ファンベースを構築するための統合型マーケティングとは-オプト主催の企業コミュニケーション戦略セミナー

5月30日、都内にて、インターネット広告代理店オプト主催の「新時代のコミュニケーション戦略セミナー」が開催された。

金澤大輔代表取締役社長CEOによると、同社主催セミナーでは最大規模となる200名が参加。デジタル手段の充実に伴い、企業コミュニケーションのあり方に高い関心を持つマーケッターが多くいることが伺われた。

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基調講演を行ったのは、「さとなお」の愛称で知られるコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之氏。近著で論じた「ファンベース」の思想について解説した。同氏は、多くの商品では2割の上位顧客が8割の売上を支えているという「パレートの法則」を踏まえた上で、顧客生涯価値(LTV)を追求すべきと主張。少子高齢化、独身者の増加、若者の物欲の減少、市場の成熟、商品の独自性の陳腐化、情報過多、社会構造の二極化といった近年指摘される諸々の社会的な変化を鑑みると、新規顧客の獲得のみに特化した従来のマーケティング手法は転換を迫られているという。そして、自社の商品に共感し、愛着を覚えてくれるファン層を構築するためには、商品の機能価値よりも情緒価値を伝えるコミュニケーション戦略が必要と論じた。

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続いて登壇したオプト社ブランドコミュニケーションデザイン部コミュニケーションプランナーの安田裕子氏は、企業・ブランド発信情報への信頼が低下している今、口コミに代表される第三者発信コミュニケーションの重要性が増していると指摘。一つのキャンペーンを例に取り、具体的な第三者発信の喚起手法を紹介した。このキャンペーンでは、若年層をターゲットとして、「友だちと一緒にやってみたくなる」、「一歩踏み出す勇気をくれる」といった具合に、各世代の価値観に寄り添った意義付けを示すメッセージをそれぞれ異なるチャネルを通じて発信。加えて関連キーワードをターゲティング設計に組み込むことで、Twitter上の関連ツイート数は目標値を大きく上回る数に達したという。

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アマゾンジャパン合同会社マーケティング本部長の桑田淳氏は、会員向けサービスであるAmazonプライムの普及に向けて日本市場で実施した統合型マーケティング施策を説明。バイクに乗る若者と一人暮らしする祖母の物語を描いた動画広告が、静止画として屋外広告や新聞広告にまで発展し、やがては感動を呼ぶコンテンツとして一般メディアにも取り上げられるようになるまでの過程を伝えた。

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前述の佐藤氏が運営する「さとなおオープンラボ」の受講生でもあり、現在はライオン株式会社コミュニケーションデザイン部CXプランニング室に所属する内田佳奈氏は、現場で実践中のファンベース施策の数々を紹介。商品の機能を伝えるのではなく、例えば制汗剤では「汗じみに気を遣わずとも好きな服を着られる」というように情緒価値を訴えるべく留意しているという。また同社社員が商品の開発秘話を顔出しで語り、ユーザー座談会を開催するなど、企業とユーザーの間に共感を醸成するための取り組みを数多く実施していると語った。

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オプト社ブランドコミュニケーションデザイン部の堤洋祐部長は、過去の事例を通じて取得した詳細なデータを参照しながら、施策全体の態度変容効果を計る施策KPIと、その下位に属する施策単体の効果を計測するプロモーションKPIを区別することの重要性を指摘。また広告のクリエイティブを柔軟に変更することが可能で、嗜好性に応じたターゲティングができるデジタル主軸のコミュニケーションは、テスト・マーケティングには最適であるとの見解を示した。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。