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“No Data, No Future.”-クッキーレス時代に「勝てる」ヤフーの最新データマーケティングとは?

ヤフー株式会社は2021年10月8日、オンラインにて「Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE 2021」を開催した。“No Data, No Future”をテーマに、ヤフーが保有する膨大なデータを活用する、データマーケティングソリューション(Data Marketing Solution、以下DMS)について語られた。

ヤフーにしかできないデータマーケティングとは

2021年、人々の生活様式や購買行動が大きく変容するなか、デジタル広告はクッキーレス時代へ突入。今まで信じられてきた広告の定説も変わろうとしており、マーケターはその対応を迫られている。

この変化の時代に対応し、そこからさらに“勝ち残る”ためのツール・ソリューションは、既にさまざまな企業から提供されているが、ヤフーでは“適応力”こそが企業の生存を分けていくとし、ヤフーが保有する膨大なデータに基づいたDMSを提供している。

 

本カンファレンスでは「- No Data, No Future.1 - ヤフーにしかできないデータマーケティング」と題して、ヤフーのMS統括本部 テクノロジーサービス本部 本部長 鍵山 仁氏が登壇し、データマーケティングを取り巻く現状や、2022年に向けた戦略を語った。

鍵山氏は冒頭、「サードパーティクッキーの利用規制により、リターゲティング広告などは今までのようなパフォーマンスを発揮できなくなる。今後は、広告効果を高めつつプライバシーに配慮する企業だけが生き残ると言われている」と言及。加えて「データを持っているだけでは、今までのようなパフォーマンスを維持することが難しい時代にもなる。持っているデータをどのように生かすか、技術力が重要だ」と強調した。

 

 

ヤフーでは「マーケティングのファネルを作ること」「PDCAを高速で回すこと」の2点を目的としたDMSを提供している。
Yahoo! JAPANの各サービス利用者において、複数の広告を掲載したときにどの広告が一番コンバージョンに貢献したかなど、広告評価をすることも可能だ。

この広告評価について鍵山氏は「広告はあたった場合とあたっていない場合を比較することも重要」とし、「目的となるコンバージョンは、検索やオフラインでの購買、ユーザー群の遷移など、さまざまなケースはあるが、それぞれの目的に対して、広告接触と非接触でどれくらい効果が違ったのかということも含めて広告主には伝えている」と話した。

 

見込み顧客層のスコア推移を可視化する「Yahoo! JAPAN予測ファネル

ヤフーが提供する「予測ファネル」は、広告主の継続的なマーケティングのサポートを行い、「マーケティングのファネルを作ること」「PDCAを高速で回すこと」を実現していくためのソリューションである。

膨大なユーザーの行動データを持つヤフーでは、広告主のコンバージョンデータから、購買・検索・来店などのマーケティングファネルを自動的に作り出し、どのユーザー群がどの階層にどれだけいるかなど、見込み顧客層のボリュームを予測スコアで可視化するソリューションを開発した。この予測スコアは、広告主の商材に対して、これからコンバージョンする可能性が高いか低いかをスコア化したものとなる。広告の施策によって、コンバージョンに近い人を、上位のファネルからどれだけ増やせたのかを分析し、可視化できる。

 

 

鍵山氏は本ソリューションの活用例として、人材サービス業界の例を挙げた。

「例えば「転職ポータルサイトへの登録」がコンバージョンポイントとすれば、転職を考え始めた当初は0.5、転職セミナーに参加をすれば0.7、実際に転職先の企業を探し始めれば0.9、といったスコアが付与され、転職ポータルサイトへの登録が近づいているということになる。こうしたスコアを元に予測ファネルを作りだすことができれば、各ファネルのユーザー群に対してより効果的な施策を行うことができる。また、広告施策を行う際、広告効果をスコアによってメジャメントすることも行っており、特定のスコアを持ったユーザー群が広告接触によってどのようにシフトしたかについて、時系列でお見せしている」(鍵山氏)

今後のヤフーが提供する各種ソリューションの展開について鍵山氏は、LINEとのCRM連携部分を重要視しているとしながら、ヤフーとLINEのデータ連携については、ユーザーのプライバシーに十分配慮したうえで実施し、来年度には、各種DMSやメジャメントのソリューションを拡大させていくことに意欲を示した。

そして最後に「今日の話でチャレンジをしたいと思った方がいたら、ぜひ私たちと一緒に企画をして、インパクトのある事例を一緒に作ってもらいたい。来年のカンファレンスでは、お客様の口から「こんなことを当社ではやりました」という説明をしていただけるのではないか」と呼びかけてプレゼンテーションを締めた。

 

予測ファネルでクリエイティブの効果検証を実践

「- No Data, No Future.2 - ビズリーチが実践したデータ活用術~データマーケティング×クリエイティブ~」では、広告主として株式会社ビズリーチ ビズリーチ事業部マスマーケティング室室長 楠瀬 大介氏(画像右)、ヤフーからはMS統括本部 第二営業本部 本部長 三村 真氏(画像左)が登壇した。

 

 

ビズリーチはハイクラスに特化したスカウト型の転職サイトで、職務経歴書を登録するだけで、ヘッドハンターや企業から直接スカウトが届くサービスを展開する。本プログラムでは、Yahoo! JAPANのデータを活用したデータドリブンなクリエイティブ検証やKPI設定などが語られた。

楠瀬氏は最初に、ビズリーチがマス広告を出稿する際の目的は主に2点あるとした。一つ目が「テレビCMという多くの人にリーチができるメディアのパワーを使い、ビズリーチの会員獲得につなげること」、二つ目は「マーケティングファネルでは上位にいる転職潜在層にアプローチをして、ビズリーチを想起してもらう、もしくは転職について考えてもらう」とのことだ。

そのうえでマス広告(テレビCM)の課題として、デジタルでは数字で表すことのできる効果検証が、テレビでは難しいことを挙げた。「特にクリエイティブのABテストについては、全く違うクリエイティブをテレビで同時に流すことは難しく、同時に流せなければ、季節や出稿費、競合状況などさまざまな要因が変わってしまうために、フラットにクリエイティブを比較することも困難になっている」(楠瀬氏)

この課題を解決するためにヤフーが提案したのが、「予測ファネル」である。三村氏はビズリーチにおける2つの実践方法として、クリエイティブ検証と見込み顧客層の把握を行ったとした。

「A・B・Cという3つのクリエイティブで広告配信をした際に、各クリエイティブでどれだけスコアが上昇したかを可視化できる。予測ファネルのスコア階層ごとにクリエイティブがどう刺さっていたかも分かる。また、広告配信によってスコアが上昇したユーザー群の特徴も把握できるので、スコア別で特性に合わせた広告配信が可能となる」(三村氏)

 

Yahoo! JAPANトップページでABテストを実施し効果検証

ビズリーチでは以下の3つの異なる広告クリエイティブを用いて、予測ファネルを活用したクリエイティブ検証と見込み顧客層の把握を行った。

A まだ転職を考えていない層へアプローチするためのクリエイティブ
B 転職関心層に向けた、ビズリーチの認知獲得目的のクリエイティブ
C 転職検討層に、ビズリーチの「スカウト」機能を訴求したクリエイティブ

その結果、スコア層ごとに効果が出ているクリエイティブが異なることがわかり、A・B・Cいずれの広告についてもビズリーチで設定した仮説(目的)は間違っていなかったことが判明した。楠瀬氏は「仮説を数字で実証できたのは非常に良かった」とするとともに「サイトのセッション数は増えるがコンバージョンにまで至らない際に、ヤフーが持つデータと紐づけて、そのユーザー群がどういった人たちなのかといったペルソナを立証できたことは大きな価値がある。このコンバージョンに至らなかったユーザー群を具体的に把握したことが、今後の取り組みに生かせると思っている」と話した。

 

 

また、楠瀬氏は、刈り取り型の広告をアッパーファネルの層に当て過ぎてしまう風潮が業界にあるとしたうえで「アッパーファネルにはアッパーファネルにあった広告を当てて、スコアを醸成していくことをしなければいけない、と今回のデータを見て強く思った」との考えを示し、これについては三村氏も「マスもデジタルも共存していくものではあるが、メジャメントや検証ができるスキームを構築していくことが大事」と同意。今後の展望では、テレビやテレビ以外の媒体、デジタルも含めて、マーケティングの全体戦略を設計し、かつ効果を見ながらコストをアロケーションしていくことを示した。

 

サードパーティクッキーの規制により、マーケターは従来のマーケティング活動を大きく変えなければならなくなったが、今後さらに勝ち残るためには、従来のマーケティング活動を継続させるためだけのアクションだけではなく、チャレンジをしていくことが求められていくだろう。

今回のカンファレンスではヤフーが保有するデータに基づいたDMSの紹介がなされた。本ソリューション(予測ファネル)はマーケターにとって、単にサードパーティデータの代わりとして、ターゲティングやリターゲティングを行うだけでなく、見込み顧客層の可視化やPDCAの高速化など、さらなるメリットが見込める。

また、予測ファネルを使用したビズリーチの事例では、従来は難しいとされてきたマス広告のコンバージョン事例についての共有がなされ、ヤフーの予測ファネルが、クッキーレス時代におけるデジタル広告の代替手段だけに留まらず、今までマーケターが抱えていた課題を解決するためのソリューションにもなっていた。

来るべき時代に向けてマーケターとして何ができるか。そのためのヒントが今回のカンファレンス、そしてヤフーの提供するDMSで示されたのではないか。

関連リンク

Yahoo! JAPAN データマーケティングソリューションについて
Yahoo! JAPAN 予測ファネルについて

 

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。