コネクテッドテレビを活用し「からまないブラシ」を伝える動画広告を創る[インタビュー]
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on 2022年7月21日 in
日本を代表する家電メーカーのパナソニック株式会社は、2020年に新機能「からまないブラシ」を搭載した掃除機を発売し、多くのお客様からご好評をいただいている。特許技術にもなっている「からまないブラシ」は、掃除機のヘッド部分に絡みつく毛の悩みを軽減する目的で開発されたものだが、その機能をより多くの方々に強く認識してもらうため、今回、動画広告のプロモーションを実施することとなった。
本プロモーションで電通×セプテーニグループがYouTubeバンパー広告を選択した背景やコネクテッドテレビ(CTV)を意識した活用、そして今後の展望について、パナソニック株式会社コンシューマーマーケティング本部 コミュニケーション部 主務 中村 怜氏、株式会社電通 クロスボーダービジネスプロデュース局 統合マーケティング・プロデューサー 嶋田 大樹氏、Septeni Japan株式会社 ビジネスプロデュース本部 第二部 課長 川島 直氏に話を伺った。
(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)
(ライター:同 渡辺龍)
(Sponsored by Septeni Japan)
なぜYouTubeバンパー広告を活用したのか
―自己紹介をお願いします
中村氏:パナソニック株式会社の中村 怜と申します。コミュニケーション部のメディア戦略課で、家事周りの商品の宣伝・デジタルマーケティングを担当しております。日々の業務としては、宣伝活動の戦略立案や施策の構築、運用管理を行っています。
嶋田氏:株式会社電通の嶋田 大樹と申します。私はビジネスプロデュース部門で、パナソニック様に対して、デジタルやデータをもとに仮説を立てながら、クリエイティブなども含めた統合的なプロモーションをプロデュースしております。
川島氏:Septeni Japan株式会社の川島 直と申します。私が所属しているビジネスプロデュース本部は、運用型広告以外のソリューションも含めビジネスの課題解決を行う組織で、私自身は管理職としてメンバーマネジメントをしながらプレーヤーとして、クライアント企業と直接向き合いプロモーションのお手伝いをしています。
―今回のプロモーションの概要と実施の背景についてお聞かせください
中村氏:当社の掃除機の技術の1つである「からまないブラシ」の宣伝をCTVで行いました。からまないブラシはパナソニックの特許技術でして、その実力をしっかり広めていきたいというのが第一の目的でした。からまないブラシは、掃除機のヘッド部分に毛がからみつく、というお悩みを軽減する機能になっていますが、この「からまない」ことをリアリティある形で表現するには、「こんなにからみやすそうなものを吸い込んでも、ほら、からまない」という一連の流れで表現する必要があったため、CTVを選択しました。
―プロモーションの実施にあたり意識された点や注力されたことは、どのようなことでしょうか
中村氏:従来のテレビは大画面であるがゆえに、家族など複数人での「共視聴」が多い利点がありますが、家事をしながら見るといった、ながら視聴も多いメディアだと思っています。一方、スマホやPCで見られる動画配信サービスは、デバイスを個人が所有しているケースが多く、単独視聴が多い分、個人が見たいものを見る、という「能動的な視聴」が多いと思っています。ではCTVはというと、大画面であり共視聴がされやすく、個人が好きなものを見にいく能動的視聴が多いという、それぞれの良い部分が掛け合わさったメディアだと感じています。そういった背景から、動画の配信先として取り組むべき価値が高く、活用していきたいという意識がありました。
川島氏:CTVをメインに配信しながら、電通の「STADIA(スタジア)」を用いてテレビ視聴データに基づいてCTV以外のメディアに配信も行いました。またデータクリーンルームを活用し、特殊な分析もしています。まずはグループの知見を用いることで、ファネルを一気通貫したマーケティングを行えるようにしたことが工夫した点です。
嶋田氏:YouTubeには様々な配信手法がある中で、今回、「からまないブラシ」を認識してもらうために、スキップされない6秒という短尺のバンパー広告を使用しました。また、6秒の範囲でどれだけ「からまない」ということを意識づけできるかを念頭に置き、お客様に本製品の機能や特徴を認識してもらうことに注力しました。加えて、YouTubeバンパー広告で、スマートフォンとCTVでお客様の態度変容や検索リフトにどれだけ差が出るのかも検証したいと思っていました。
―今回のキャンペーンで利用するバンパー広告向けに、新たに6秒のクリエイティブを作られたのでしょうか
嶋田氏:既存の動画から編集して使うものではなく、当社のクリエイティブチームと相談し1から制作しました。1パターンあたりセッティングには1~2時間ほどかかり、撮影はワンカットで10秒でした。3パターン撮ったのですが、いずれも準備には非常に時間がかかる一方で、撮影の本番自体は一瞬という、非常に骨の折れる現場でした(笑)。
中村氏:本製品の良さを説明するには実際に毛がからまないシーンを見てもらうのが一番なのですが、そこでCGやカットの切り替えを多用するとどうしてもリアリティが薄れてしまうので、今回のような撮影方法になりました。
https://youtu.be/WMdzjViuO14
CTVが家庭の中心になる時代がくる
―CTV活用までの経緯はどのようなものだったのでしょうか
中村氏:新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅時間の充実が見直される中、その選択肢のひとつとして動画配信サービスによる動画視聴が増えるのではないかと、関連する動きに注目はしていました。また、セプテーニさん主催のセミナーでCTV領域の事例紹介(※1)があったのですが、そちらを拝見する中で、からまないブラシを基軸として描いていたマーケティング戦略に非常にフィットするものだと思い、ぜひ取り組んでいきたいと思いました。
川島氏:現在アメリカの市場では、インターネット接続されたテレビが普及しています。そういった状況もあり、当社でも早い段階からYouTubeコネクテッドテレビへの取り組みを開始しています。その成果もありYouTubeコネクテッドテレビを視聴したユーザーがどのように態度変容していったかについて、様々な業種の企業で好事例が上がっていたので、当社ではこれをテーマにセミナーでお話をしていました。テレビが家族の中で大きな役割を担っていたように、大画面のフルデバイスが再び家族の共通話題になる時代が来るのではないかとも思っています。YouTubeでは既に「共視聴」という指標が出てきていますが、家庭での購買における意思決定の際に、共通の第一想起を呼び起こすメディアになる可能性を感じています。
―今回のプロモーションの結果に関して、どう受け止めていますか
嶋田氏: CTVとスマートフォンの2つのデバイスを配信先にしてプロモーションを実施したのですが、正直なところ実施前はデバイス間であまり広告効果に差が出ないのではないかと思っておりました。しかし、ブランドリフトとサーチリフトの検証を行なってみるとCTVの方が1.5倍ほど良い結果を示しました。これは私自身も想定していなかったのですが、CTVを通じて「からまないブラシ」を多くのお客様にご認識いただけたことが、ブランドリフト、サーチリフトともに良い結果に繋がったのではないかと考えております。今後は、伸び続けるであろうCTV市場をさらに効果的にご提案していきたいと考えています。
川島氏:クリエイティブのクオリティを保ちながら、一貫したプロモーションを仕掛けるというのは簡単に見えてなかなか難しいのですが、今回は3社で配信方法やクリエイティブの綿密なすり合わせをできたことが、結果に繋がった大きな要因だったと思います。
―パナソニックさんにとって、今回のプロモーションを通して、2社と一緒にやられて良かった点はどのようなことでしょうか
中村氏:目に見えてPDCAのスピードが上がりました。ウィークリーでの細かい運用実績だけでなく、そこに至った背景や要因の考察まで合わせていただけるので、そこを叩き台に次の打ち手を検討する、という建設的な議論ができました。また、当社と同じ目線に立って取り組んでいただけたことも、スピードが上がった要因だと感じています。数字の報告をして終わり、といった運用広告の代理店さんもある中で、セプテーニさんは、「最終的な目的はここなので、今回はKPIとしてこういった数字を置いています」といった施策の背景まで汲み取っていただいていることが打ち合わせの中でしっかり感じられたので、話をスムーズに進めることができました。こうした根底の部分で認識に微妙なズレがあると、話や施策が進むにつれてズレがどんどん大きくなりますから、当たり前ではありますが、関係メンバーが同じ目線に立つという土台作りはやはり大事だと思います。
認知から購入までを可視化していく
―今後のお取り組みについてお聞かせください
中村氏:今回はスマートフォン、CTVと各配信面に全く同じクリエイティブを流したのですが、本来は画面サイズも見られ方も異なるデバイスなので、最適なクリエイティブはそれぞれ別にあるのではないかと思っています。今後はCTV専用のクリエイティブを考えていくことにもトライしていきたいです。また、機能の認知はあくまで通過点で、お客様に当社製品をお使いいただくことで生活の中での「ラク」をご実感いただくことをゴールとしています。我々の行っている取り組みやメッセージが、どのような方のどんなタイミングでの購入に繋がり、どれだけお喜びいただけているのかなど、各施策とゴールの結びつきをできる限り可視化していきたいです。
嶋田氏:KPIとして「からまないブラシ」搭載の掃除機の認知を上げていくことはもちろん重要ですが、最終的には施策全体がパナソニック様の売上に貢献することが我々の最大のミッションだと思っています。そのために、オフラインのメディアや売上を可視化して、施策に繋げていけるよう取り組んでいきたいと思っています。
川島氏:昨今市場では「オンオフ統合」がホットワードになっています。ですが、まだまだ手段先行になっている部分があると私たちも感じることがあります。また、広告主様の要望に対しソリューションが追いついていない部分があるのも事実です。今後は当社と電通さんとのさらなる協業深化によって、広告主様の売り上げに紐づいた施策という面で先駆者となり、広告主様の課題解決に勤しんでまいります。
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ABOUT 渡辺 龍
ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。