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TeadsがMeta社キャンペーンを通じたCookieless配信結果を報告[ニュース]

グローバルメディアプラットフォームであるTeadsは、6月6日、東京の六本木で開催されたAdvertising Week Asia 2023にて、ソーシャルメタバース企業のMetaと大手広告代理店のピュブリシス・グループの一員であるビーコンコミュニケーションズ株式会社を迎え、「Quest 2キャンペーンのデジタル・マーケティング戦略」と題したパネルディスカッションを開催した。

 

市場創出を目的としたマーケティング施策

この日の進行役を務めたTeads Japan セールスマネージャーのボルワニ・ラヴィン氏によると、同社が構築した媒体社のネットワークは日本のユーザーの61%を網羅。またとりわけモバイル端末に適した広告クリエイティブの制作を請け負うTeads Studioの運営に加えて、Cookieless環境下においても様々なKPIに応じた広告配信が可能であるといった同社の特長について説明を行った。

続いてMetaのAPAC Media Strategy Managerである勝木 華苗氏は、同社が開発したVRヘッドセットであるMeta Quest 2の概要を紹介した。多くのVR関連機器が高価な価格帯で販売される中で、同製品は5万円以下で提供。またゲーム専用機やPCとの接続を必要とせず、ワイヤレスであることなどを伝えた。

さらに、3年前に日本市場への参入を果たした際には、VR機器の取扱事業者がほぼ皆無であったと述懐。このため、廉価で使いやすい機能を装備するだけでは十分ではなく、啓蒙的なマーケティング施策の必要性を認識したと述べた。

 

日本独自CM製作の舞台裏

こうした課題の解決に向けて、Meta社は2022年冬にテレビCMを実施。「なんでもありを、生きてやれ。」という世界共通のキャッチフレーズを採用しつつも、それ以外の内容については日本独自のCMコンテンツを製作した。

勝木氏は、事前調査を通じて、仕事や勉強に忙しく、興味や関心を追求することができない日本人が多くいることを把握。そこでCM製作に当たっては、自宅にいながらにして、ヘッドセットを着用するだけで、即座に興味や関心を満たすことのできる世界に飛び込むことができるという点を強調するストーリーを設計した。さらにゲームユーザーはデジタルコンテンツの消費量が高い傾向にあることを鑑みて、このテレビCMの内容を一部変更した上でデジタル媒体にも大々的に展開した。

またCMコンテンツ制作だけでなく、広告配信においても様々な創意工夫が求められたという。例えば、Meta Quest 2のターゲットであるコアゲーマーに対して、膨大な数に及ぶデジタル媒体を通じ、いかに効率的にリーチできるかが課題となった。しかしながら、コアゲーマーの属性や行動様式は当然ながら決して一様ではない。勝木氏は、国や市場によってその実像は大きく異なるとし、例えば米国のスポーツゲーム愛好者はリアルなスポーツも堪能する傾向が強い一方で、日本のゲームユーザーはマンガやアニメのファンであることが比較的多いと指摘。よってリーチ手法についても、日本独自の仕組みを設計する必要性に迫られた。

 

CookielessがCookieを上回る好結果

この課題に取り組んだのが、ビーコンコミュニケーションズ株式会社のDigital Directorを務めるシャーマン・ケリー氏である。同氏はまずTeads社が保有するファーストパーティデータの中から、「テクノロジー」や「ゲーム」に関連したセグメントを抽出。さらにサードパーティデータを通じて、コアゲーム形態の一つであるロールプレイングゲームのユーザーや各種ゲーム専用機の保有者を追加することで、広告の配信規模を拡張した。

さらにテレビCMをオンライン配信向け動画広告へと転換する上では、Teads Studioの広告制作機能を最大限に活用した。まずは商品の詳細を記したランディングページへと誘導するCTAボタンや商品自体の独立した写真を追加。さらにユーザーの注目を引くために、この写真を上下にわずかに揺らすように常時表示するといった趣向を凝らした。これらの工夫が功を奏し、動画視聴完了率は目標を大きく上回る65%を達成。クリック率は0.21%に達し、ブランド認知度は16%向上した。

また本キャンペーンでは、サードパーティCookieをベースとしたターゲティングと、Cookieを用いないターゲティングを比較することを目的としたA/Bテストを実施。リーチ、動画視聴完了率及びその単価、クリック率、ブランドリフトといった各指標すべてにおいて、CookielessターゲティングがCookieターゲティングを上回った。具体的に、ベンチマーク比較においてCookielessで配信したセグメントは視聴完了率が+10%、CTRが+60%、リーチにおいても+12%を超えるパフォーマンスを獲得できた。

ケリー氏は「ユーザーの量と質という両面において、Cookielessターゲティングがより有効であったとの結果を示している」と評価。2024年に予定されているGoogle ChromeでのサードパーティCookieのサポート廃止後も、効果的なターゲティング配信は引き続き可能であることを伺わせた。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。