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業界レビュー2022:レガシーインフラからの脱却

私たちの業界は流動的な状態にある。公的機関の規制からプラットフォームのプライバシー強化、ウォールドガーデンの拡大まで、エコシステム全体がメディアやマーケティングの急速な変化に対応しようと試行錯誤している。

 

2022年の業界レビューでは、6本の柱に焦点を当てている。これらの柱は、ある意味、絶好の機会でもあり、これからの1年間、イノベーションと投資が集中するポイントとなるだろう。

 

  1. オープンウェブ(開かれた自由なウェブ環境)の運命

 

1本目は、(おそらくこれが最も重要だが)オープンウェブの運命だ。サードパーティCookieやIDが廃止されようとしているが、私たちは、現在のターゲティングや測定に代わる技術を見つけられるだろうか?コンテクスチュアルターゲティングやクリーンルーム、「アテンション」測定は、オープンウェブを救えるのだろうか?

 

最近、あるプロダクトリードから、「縮小する」オープンウェブの現実を知らされた。この人物によれば、Chromeユーザーのうち、過半数には達しないもののかなりの割合(30~40%)が「シークレット」モードで閲覧しているか、最強のDNT(追跡拒否)設定にしているという。つまり、アドレサブルなウェブ環境は40%以上がすでに消え去ってしまったということだ。

 

私たちは現在、アドレサブルな市場で事業を展開しているが、そのアドレサビリティは日に日に低下している。しかし幸い、こうした根元的な問題に、抜本的に取り組む製品や戦略がいくつか登場しつつある。

 

サードパーティCookieの廃止後、オープンウェブには素晴らしい未来が待ち受けているだろう。しかしそれは、今日の状況とは随分違うはずだ。オープンウェブを成功させるための構成要素は、プライバシーファーストのアプローチで構築されるべきだと筆者は考えている。そのため、単なるIDハッキングを超えた技術に注目が集まるはずだ。

 

  1. リテールメディアの成長機会

 

リテールメディアも大きな成長分野であり、10年の年月をかけて形成されてきた広告市場だ。オンラインストアやアドマーケットプレイス、アドテクベンダー、広告会社等がこの分野にリソースを投入するようになったのは、eコマースの台頭、広告予算のシフト、Amazon広告事業の爆発的な成長などがあったためだ。

 

今後、数百~数千のオンラインストアやアドマーケットプレイスがリテールメディア事業を立ち上げ、利幅の大きい新たな収入源を開拓しようと試みることが予想される。

 

数十億ドル/ユーロ/ポンド規模の広告チャネルが、リテールメディアの中に出現し、今や誰もがこれに注目している。リテールメディアは、全く新しい広告収入源、つまり、これまで大手スーパー・コンビニ・百貨店等に投じられてきたプロモーション予算にアプローチできるからだ。

 

広告会社は、このチャネルがもたらすユーザー行動の変容とその正確なアトリビューションモデルに惹かれるだろう。そしてアドテク事業者には、データ収集、広告配信、セグメント化、革新的な広告フォーマット、アドレサビリティなどが求められるだろう。

 

  1. データ駆動型テレビは、広告会社にアドレサビリティをもたらす

 

3本目の柱はデータ駆動型テレビだ。米国の外では、非常に多くのテレビCMインベントリーがウォールドガーデンに閉じ込められている。BVOD、AVOD、FASTなどをバイヤーにとってアドレサブルなものにするには、どうすればよいのだろうか?

 

サイロ化したテレビインベントリーのソースがあまりに多く、ターゲティングと測定の規模を拡大することが難しくなっている。このような厳しい状況下で、データ重視のバイヤーがどのようにインベントリーを集約、最適化するか、興味深いところだ。

 

データ駆動型のバイイングを実現するには、プログラマティックが不可欠だ。ただし、マーケターは断片化したテレビ広告インベントリーを1つにまとめようとするため、新たな集約プラットフォームも必要になる。

 

また、バイヤーはよりきめ細かい情報を求めているため、ターゲティングの主流はコンテクスチュアルになるだろう。さらに、IPアドレスの使用を巡るプライバシーへの懸念が高まっているため、「進化した」パネル測定ソリューションの採用も拡大するだろう。

 

米国外では、データ駆動型テレビ広告のバイイングは非常に難しい。その背景には、旧態依然とした慣習や技術導入の遅れがある。それでも、この進化しつつある2000億ドル(約25兆4700億円)規模の広告市場は巨大な機会をもたらすはずだ。

 

  1. ゲームの細分化

 

4本目の柱であるゲームは、ますます重要性を増している。ゲームプラットフォーム(ゲームコンテンツ+アドテク)の台頭によって、このチャネルが統合されることはないだろう。むしろ、細分化が助長されることになる。では、パブリッシャーのマネタイズに貢献し、同時に、バイヤーのROIを高めるのは誰だろう?そう、アドテクだ。

 

チャネルとしてのゲームはついに、マーケティング投資を呼び込める存在となった。マーケターはようやく、ゲームがアテンションエコノミーの大きな部分を占めていることに気付いた。モバイルIDの廃止は、間違いなくアトリビューションを複雑化させる。しかし、この業界は常にイノベーションの道を探っている。

 

「メタバース」をめぐる宣伝合戦は、より多くのマーケターをこの世界に引き込むだろう。メタバースという概念は新しいものではない。ゲームはすでに既存のメタバースへのフックになっている(フォートナイト、ロブロックスなど)。ゲーム内広告は、こうした新しいゲーム世界への「橋渡し」になると考えている。アドテク事業者はすでに新しいフォーマットやデータ駆動型の機能を検討している。間違いなくさらなるイノベーションが起きるはずだ。

 

  1. ウォールドガーデンの拡大

 

5本目の柱はウォールドガーデンの拡大とその影響だ。こういった展開を嘆く人もいるかもしれないが、しかしバイヤーがベンダーにウォールドガーデン内での配信、最適化、測定能力を求めるようになるため、サービスやテクノロジーレイヤーにとってはプラスに働くだろう。

 

メディアは今や、連なるウォールドガーデンと化している。フリークエンシーキャップの設定や基礎的な最適化といった単純な工程すら困難になるだろう。プライバシーファーストの時代に合わせて、マーケティングの方法を再考する必要があるだろう。

 

  1. サービスレイヤーの進化

 

6本目の、そして最後の柱はサービスレイヤーの進化だ。メディアの分裂に伴い、サービスレイヤーの重要性がさらに高まっている。ウォールドガーデンが散在するプライバシーファーストの世界では、もはやバイイングの規模は問題ではない。

 

その代わりに、エージェンシーは、プランニングの専門知識やデータの管理、キャンペーンの実施、インテグレーションなどの能力によって評価されるようになる。

 

データ管理や技術の選定と導入、チャネルの専門知識(アマゾン、TikTokなど)といった知識ギャップを埋めるため、新しいサービスソリューションが登場するだろう。複雑化すればするほど、より高い専門性が求められるからだ。

 

オープンウェブのオーディエンスとリテールメディアなどの新しいチャネルを集約、最適化するため、アドネットワークが再び前面に出てくるだろう。これについては、一歩後退という見方もあると思うが、オーディエンスの死角があまりに多いため、必要になるはずだ。

 

今回の業界レビューでは、市場に関するExchangeWireの見解と最新動向を紹介した。私たちはバイヤーとセラーに利益をもたらさないレガシーなインフラから脱却し、長期的なイノベーションのサイクルに突入しつつあると確信している。

 

2022年はその始まりの年であり、ウォールドガーデンやプライバシーファーストが新たな現実となるこの世界で、真に革新的な技術を開発しようとするベンダーには、高揚するような素晴らしい機会が待ち受けているはずだ。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。