×

プログラマティックの世界に、オープンオークションのない未来は訪れるのか?

パブリッシングとプログラマティックの世界は、転換点を迎えようとしているのか?ExchangeWireの独占寄稿者であるアレクサンダー・ルンド氏はそう考えているようだ。そのルンド氏が、プログラマティックに新たな道を切り開くためのビジョンを概観する。

 

 

アドテク業界の潮流は再び大きく変わろうとしており、大嵐の到来を予感させている。グーグルが、サードパーティCookieの廃止を延期したとはいえ、Cookieの終焉が不可避であることに変わりはない。Cookieの終焉により、業界にパラダイムシフトが起きるだけでなく、パブリッシャーと広告主がより緊密な関係を築くための新しいソリューションや新しい機会ももたらされるだろう。

 

 

オープンオークションの限界

広告主とパブリッシャーの間で、広告プロダクトと価格、品質がうまくバランスした直接取引の関係基盤が築かれるなど、さまざまな新しい機会がもたらされる一方で、筆者が特に注目したいのは、プログラマティックのオープンオークションがいよいよ限界を迎えるのかということだ。

 

これは、パブリッシャー、広告主双方にとって、より高いコントロールと透明性を目指すという、全体的な方向性を示すものだ。またこれは、近年の技術や知識、専門性の蓄積によって、ようやく可能になったものであり、これによって、すべての業界関係者が新たな段階に突入することになる。

 

オープンオークションは、デジタル広告におけるバイヤーとセラー双方の参入障壁を下げ、誰もが容易に広告を買えるだけでなく、広告在庫を供出することも可能にした。「ボトムアップ」戦略のもと、低単価在庫のバイイングによって、安定的にパフォーマンスを維持できるという点では、確かに有用だった。

 

しかしこれらの利点は、広告の出所がどこで、どのような経路で配信されるかをコントロールすることができず、ほとんど情報も得られないということとトレードオフになっていた。広告運用のかなりの部分をサードパーティに依存していたため、エコシステムが不透明で、サプライチェーンも不明瞭になっていたのだ。

 

次の一歩として、透明性を高め、コントロールを取り戻し、コスト構造を管理し、改善するのは自然なことだ。最終的には、パブリッシャーの独自性と品質を十分活用できるようにすることが重要だ。今まさに、その機運は熟している。

 

 

コントロールによって費用対効果を高める

コストのかかる中間事業者への依存を減らし、需要が高いエクスクルーシブのインベントリで利幅を拡大することが、パブリッシャーの成功には欠かせない。しかし、さらに重要なのは、インベントリをうまく束ねて販売するため、販売チャネルを適切に構成しなおすことだ。

 

販売チャネルとディールタイプの整理に必要なツールは、誰でも広く利用することが可能だ。それによって、独自のビジネスモデルとパートナーネットワークが構築でき、それをパブリッシャーのマネタイズ戦略の強力な武器とすることができる。

 

「オープンオークションは必ずしも陳腐化したわけではなく、より本来の姿に近い別のバージョンになるのだ」

自社の独自のセールスポイントを特定し、それを適切な組み合わせの広告商品に仕立て上げるには、それなりの時間と労力が必要だ。ポートフォリオ全体をそれにふさわしい価格設定にすることは言うまでもない。幸い、ほとんどのパブリッシャーは、それを正しく行うために必要なデータを大量に保有している。あとは、データを整理し、選びうる選択肢に基づいて戦略を立てるだけだ。

 

その意味で、オープンオークションは必ずしも陳腐化したわけではない。より本来の姿に近い、別のバージョンに生まれ変わるだけだ。どの販売チャネルも、それぞれ異なるアプローチをとっており、それぞれの強みがある。それらを連携し、それぞれが最大のアウトプットを生み出せるよう適切に配置するのだ。そして、広告主や広告会社との直接的なパートナーシップの拡大を、販売戦略の中核に位置づける必要がある。

 

オープンオークションは、バイヤーとセラーの双方にとって、デマンド、サプライへのスムーズな入り口となる。そして、価値の低いインベントリを処分したり、安定的にバイイングしたりするには、とても有効なアプローチだ。

 

その一方で、プレミアムメディアでは、バイヤーとの緊密な関係性やエクスクルーシブ在庫を用いて、より高い価値をもたらす、さまざまな取引形態が普及するようになるだろう。

それぞれの販売戦略の利点が適切に反映されている限り、さまざまなアプローチが入り込む余地がある。ただし、オープンオークションのような画一的なアプローチにおいては、パブリッシャーが持つ優れたインサイトを軽視しがちであることを覚えておく必要があるだろう。

 

 

独自性こそが未来

オープンオークションの限界と、より洗練されたディール形態へと向かう流れは、より独自性の高いデジタル広告取引を可能にする。この独自性を支えるものは、何よりもまず、メディアに対する深い理解だ。そして次に重要なのが、コンテクスチュアルターゲティングやオーディエンスターゲティングに利用できるファーストパーティデータだ。

 

データプライバシーへの関心が高まり、サードパーティCookieの利用が減少した結果、ファーストパーティデータへの需要が急拡大していることを理解しておく必要がある。すべての業界関係者は、否応なく変化に晒され、その結果として、正しく行動せざるをえなくなるのだ。

 

ファーストパーティデータは、プレミアムな広告枠やフォーマット、そしてプレミアムメディア自体がそうであるように、それぞれ独自の強みを持っている。よって、ファーストパーティデータも、緊密なパートナーシップを築きたい重要な企業だけに、エクスクルーシブで提供するのがよいだろう。

 

ファーストパーティデータの種類やカテゴリごとに、どのように評価し販売すべきか、それぞれ異なるランク付けをすることが必要だ。ファーストパーティデータは、直接取引をする企業の開拓や新たな関係性の模索を通して、多様な売買形態を促進することになる。これは、これまで慣れ親しんできたオープンオークション経由の販売方法に破壊的革新を起こし、今後のデジタルメディア取引においても中心的な役割を担うことになる。

 

進化の過程では、品質に対する責任の大半はパブリッシャーにある。パブリッシャーは、コントロールと品質を取り戻すために、この新しいエコシステムの形成を率先してリードしていく必要がある。とはいえ、広告主の協力がなければ、成功はあり得ない。だからこそ、デジタル広告の最善の未来について、双方が共通の理解を持つことが重要なのだ。

ABOUT ExchangeWire.com / Supported by CARTA HOLDINGS

ExchangeWire.com / Supported by CCI

本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。