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テレシー新CMOが見通す、運用型テレビCMの今と未来[インタビュー]

テレシーは2022年1月付で、村井陽介氏(写真・左)を取締役CMOとして迎えた。村井氏はテレシー代表取締役の土井健氏(写真・右)が「2022年、次のステージに進むうえで特に強化したい項目」に挙げている、クリエイティブ部門、グローバル事業部門、マーケティング部門を担当する。参画の経緯とテレシーの今後の展望について、同社代表取締役の土井健氏と取締役CMOの村井陽介氏に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下智之)
(ライター:同 柏海)

クリエイティブ×グローバル×マーケティングを強化

 自己紹介をお願いします。

村井氏 電通に入社をした初年度は名古屋支社のテレビ局配属になり、テレビ朝日系列約24局のスポット担当をしていました。2年目以降はクリエイティブ局へ配属替えになり、コピーライターをしていましたが、途中からはコミュニケーションデザイナーも兼任し、ナショナルクライアントを中心にキャンペーンを一気通貫でプランニングしていました。

 

クリエイティブおよびプランニング業務を8年ほど担当した後に、社内の海外留学制度を活用し、MBA(経営学修士)を取得しました。帰国後は、電通の海外事業部への配属となり、海外の電通系ブランドエージェンシー15カ国・30拠点の事業立案やプランニング、エクゼキューションを担当しました。

 

2018年以降は社長秘書として、社長の日常業務をサポートする形で、持株会社体制への移行、ガバナンス改革、中期経営計画の作成などに携わらせて頂きました。

 

そして2021年末、株式会社電通グループの社長交代をきっかけに「自身のキャリアを変えたい」と考えていたところ、土井さんから縁あって今のオファーを頂き、テレシーに参画することに決めました。

 

テレシーから村井さんへの今回のオファーにはどのような狙いがあったのでしょうか。

土井氏 約2兆円のテレビ広告市場で、今のテレシーが更なる存在感を発揮し次のステージに上っていくためには、その2兆円市場で我々なりに戦うための布陣やケイパビリティ(組織的能力)が必要だなと思っていました。

 

そんな時に、テレシーにはクリエイティブ、グローバル、マーケティングといった領域のケイパが不足していると感じていて、電通で多くの経験を積んできた村井さんの能力はまさにぴったりだなと思いました。特にクリエイティブの人材は社内におらず、目下の課題でした。

 

テレシーを立ち上げる時に思ったのは「広告媒体としてのテレビの魅力が、ある一定の層には全然伝わっておらず、その魅力を伝えていくことだけで、一定の売上を作ることができる」ということでした。これは日本国外のクライアントにおいても同様で、今後は彼らが自国から日本のマーケットに参入する際に、デジタル広告だけでなくテレビ広告も併せて提案することによって、より大きな予算を獲得することができると思っています。

 

そうした海外の広告主との向き合いにおいて、村井さんの海外事業経験を生かしていただくことによって、テレシーのグローバル事業を強化していけるとも思いました。また、自社のマーケティングについても、私一人の経験や力だけでは限界だと感じていたので、ぜひ協力を頂きたいと考えました。

 

テレシーでだからこそできること

村井さんは運用型テレビCMの市場をどのように見ていますか。

村井氏 運用型テレビCMと言っても、デジタル広告の運用型とはまだまだ乖離があるのが実態です。テレビCMは長い歴史の中で築かれた強固なビジネスモデルが存在しており、それが変わるということはそう簡単なことではありません。

 

ただ、デジタル広告の黎明期と一緒で、いつかはテレビCMも本当の意味での運用型広告へと変わっていくかもしれません。いや、間違いなく変わっていくと思います。そして、本格的に変わり始めたら、数十年続いてきたビジネスモデルが数年で変わってしまうほどの早い変化が起きる可能性が高いと思います。その時に、テレシーの存在は非常に大きいと思います。

 

テレビCMにおいても最適化、効率化、自動化といったことが当たり前になるタイミングが来たときに、電通グループの中にそのためプロダクトや経験値、人材を持っていることが必要不可欠です。そんないつかを見据えながら、テレシーは電通から少し離れたポジションで、そのための様々な取り組みができる良いポジションにあると思っています。

 

電通から異動をしてきてまだ数週間ですが、テレシーのメンバーはCARTAホールディングスらしくベンチャースピリットが強く、意思決定や決めたことを実行に移すスピードが電通よりも早いと感じています。どちらが良い悪いという話では決してありませんが、今のように先が見えないVUCA時代において全く違うカルチャーの会社が電通のグループ内に存在するということは非常に良いことだと思います。

 

現在のテレシーと電通はどのような関係ですか。

土井氏 電通はナショナルクライラント、テレシーは今までマスをやってことなかったクライアントと、それぞれクライアントソースが異なっており、両社間で住み分けができています。

 

一方で、我々も売上を作り、徐々に市場認知度が高まってきた結果、電通と既にお付き合いのあるクライアントのなかでも新しい部署などでは、我々にも声掛けをしたいという動きが出始めていると聞いています。

 

また、外資系メーカーのコンペなどで、電通とテレシーが同時に参加するというケースも出てきています。交通整理をしながらグループ全体で売上を拡大していければと思っています。

 

業界の開拓者・パイオニアを目指す

今後の抱負についてお聞かせください

土井氏 村井さんに参画して頂いた理由にも立ち返りますが、クリエイティブやマーケティング領域は競合他社と比較してまだまだ脆弱だと考えており、重点的に取り組むべきテレシーの課題だと考えています。

 

そして競合他社とも互いに良きライバルとして、切磋琢磨をしていく過程で一緒に市場を大きくしていきたいです。

 

村井氏 短期的にはまず、個人への負担が極力かからないような仕組み化や組織対応を実現させたいと考えています。

 

テレシーのビジネスは大きく成長している一方で、その成長が個々のメンバーの過度な頑張りに支えられている面も少なからずあると感じています。優れた個の能力を最大限活かすのと同時に、優れた個人だけに頼るのではなくチームとして勝つ方法を確立することが業績を拡大していくためには必要です。

 

海外クライアントを獲得する手法やその後の対応も含めてですが、更にビジネス大きくしていく過程で、どうすれば組織としてうまく回っていくか、という課題に挑戦をしていきたいです。

 

その結果「テレシーはチーム力のある会社だよね」とクライアントに感じて頂けるのが当面の目標です。

 

そして中長期的には、テレビCMのビジネスモデルがいよいよ変わっていく際に、テレシーが業界の開拓者・パイオニアとして存在感を発揮できるようにビジネスを拡大させていければと考えています。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。