を持っていた」など、それぞれの生い立ちを掘り下げることで自身のオリジンを探求。「自分の得意なこと、好きなこと」については、「分析・データ化」「興味を持ったことについて調べること」など、「マーケターの資質」との強い関連性がうかがえるような発言が出た。一方、「自分の人生で当たり前だと思ったことVS変えたいと思ったこと」については、「ひとつの物差しで評価を受けることには慣れてしまったので、違う観点から面白いと言われたい」「田舎暮らしをずっと続けると思っていたが、生活を変えたいと思って上京した」など、各自の個性が浮き彫りになる意見が目立った。

「自分の資産を数え直す」ということ

鈴木氏は続いて、これらの項目とマーケターの仕事を次のように結びつけて考えてみるように促した。

写真2:スライドに3項目

・マーケターの仕事と自分のオリジンの関係

・マーケターの仕事と自分の得意なこと、好きなことの関係

・マーケターの仕事と自分の人生で当たり前だと思ったことVS変えたいと思ったこととの関係

鈴木氏自身は、幼いころから運動が不得意でそのことに対してコンプレックスを持っていたが、スポーツブランドのマーケターを17年勤め上げたことでスポーツ嫌いを克服。そして「文字通り絵を描くこと」である戦略プランニングに深く携わるようになる。また休日がない自営業者を親に持った経験が、サラリーマンとしての就職につながったと振り返った。

参加者からは、「親の反対を振り切って上京後、マーケターという東京ならではの仕事を得た」「かつては障害者やいじめられっこを守りたいという気持ちを強く持っており、今ではコンプレックス商材の宣伝活動に関わっている」といった内容の発表があった。

鈴木氏はこれらの発言を受けて、「得意なことは自分の資源」であると指摘。「自分にとっての『当たり前』は、他人にとっての『当たり前』ではない場合がある」からこそ、「自分の得意なことや好きなことが、他の人々にとって苦手なことである場合は、それは社会から求められる特技となる可能性がある」と伝えた。

鈴木氏は、以上のような考えに基づいた上で、自身の可能性を見つけ出そうとする場合は、「外に出掛けたり、誰かと会ったりするよりも、まずは自分自身を振り返ることから始める」ことで「自分の資産を数え直す」ことを奨励している。

得意なことから目的を見出す

鈴木氏は、キャリア設計に必要な「目的は何か」という問いと向き合う際にも、自身を振り返る手法が有効であると説く。ただし、何ら前提がなく「目的が何か」を考えるのは、実際のところ非常に難しい。そこで、他人から求められる能力となり得る「自分の得意なこと」をまずは吟味し、その得意なことを「他人や社会にとってのベネフィット」と捉えた上で、自身の「意味」や「目的」に変えていくことを勧めている。

写真3:鈴木 健氏

ちなみに、鈴木氏によると、近年のスポーツブランドは「意味を進化させている」。つまり、身体を動かすという基本的な概念を超えて、今では「精神的に成長できた」と実感するための手段となりつつある。運動を苦手としていた鈴木氏が、スポーツブランドの運営に惹かれる理由の一つだという。

こうした話を踏まえて、鈴木氏が参加者たちに次に出した議論の課題は以下の3点だった。

・自分の得意なことVS自分の愛すること
・自分が人々に愛してもらいたいことは何か
・あなたのマーケターとしての目的(WHY)は何か

ワークショップが進行するにつれて、質問の抽象度は段々と高いものとなっていったが、参加者たちは趣旨を十分に汲み取った上で対応。「マーケターとしての目的」については、「現場の社員が幸せになること。そうすることで、組織全体の成長につながる」などの意見が出た。

「マーケターの資質」とは

道場の終盤に入り、本題である「マーケターの資質」についての議論に突入。鈴木氏は、下記の3点に大別し、どのタイプに当てはまるかを検討するよう参加者に求めた。

・知能指数IQ: 思考力、問題解決能力、創造性
・感情知能EQ: コミュニケーション、人間関係構築
・コントロール指数CQ: 冷静さ、実行力、リーダーシップ

そして、最後に「自分のマーケターとして目的と強みを整理する」作業として下記の項目を網羅する形で自身を振り返るように案内。自身の人生に則したマーケターのキャリアを築くために、改めて「自分の才能に気付く」「自分が何をしたいかをきちんと考えてキャリア設計する」ことの重要性を訴えた。

・マーケターの目的 WHY
・市場・業界・職種 WHERE
・対象となる人々・コミュニティ WHO
・自分の資質に基づいた強み WHAT
・強みを活用するスキル HOW

初対面同士の参加者が多いにもかかわらず、参加者たちは、生い立ちやコンプレックスなどを含む個人的な経験や思いを交えながら、これらのテーマについて積極的に意見交換や発表に臨んでいた。

10月11日に開催される次回道場では、MCA代表理事の小野進一氏(株式会社ホールハート 代表取締役CEO)が、「マーケターとしての幸せな人生になるためのキャリアの創り方」をテーマとした講座を担当する。

タグ

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。