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フルファネルソリューションに対応―ヤフーの新たな広告プラットフォーム体制 [インタビュー後編]

 

ヤフーの新たな広告プラットフォーム体制のお話を聞く全2回のインタビュー。
後編では今後の課題や注力領域についてのお話を伺う。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下智之)
(ライター:同 柏海)

 

大手企業を中心にデジタルシフトが進行

―コロナ禍のディスプレイ広告市場の市況についてはどのように見ていますか。

芝崎氏:コロナ禍で、旅行業など特定の業種において広告出稿を買い回抑える動きはありましたが、全ての業種で等しく広告出稿が落ちるという状況ではないので、かなり特殊な状況にはなっています。広告出稿を控えている特定の業種については、コロナ禍が落ち着けば自ずと広告出稿も戻ってくるかと思いますので、今はコロナ禍が落ち着くのを待ちたいと思います。

一方、コロナの影響で生活者の生活が変容し、おうち時間が増えたりECの利用も高まりました。その結果、広告主様もマーケティングの手法を色々と模索され、今このタイミングでデジタルシフトを積極的にご検討される広告主もいます。

ヤフーのディスプレイ広告に関しては、大きな傾向の変化はありませんでした。しかし、新たにディスプレイ広告を使われ始めている企業の傾向としては、大手企業のなかでも、業種によっては、今まであまりデジタルを使ってこなかった、もしくはご予算の中でのデジタル比率がそれまで高くなかった業種がありましたが、そのなかでデジタルシフトを積極的に検討されているように感じます。

 

―中小企業向けに提供していく広告サービスも構想のなかにはあるのでしょうか。

小嶋氏:はい、中小企業の皆様に向けた広告サービスも、今後は取り組みを進めていきたいと思います。

今まではグロスの大きいお客さんをメインとしていた部分は大きかったですが、弊社のセールス体制の中でも、スモールB向けのセクションは引き続きございます。更に、今回のワンプラットフォーム化により、Yahoo!と代理店が直接やり取りをする体制に変わりましたので、間口は広がったと考えています。

今後、色々なお客様にしっかり買っていただけるような形で商品の設計をやっていきたいと思っているので、中小企業含め、お客様に合わせた各商品を次々と出していきたいと思います。

 

自動化機能を強化し、ワンプラットフォームの強みを生かす

―今後の課題について、どのような認識をしていますか。

芝崎氏:Yahoo!広告としてワンプラットフォームにはなりましたが、まだ運用型広告の機能強化は図っていきたいですね。また、ワンプラットフォーム化に伴い、運用型広告・予約型広告の両方を組み合わせることで、Yahoo!としてどのようなソリューションを提供できるか、というのは考えていきたいと思います。

田中氏:運用型広告の機能強化に関してですが、こちらは自動化機能の強化を第一に考えています。特に自動入札機能や推定ユーザーの拡張機能(ターゲティングの自動化)、クリエイティブの自動最適化機能、の3つに関しては、競合の動きも見ながらしっかりと追いついていかなければなりません。

それが大前提としてありながら、個人情報保護の流れもあるので、個人情報保護と様々な自動化機能を両立させていくのが課題になると思います。例えば弊社の場合は、リターゲティング広告におけるユーザーの拡張機能があり、本機能では、広告主のサイトに訪問のないユーザーをターゲットとし、そのサイトに訪れたことがあるユーザーと似ているユーザーに対し、我々のほうで推定を行い、配信対象を拡張して広告を配信する機能をご提供しております。このような機能に対して、広告主のサイトの訪問情報を十分にいただかなくても、広告主の商材に興味を持ちそうなユーザーに対し、配信対象を精度良く自動的に拡張するような機能を強化していく必要があると思っています。

小嶋氏: 運用型広告・予約型広告の両方を組み合わせたソリューションの提供について、今までは予約型は予約型単体で、運用型は運用型単体で、という形で見られているケースが多かったと想定しております。

今後は単体としてではなく、トータルとしてどのような形で広告配信をすることで、コンバージョンを最大化出来るのか。また、その前の中間KPIについても、今は最適な形を探している状況です。そのためには、レポートで各広告の効果を可視化することが重要になってくると思っておりますので、より分かりやすいような形で提供が出来ればと思っております。

しっかりそこまで含めた形で可視化できることが一番重要だと思っておりますので、そこに関して、今後もっと分かりやすいような形で提供していきたいなと思っているという形です。

 

Zホールディングスとしてフルファネルソリューションを目指す

―広告市場のなかで、今後の注力領域としてはどのようなものがございますか。

芝崎氏:デジタル広告のマーケットの中で伸びている領域としては、動画広告の領域だけでなく、アプリのインストールを目的とした広告も非常に伸びていると認識しております。しかし、ヤフーとしては、まだ市場シェアから見てもアプリのインストール広告では貢献がし切れていないという思いがございます。

アプリのインストールを目的とするゲームメーカーの広告主様を中心として、より活用がいただけるようにと、広告効果を高められるように取り組んでいます。実際に少しずつ伸びて来ている状況でもありますので、広告主様にも評価をいただきながら、取り組んでいきたいです。

今のは近い将来のお話でしたが、少し先の話になりますと、Zホールディングスとしてグループ会社にもなりました、LINEあるいはPayPayといったグループのアセットをうまく活用する形でのソリューションをつくっていきたいと考えています。時間軸としては相当長い計画になるかもれませんが、先を見据えながら取り組みを進めていきたいですね。

これらの取り組みによって、広告認知の獲得から顧客の育成を行うまで、一貫したフルファネルのソリューションをワンストップでご提供できるようにしていきたいと思います。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。