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「誰もが広告収益を最大化できる公平な市場に」MAX買収でアプリ内ビディング機能利用率100%のAppLovinが語る[インタビュー]

日本市場において「アプリ版ヘッダー入札」とも言えるアプリ内ビディング(入札)の段階的移行が今後進められていくと予測される中、既に導入率100%を達成したメディエーションプラットフォームがある。アプリ広告プラットフォームのAppLovinが提供するMAXだ。同社がアプリ内ビディングを推進する理由を語ってくれた。
(聞き手:ExchangeWire Japan長野雅俊)

 

ハイパーカジュアルゲーム運営は科学的

 

―自己紹介をお願いします。

 

AppLovin日本法人代表取締役の林宣多です。現在は日本と韓国のプラットフォーム事業の責任者をしており、アプリのアドネットワークとしての「AppDiscovery」、メディエーションプラットフォームの「MAX」、セキュリティとブランドセーフティの自動化を実現するためのSDK管理ツールである「SafeDK」などを通して、アプリのデベロッパー様を包括的に支援しています。

 

―改めて事業紹介をお願いします。

 

これまでは主にアドネットワークの運営を通じて、ゲームアプリを中心としたデベロッパー様のマネタイズとユーザー獲得の支援に注力してきました。現在では加えてゲーム開発初期段階から関わり、データの分析サポートはもちろん、開発サイクル・プロジェクトの管理方法へのアドバイスなども含めてアプリ運用PDCAに必要なノウハウすべてをデベロッパー様のニーズに合わせてサポートしております。

またデータ分析ツールも提供しており、デベロッパー様がゲーム・アプリ開発に集中できる環境をご提供しております。よって、当社では広告プラットフォームだけではなく、ゲーム・コンテンツに関する知見を合わせて提供できるような人材をそろえています。

 

―データ活用のノウハウとは例えばどのようなものなのでしょうか。

 

当社プラットフォームと連携していただけば、そのゲームアプリのRPI(Revenue per Install = LTV)がいくらということが分かります。ちなみにカジュアルゲームの場合、一般的にはインストール後の7日間における売上が全体の7、8割を占めます。つまりリリース直後7日間経過したデータがあれば、CPIいくらで配信すればボリュームがどれくらい獲得でき、どのくらいの利益を生み出せるのかが把握できます。もちろん各配信媒体ごとのRPIも分析できるため、各媒体ごとにどのCPIで出稿するべきかも確認できます。

 

もう一つカジュアルゲームにおいて重要なのが、開発を中止するか継続するかの判断をできる限り短期で行うことです。ヒットするかどうかは数字を見ることで開発初期段階から判断できるため、プロトタイプができた段階でテストプロモを実施し、その結果に基づいてフィードバックをさせていただいております。チャンスがないものははっきりとお伝えすることで、デベロッパー様が成功確率が低いゲームに必要以上に時間をかけず、成功確率が高いゲームに時間を使えるようにすることも重要だと考えております。

 

ゲーム事業の運営ではクリエイティブな能力が存分に発揮されるような印象がありますが、データに基づく分析を行うという意味ではカジュアルゲームには科学的な態度が求められます。

 

―貴社ではアプリ内ビディング(入札)機能の開発元であるMAXを2018年に買収し、その機能を2019年になってリリースしました。その経緯をお聞かせください。

 

近年になってゲームアプリのマネタイズのみだけではなく、事業全体の支援を提供する機会が増えてきたことに伴い、多くのデベロッパーの皆様からのニーズや悩みを伺う機会が増えていました。その中でデベロッパー様からの悩みとして、複数のアプリ広告ネットワークの広告配信設定を行うためのメディエーションツールに関して課題を抱えているという声を多く聞くようになっていました。また、マーケットの進化を考えた時に、アプリ内ビディング(入札)を活用することで彼らの課題を解決できることは分かっていましたので、すでに内製でメディエーションの開発に着手していました。

 

そんなときに、TwitterのアドエクスチェンジであるMoPub の創業者が設立したMAXがアプリ内ビディング機能を装備したプロダクトをベータリリースしたと耳にし、当社の経営陣の考えとも呼応したことで買収に至りました。MAX創業後まだ半年ほどで、プロダクトもまだ原型という段階。以後は開発作業を一緒に進めながら、この度のリリースまでこぎつけました。

 

驚異的なアプリ内ビディングの利用率

 

―現時点で日本市場における貴社のアプリ内ビディングの利用率はどれほどですか。

 

部分的な利用を含めると100%です。つまり当社のメディエーションプラットフォームのご利用者すべてがアプリ内ビディング機能を導入しています。ただし、現時点ではアプリ内ビディングに対応していないアドネットワークもあるので、皆様には従来のウォーターフォール形式でのメディエーションとアプリ内ビディングの両方に対応したハイブリッド型を採用いただいています。

 

ちなみに、このハイブリッド型のメディエーション機能全体の中でアプリ内ビディングによる収益が占める割合は4~6割。恐らく他社と比べて、当社プラットフォームにおけるこの割合は非常に高いと思います。

 

―アプリ内ビディング機能の特徴について改めてお聞かせください。

 

従来のウォーターフォール形式では、広告を通じてマネタイズをしようとするアプリ運営者が、例えば広告枠一つにつき、A社ネットワークなら40ドル以上で販売、それでも売れなかったらB社ネットワークに35ドル以上で、それでも売れなかったらC社ネットワークに30ドル以上で、といった具合に最低販売価格を設定していました。この仕組みを強化すると、加えてD社ネットワークは25ドル以上、F社、G社……といった具合にネットワーク数はより多くなり、また各ネットワークにおいても例えばA社の40ドル、30ドル、20ドル、といったように1社あたりに複数のラインを設定するため、非常に長く複雑な設定になってきます。

 

一方でアプリ内ビディングは、毎回A、B、C社ネットワークで一斉にオークションをして一番高い値付けをした者に広告枠を販売するという仕組み。長大なウォーターフォール設計を組む必要がなくなるので、運用が楽になるのは明らかです。

 

またウォーターフォール形式で「A社ネットワークは40ドル以上」と設定するのは、あくまでも過去にA社ネットワークへの販売金額の平均が40ドルだったというだけであり、過去平均では購入金額が下回るがゆえに順番待ちをさせられることになったB社ネットワークが今回に限ってはA社よりも高い値段で広告枠を買い取るということもあり得ます。よって「少なくとも40ドル以上を出すならA社に優先的に売ります」ではなく、「A社でもB社でもC社でもいいので最も高い値段で買ってくれるところに売ります」と言うことができるアプリ内ビディングの方が、広告枠を販売する側は収益を上げやすいというわけです。

 

―アプリ内ビディングの導入によりどれほど収益が改善できるのでしょうか。

 

既存のウォーターフォール中心のメディエーションと比べた時と平均して10~30%程度は収益が向上します。まず今お話しした通りで、一斉オークション形式にすることで広告単価ないしeCPMが上がります。

さらに、これは実際にデベロッパー様が考えているよりも多く発生しているのですが、ウォーターフォール形式では、40ドルで誰も買わなかったら35ドル、35ドルで買わなかったら30ドルという具合にリクエストを次々と繰り出すことになるので、エラーや遅延が発生して広告配信がされないということが往々にしてありました。ところがアプリ内ビディングであればこの問題が発生する確率が大幅に下がり、広告表示回数(インプレッション数)そのものが増え、全体の収益が増加します。

 

ウォーターフォールなしで収益最大化できる意義

 

―アプリ内ビディングが普及すると、アプリ広告業界にはどのような影響をもたらすでしょうか。

 

アドネットワーク側の戦略というか考え方が全く変わると思います。今までは40ドル以上の価値があれば40ドルで買えばといいという判断をするだけでしたが、アプリ内ビディングではインプレッションごとにいくらで買うか、また買えなかったら値段を変えるのかどうかという機械的な仕組みを新たに作らなければなりません。

さらに踏み込んで言うならば、ウォーターフォールの一番上に置いてもらうという取り決めを結ぶことで優位性を発揮してきたアドネットワークもあります。アプリ内ビディングが普及すれば、その優位性がなくなります。ですので、より健全になりますし、手間も減りますので、デベロッパー様・企業様がよりコンテンツ作りに集中できる環境になっていくと思います。

 

―日本市場において、すべてのアドネットワークがアプリ内ビディングに対応するまでにどれぐらいの時間がかかると見込んでいますか。

 

黎明期からモバイルアプリ市場を牽引してきたFacebook社がアプリ内ビディングに注力してきたことで、市場全体の理解はかなり進んできたと感じています。日本市場においてもこれから半年間で大半がアプリ内ビディングを導入し、また売り上げに対するアプリ内ビディングの割合も増加することになるのではないでしょうか。

 

すると、これまでウォーターフォールを全く組んだ経験がない新興のハイパーカジュアルゲーム開発企業でも、良いコンテンツさえ用意すれば、豊富な広告運用実績を持つ大手ゲーム会社とあまり変わらない売上を上げることがきるようになります。アプリ内ビディングの普及を通じて、誰もが広告収益を最大化できる公平な市場を整備することが当面の目標です。

 

―貴社事業に関して今後の展望をお聞かせください。

 

ハイパーカジュアルゲーム領域に関しては、例えば米国のアプリランキングで一定期間上位にいるような成功アプリになると、1カ月で1ゲームあたり、3億円程度の収益を上げることができます。ただ日本は長らくソーシャルゲーム市場が大きく、ハイパーカジュアルゲーム市場に参入している企業が他国に比べて非常に少ないのが現状です。そういった事情もあって、この規模で成功を収めているハイパーカジュアルゲームの開発企業は、日本には10社ほどしか存在しません。

 

ただし、日本にはゲームに関する知見を豊富に持つゲーム企業が数多く存在するので、それらの企業が参画するだけでも、市場は驚異的に拡大するはずです。近い将来に米国のランキングの半分以上を日本のゲームタイトルが占めるような状況になればいいと思っていますし、当社としてはそのために事業の立ち上げを含めた支援・各社へのノウハウの提供を続けていきます。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。