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「データ統合により、いかに小売様に利益還元できるか」―フェズ代表が語るリテールメディアの本質とこれから[インタビュー]

 

ドラッグストアを中心に約1億ID-POSデータを保有する株式会社フェズ。ひとつひとつは限られた各小売の購買データだが、それらをリテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」で統合化することで、市場データとして唯一無二の価値を提供し続けている。

 

P&G在籍時に小売の課題に直面し、その後Google在籍時には課題解決の糸口を掴んだという株式会社フェズ 代表取締役 伊丹 順平氏に、リテールメディアの本質やデータ統合の価値について話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 渡辺 龍)

 

 

 

今後オンライン化が見込まれる小売市場

―伊丹さんが2015年に会社を立ち上げた当時、リテールメディアのどのような部分に手応えを感じていたのでしょうか

当時は「リテールメディア」という概念はまだ一般化されておらず、私がGoogleに在籍していた後半辺りでO2OやOMOという言葉が出始めたくらいでした。元々はP&G時代に目で見てきた小売業の課題を解決するという考え方から始めているので、起業にあたりマーケットがあるかどうかは大きな問題ではありませんでした。

 

広告や販促を打っているのに、何故売り場の商品が連動していないのか、何故これらが数字で把握できないのかといった疑問があり、あくまでこれを繋げたのが最初のビジネスモデルになります。なので根幹としては、「広告×販促×売場」が同じ時期に同じように一致していることで効果が最大化されるという考えを基に、徐々にサービスを展開させていきました。

 

ここで、購買データを追うためにID-POS分析が必要になるのですが、当初は現在のようにデータ接続ではなく、小売様から販売実績をエクセルで貰って分析、レポーティングしていました。その後、連携先が増え着々とスケールしていき、常時接続が始まったのが創業4年目からです。

 

―ドラッグストアからID-POSデータを預かるまでの道のりはどのようなものだったのでしょうか

ドラッグストア様から当社のビジョンに共感してもらうという部分は実は苦労していませんでした。特に当時のドラッグストア様は変革時期の企業が多く、DXに取り組まなくてはならないという意識は各社抱えていたのではないかと思います。私が小売業界に携わっていたこともあり、商品の仕入れにあたってのデータ分析の重要性や、チェーンオペレーションと売り場の欠品率の関係などについて、経営者の方々とスムーズに会話できていたのも大きな点だったと思います。

 

最終的には、広告を主軸とするプラットフォーム化を見据えた当社の取組にもすんなり理解をいただきました。今でも小売の経営者の方で当社を否定するような方はいないです。

 

―その後、コロナ禍に入り、小売のオンライン化が一気に進むといった声もありました。その辺りはどう見られていましたか

一部でオンライン化が進むのは当時から理解していましたが、コロナ禍を経ても思った以上にオンラインには流れなかったという印象です。ドラッグ業界でいうとオフラインとオンラインの比率はあまり進んでいません。

 

結局日本では、オンラインがどれだけ頑張っても物流的に半日はかかるので、オフラインの方が便利なんです。最近ではオフィス回帰の流れも出てきている中で、都会ならオフィスの周辺を数分歩けばドラッグストアもありますし、帰りにスーパーに寄って、実物を見て買うこともできます。オフラインの生活様式を一変させるようなインフラがまだ整っていないのが現状です。

 

―そうすると、今後も小売のオンライン化が進むスピードはそう速くないのでしょうか

いえ、今後は速くなるのではないかと見ています。やはりオンラインで買った方が便利な商品もあり、分かりやすいものは水やトイレットペーパーです。売り上げの最大化に向けてオンオフで役割を分けていかなくてはいけないという観点で見ると、現在は少しオフラインに寄り過ぎている気もします。

 

恐らく来年、再来年とインバウンドが回復してくるにつれて、ドラッグストアの業績も飛躍的に回復するはずです。また、小売各社の中でデータベースやインフラが整ってきつつあります。そういった環境下で次の一手を打つとなると、オンラインにもう少し適切な商品を入れるといったDX周りの改革に手をつけるのもいいのではないかとも思います。

 

 

リテールメディアの本質=データ価値を高め、小売へ利益を還元する

―日本におけるリテールメディアの現状をどう捉えていますか

多くの人がリテールメディアを語っていますが、当社を含めて誰も成功していない以上、リテールメディアというもの自体がまだ存在していないのではないかと思っているぐらいです。それほど初期の段階だと見ています。

 

また、各人がそれぞれの捉え方をしていますが、中には盛り上がっているマーケットに乗っかろうという方もいます。リテールメディアにはどのような価値があるのかをもっとシャープにみんなで決めていかないと、マーケット自体がうやむやになって終わる気がします。

 

―業界トップを走るフェズの代表から、「まだリテールメディアは存在していない」という言葉が出るのは意外でした

私は誰と話していても「まだ市場はできあがっていませんよ」と常々言っているのですが、ただ今後の可能性が非常に大きいというのは間違いないです。

 

大事なことは「売上規模はこうで」とか、「リテールメディアは半端なくて」といったことを喧伝するのではなく、本質的に消費者を捉える形になっているのかや、小売様の利益が上げられる仕組みが成立しているのか、ここをしっかり見極めていかないと、本質から逸れたリテールメディアが出てくるような気がします。

 

―伊丹さんの考えるリテールメディアの本質とはどういったものなのでしょうか

やはり小売様にとって売上と利益が上がる仕組みでなくてはいけないと思っており、それには「データの価値」を高めていくことが不可欠なのですが、この部分を語っている人が少ないと感じています。

 

また、売上に返ってくるためには、リテールメディアを通じて消費者のメディア接触の仕方も変わっていかなくてはいけません。そのためには、いかに個々のデータと紐づいた状態で、消費者にとって有益な情報を流せるかといった、消費者の購買にどう寄与するかを考え抜かれたリテールメディアを作っていくことです。

 

例えばアプリに関して言えば、私に対して女性用化粧品のクーポンが来ることも珍しくありません。こういった部分にイノベーションが起こっていかなくてはいけない。ID-POSデータをしっかり紐付けて、私に適したクーポンが配信されるようにメディア価値を変えていく必要があります。

 

「リテールメディアの本質」と難しく物を考えると複雑になってしまうのですが、いかに消費者にとって有益な情報を流せるか、ひいては小売様に売上や利益還元ができるかのシンプルにこれだと思っています。

 

 

「Urumo」で分断されたデータを市場データ化

―データの価値を高めていくには何が必要なのでしょうか

日本と米国市場の違いにも関連しているのですが、アメリカではウォルマートが成功しており、一番のポイントは、金額ベースで見たときにアメリカ国民の30~40%が生鮮食品をウォルマートで買っているということです。するとその購買データはアメリカ国民のデータとして捉えることができます。

 

一方で、日本でも大手小売企業がリテールメディアを展開していますが、ウォルマートの規模には及ばないためそれらをマーケットデータとして捉えることはできません。あくまで小売各社が顧客に来店してもらうためのリテールメディアとして今の構造は成り立っています。

 

これを、広告を主軸に小売様がデータ利益を得られる構造へ変えるには、小売1社のデータ規模は限られたものなので、小売を横断化した統合データがないと、データ価値は高まらないということになります。

 

―フェズではそのデータ統合を進めていますが、まさにデータ価値を高め、小売へ利益が還元できる構造を作り出しているということでしょうか

おっしゃる通りです。リテールの市場データとして横軸を抑えようと思うと、データを統合化したものでないと価値がないです。当社のリテールデータプラットフォーム「Urumo」では、現在、大手ドラッグストアチェーン様を中心に、約9460店舗から約1億ID-POSデータをお預りしています。各社のデータを統合化することで、市場データ化を実現できています。

 

そうすると、メーカー様に市場データを使ったマーケティングの提案をすることができます。データの活用が増え価値が高まれば、小売様の利益も上がります。データの統合化をいち早く進めてきた当社だからこそ、最終的に小売様に利益をお返しできるという構造を実現できています。

 

当社では、今後より一層のスピード感を持ってリテール業界の変革に繋がるソリューションを開発・提供していく予定なので、ぜひ期待していただければと思います。

 

資料提供:株式会社フェズ

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。