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アフィリエイト広告の実態から考える、デジタル広告業界がとるべき対応とは!?

近年アフィリエイト広告による不当表示をきっかけとした消費者トラブルが相次いでいるという。この問題を受けて、消費者庁は実態把握のための調査の実施や、有識者によるアフィリエイト広告等に関する検討会を開催するなどの対策を進めている。

業界関係者は、今のアフィリエイト広告業界の現状をどのようにとらえているのか、また今後業界に関わる関係者がそれぞれどのような対応を取るべきなのか。

長年にわたりインターネット広告業界を見続けてきた、そして単品通販業界において日本でも指折のマーケティング専門家である、売れるネット広告社 代表取締役社長CEO 加藤公一レオ氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

不正アフィリエイト広告の裏側に潜むもの

―近年不正アフィリエイト広告をきっかけとする消費者トラブルが数多く報告されています。実際にどのようなことが起こっているのでしょうか?

私はアフィリエイト広告における3大不当表示は以下のものであると考えます。

一つ目が薬機法や健康増進法などの関連法を違反しているもの、二つ目は偽の口コミの掲載、そして、三つ目は有名人の写真を無断で利用する、というものです。

このような不正アフィリエイト広告には、基本的に広告主の思惑とアフィリエイターの思惑が隠れています。20年ほど前のアフィリエイターというのは主婦や学生のように自分が好きなものや世の中に出したいものをブログに書いて、純粋に世の中に紹介したい、そしてついでにお小遣いが稼げればいいなというような世界でした。近年はアフィリエイターを「本業」として取り組むことが当たり前になり、いわば職種のひとつとして確立したと言えます。

年間数千万、数億円を稼いでいる人も多くいます。「本業」になったので、アフィリエイターはビジネスとして継続的に「稼ぎ続ける」ことが必要になりました。

一方で広告主側は、純広告や普通の運用型広告を出稿していても、なかなか採算が合わなくなってきています。これらの広告では、CPOが3万円~4万円ほどまで高騰することがありますが、それと比較してアフィリエイト広告は成果報酬型なので、CPOを1万円~1万5000円程度に抑えることが出来ます。費用対効果が安定するので、リスクが少なくアフィリエイト広告に依存してしまうのです。

アフィリエイターは多少無理をしてでも顧客を獲得すればするほど儲かるようになっています。

 

結局アフィリエイト広告に関連して私が一番問題であると思っているのは記事型広告です。業界ではアフィリエイターによるアド運用と呼ばれているものです。インフィード広告をクリックすると、アフィリエイターなどの第三者が作った、記事型のページが現れます。そのサイトやページには、「〇〇ドットコム」など、商品に関連する一般的な情報を提供するかのようなサイトの名前がついています。そして、薬機法などの法律に抵触するような表現が使用されているという、はっきり言ってブラックな状態なのです。悪質なアフィリエイターは、そのような記事をいろんなところに複数出します。そして、そのリンク先が、広告主のランディングページ(LP)であるという仕組みになっているのです。

 

消費者側からすると、有名な大手の安心できるサイトに出ている広告であれば、信頼します。そして遷移した先に出ている記事を見ると、第三者が書いたものであることから、その記事を信じ込むわけです。「あ、この商品この芸能人が使っているんだ。」、「あそこの商品を飲んだら10キロ痩せるんだ」等の謳い文句に騙されてしまうわけです。

その結果商品を買ってしまう。その商品が、自動的に定期コースになっており、気づかないうちに購入回数に縛りがある契約になっているため、解約ができないということはよくあります。違法な表記の記事型広告で消費者が騙されてしまっているのに、悪質なアフィリエイターは野放しで売上を上げ続けてしまっている。この構造が、今問題になっているのです。

昔のアフィリエイト広告はよかったのですが、今の記事型広告を絡めたアフィリエイト広告に問題がある。「不正アフィリエイト広告=記事型広告」の可能性が高い。これが私の意見です。

 

 

責任逃れが許される構造

―ネット広告の不正の中でも今、アフィリエイト広告における不当表示が問題視されているのはなぜだと思われますか?

基本的には一部の悪質なアフィリエイターたちが、小遣い稼ぎのために好き勝手しているからです。

例えば、非常に悪質なアフィリエイターの中にはアルバイトを雇ってわざとその広告主の商品を購入するようなやり方をする人もいます。もし広告主の成果報酬単価が1万円の場合、アルバイトに2000円の商品を買ってもらうと、手元に8000円が残ります。そのアルバイトには商品代金を渡して、その後すぐに解約してもらうのです。

でもやはり、私の中で、いま一番問題にしているのは、アフィリエイターが主導になっている記事型広告です。

広告主は成果報酬1万円を設定して「あとは任せます」となります。それに対して、アフィリエイターたちが、成果単価を目当てに勝手に広告主の許可なしに記事型広告をどんどん作成する。中には広告主側も、そのような記事広告が出ているということを分かっているのだが、自分が関わったら逮捕されてしまうから、見て見ぬふりをしていることがあります。ここで、黙認しているのが大きな問題なのです。

アフィリエイト広告業界の中には、悪質な建前があるのです。どのようなことかというと、広告主は、アフィリエイターから「原稿をチェックしてください」と言われた上で違法な広告を許可しない限り、違法な広告が運用されていることを「知らなかった」と言い逃れができてしまうのです。

例えば、アフィリエイターが書いたとても悪質な記事型広告があったとします。発覚して追及されたとき、広告主は「いや、それはどこかのアフィリエイターか、運用会社が勝手に書いたもので、我々も困っているんです。知りませんでした。」ということで逃げることが出来ます。一方で、アフィリエイターはどのように逃げるかというと、「いや、私は広告のお金など貰っていません。勝手に感想を書いただけですから。たまたま広告主のリンクを張っただけなのですが、何か問題ありますか?」と逃げることが出来るのです。

つまり広告主側も捕まらない、アフィリエイター側も捕まらない、という風に、責任逃れが許されるような構造になっているのです。

 

 

―記事型広告が使われるようになったのは、ここ数年の話なのでしょうか?

感覚的にはここ数年で目立ってきました。アフィリエイターの集客手段は、SEOが主でした。検索エンジンに引っかかりやすいサイトを作り、そこに消費者を集客して、アフィリエイト収入を得ていたのです。

しかし、その後Googleが「健康アップデート」と呼ばれる、検索エンジンの仕様変更を行ったのです。それまで一生懸命記事を書いてアフィリエイトをやっていた人たちのサイトが検索エンジンでほぼ引っかからなくなりました。その結果、アフィリエイターは稼ぐことが出来なくなりました。そうすると、それらのアフィリエイターはどうしたかというと、自らが広告主となり、アドネットワークなどに広告を出稿して自社サイトに集客を図るようになったのです。その時に一番やりやすいのが記事型広告の不正なページをたくさん作り、そこに広告主のECサイト(ランディングページ)のURLを掲載し、成果報酬を得るという手法です。

 

 

―そのような人たちは、個人なのでしょうか?法人なのでしょうか?

私の肌感覚だと、大部分は個人です。それ以外は、個人が法人を立ち上げてやっているという印象です。

 

 

―不正な広告表示は、アフィリエイト広告に限らない気も致します。たとえば、誰もが知るような大手媒体にも、それらしきものが紛れ込んでいるようにも見受けられます。

誰もが知るような大手サイトでも、そのような広告が見受けられます。サイトの下に現れる、ネイティブアドと呼ばれているものがあります。コンテンツの中に紛れ込ませている広告です。

私の意見としては、そもそもこのような広告の配信を受けていることが、悪の根源なのです。マスメディアといわれるような大手のサイトでも、このような広告が出ていることが信じられません。このような広告を許しているようでは、媒体社も責任は免れません。

媒体社からすると、広告主が多すぎて、十分な審査のしようがないのでしょう。

 

 

―「Sponsored」や「PR」など、広告であることが表記されていれば、いいような気もするのですが、そうではないのでしょうか?

このような広告のリンクは、記事を挟んで広告主のLPにリンクする仕組みになっています。そのため、記事風の広告になってしまうのです。

あくまでも私の感覚ですが、健康食品・化粧品の通販広告の記事型広告において広告表記に問題があったり、フェイク広告であったりする割合は少なくないように感じます。

 

 

―それほどあるのなら、媒体社の方は気づかないものなのでしょうか?

サイトにアクセスをするたびに表示される広告は更新されてしまいます。そのためあまりにも配信される広告が多すぎて、管理をすることが出来ないのです。

これが問題です。つまり、媒体社としては「うちはアドネットワークを入れているだけで、それを管理するのは配信側です。我々ではないです。」というように、今は、誰もが逃げることが出来るようになっているのです。

 

 

―アドネットワークについてはどう思われますか?

アドネットワークの場合には建前上「考査をしています」と答えます。しかし、全てを考査しているようには思えません。恐らく物理的に難しいのでしょう。極端な話でいうと、一旦考査を通した後、アフィリエイター側はリンクのページを変更することもできるのです。悪質なアフィリエイターは、そのようなことまでやるのです。

 

 

課題解決に向けてやるべきこととは

―この問題を解決する上で、誰が何をするべきなのでしょうか?

国が、広告主とは別ドメインの記事型広告を規制する等、厳しい対応を取るべきです。広告主自らが書いた広告であれば問題ないが、第三者が書いた記事型広告は取り締まるべきです。

記事型広告を使ったアフィリエイト広告というのは、いわばバイブル商法です。例えば「キノコで癌が治る!」というような宣伝文句を入れた小冊子を、家のポストに投函して、翌週にはそのキノコの商品のチラシがポストに入っている。というような手法のことです。これは大昔からあった悪質な手法です。このような手法はインターネットの時代になっても変わらないのです。

 

 

―昔からキノコがすごい大好きなキノコ博士のような人がブログを書いて、たまたま趣味の延長でアフィリエイトを貼っておけば儲かるのなら貼っておこう・・というようなタイプのアフィリエイターは、今はいないものなのでしょうか?

そのようなアフィリエイターはいるのかもしれませんが、そこが抜け道になっています。キノコのことは書いてもいいが、広告主のサイトにリンクさせなければいいのです。そのような法律を作ったほうがいいのです。強引ですが、そこまでやらなければ、今起こっているような不正はなくなりません。ずっとイタチごっこのままです。

 

 

―デジタル広告に携わる関係者は、今この問題にどう向き合い、どのように解決していくべきなのでしょうか?

私が思うのは、やはり媒体社が広告の審査をしっかりと行うことです。

広告主は、マーケティング手法としてアフィリエイトに依存し過ぎることはやめるべきです。

私が取引している広告主のなかには、アフィリエイト広告の利用をやめている広告主もいます。なぜならば、今起こっているような悪質なことが起きるからです。

広告主が、自身でしっかりとマーケティングの取り組みに対する努力もせず、「成果報酬でお客さんを連れてきてください」とアフィリエイト広告に依存するというのは、単なる甘えに過ぎません。

今の広告の取引構造をもっとシンプルにするべきです。今、記事型広告は、広告主、広告代理店、アフィリエイター、アドネットワーク、媒体社と、多くの事業者が介在しています。そして、それぞれがお互いを知らないことになっているのです。このことにより問題が発生するのであれば、この構造を変える必要があるのです。

 

 

―アフィリエイターの中には、もちろん真面目に取り組んでいる方もいると思うのですが、そのような方々はどうすべきでしょうか?

真面目な個人のアフィリエイターは、今はYouTubeやInstagramなどのプラットフォームで、自分の話す内容で、顧客を獲得して収入を得るほうが、より効率的でしょう。YouTubeで多くの登録者を集めたり、Instagramで多くのフォロワーを獲得して、そこで商品を紹介して収入を得るようなアフィリエイターもいます。今ウェブサイトでは、ファンやフォロワーなど一人もいないようなアフィリエイターが悪質な記事を書いているのです。真っ当なアフィリエイターは、YouTubeやInstagram、Twitterでしっかりとファンやフォロワーを持っています。違法な広告で消費者を騙すようなやり方ではなく、しっかりとファンを増やしながら影響力を増やしていく努力を続けている「本物」だけが生き残っていってほしいと願っています。

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。