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10周年を迎えるOutbrain Japan 変わること、変わらないこと -前編-[インタビュー]

レコメンデーションプラットフォームの世界的リーディングカンパニーであるOutbrainが、日本法人を設立してから今年で10年になる。この節目を機に、同社メンバーに、その歴史を振り返り、またこれからどのような未来を築き上げようとしているかについてのインタビューを実施。その内容を全2回に分けてお届けする。前編ではパブリッシャー(媒体社)担当チームに話を聞いた。

 

 

(Sponsored by Outbrain)

10年間での変化とは

 

―自己紹介をお願いします。

 

益田氏:Outbrain Japan株式会社のジェネラルマネージャーを務める益田敦司と申します。インターネット広告業界には20年ほど携わっており、MicrosoftやAOLのオンライン広告部門などを経て2018年にOutbrain Japanに入社。パブリッシャー向け事業の責任者を務めた後に、2022年10月より現職に就いています。

 

大川氏:シニアパブリッシャーアカウントマネージャーの大川悟です。パブリッシャーがOutbrainのプラットフォームを活用して収益をあげていくお手伝いをしております。前職ではアドネットワークの営業職を勤め、その前はサイト制作会社で働いていました。広告とコンテンツ制作双方の現場経験が現在の業務に役立っていると思います。

 

佐藤氏:パブリッシャーアカウントマネージャーの佐藤安香里です。金融業界の法人営業を経験後、大手広告プラットフォームと外資系メディアを経て、2021年から現職に就きました。

 

―Outbrain Japanの設立から10周年を迎えました。

 

益田氏:日本市場において、しかも外資で10年にわたり事業を継続しているアドテク企業は、実はそう多くないのではないかと思います。これもひとえに関係者の皆様のおかげです。

 

日本法人の立ち上げ当初はまだレコメンドウィジェットの存在そのものやアルゴリズムで広告配信を自動最適化するという手法自体が十分に認知されていなかったため、日本の広告関係者の方々からの理解を得ることを目的として、当社の事業内容や取り組みをできる限り丁寧かつ詳しく説明することに多くの時間を割いていたと聞いています。

 

やがて、その他のレコメンド事業者が続々と市場参入し、コンテンツマーケティングという言葉が普及してしばらく経った2020年、コロナ禍に突入しました。オンライン広告市場の黎明期には、パブリッシャーはコンテンツを充実させればページ閲覧数が増えるとともに広告売上が伸びていましたが、パブリッシャー間の競争が激化し、国内人口が頭打ちとなった現在では状況は異なります。コンテンツのレコメンド機能を通じて、ウェブサイトの回遊率を高めると同時に広告収益を向上させる当社のテクノロジーの役割と責任はより大きくなってきていると思います。

 

ジェネラルマネージャー 益田氏

 

他のアドテク企業との最大の違い

 

―確かにレコメンドウィジェット自体が独特の事業形態とも言えますね。

 

益田氏:他のアドテク企業形態にはない最大の特徴として、広告収益の最大化だけではなく、記事コンテンツの紹介を主な機能として持っているということが挙げられます。そういった特徴から、弊社は広告効果や売上だけでなく、ユーザー体験の向上に対する意識が非常に強いです。

 

私自身はこれまで複数のアドテク企業での勤務を経験してきましたが、当時は広告主の要望に耳を傾けることに精一杯で、正直なところ、ユーザーの存在を意識することは少なかったと後悔しています。当社のようにパブリッシャー、広告主、そしてユーザーという「三方良し」のバランスを維持しようとしているアドテク企業はかなり珍しいのではないでしょうか。

 

ちなみにグローバル展開を行うアドテク企業の日本法人の責任者はデマンド側または外部から招聘されることが一般的ですが、私のようにサプライ側の出身者が内部昇格して責任者となるというのも当社ならではと思います。

 

大川氏:一般的なアドネットワークであれば広告収益が最大の関心事となりますが、レコメンドウィジェットが解決すべき課題は多岐に渡ります。パブリッシャーのご担当者が複数の職務を兼任していることが多く、「回遊率をどれだけ向上させたいのか」「タイアップ記事にどれほど送客できるのか」「一日当たり何本の記事をどのタイミングで公開すれば目標のPVに到達できるのか」といった様々な課題を同時に抱えている場合が多くあるのです。それらの課題をよく聞き分けた上で、それぞれどのような解決策があるかをきちんと整理するということが、経験を積み重ねるうちに少しずつできるようになってきました。

 

また前職では、広告収益が高ければ途端に取引が増え、そうでなければ契約を打ち切られてしまうということが多々ありましたが、Outbrainにおいては複合的な取り組みをご一緒させていただくため、パブリッシャーとのお付き合いは長期に渡ることが多いです。よってご担当者のお人柄や業務範囲などを踏まえた上で、課題解決を提案していくという点にやりがいを感じています。

 

佐藤氏:また近年では「バナー広告をありとあらゆる場所に貼りつける」といったページ構成はパブリッシャーからもユーザーからも敬遠され、ユーザビリティと収益のバランスを取ることが求められるようになっています。創業時からその両立を志向してきた当社には、自信を持ってご紹介できるテクノロジーとノウハウが蓄積されていると思います。

 

―サードパーティCookieの利用制限を受けて、コンテクスチュアルターゲティングを手掛ける事業者が急増したとの印象があります。

 

益田氏:当社のテクノロジーは、ユーザーが閲覧する記事を基に興味・関心を把握するCookieレスなソリューションであり、性別や年収といった属性情報は収集していません。マーケティングの目的や対象に応じてそうした属性情報も有用である一方で、性別や年齢を用いてもそれだけでユーザーごとの傾向を導き出すことが難しい時代になってきていると感じています。

 

当社は、属性情報に依拠せずに、「こうした記事コンテンツを読む人は、次にこのような記事や広告を読む」ということを示すデータを日本で10年、海外を含めると15年以上にわたり蓄積してきました。これだけの豊富なデータを有していることが、アドプラットフォームとしての差別化要因の一つとなっています。

 

大川氏:パブリッシャーからは、広告の安全性や信憑性に関するお問い合わせなども多くいただきます。専任の広告審査チームを設置しているだけでなく、薬事法に特化した外部の審査機関にも委託することで広告の品質を担保しているというのも当社ならではの特徴です。

 

ただし、当然ながら、パブリッシャーによって広告の審査基準は異なります。各パブリッシャー、メディアが何を重視しているかをきちんと汲み取り、広告の収益性と安全性の両方を実現するためのお手伝いをするというのも重要な任務です。

 

シニアアカウントマネージャー:大川氏

 

アカウントマネージャー:佐藤氏

 

海外関連部署を説得するコツ

 

―グローバル企業である貴社では、国際的なコミュニケーションが日々行われているのではないかと想像します。

 

益田氏:以前は日本で発生する案件のほとんどを日本法人による対応だけで完結させていましたが、最近ではグローバルチームとの関わりが増えてきました。東京オフィスには約40名のメンバーが在籍していますが、そのうち半分は海外のチームに所属しています。

 

私たちが日々の相談や報告を行うメンバーは、本社のあるニューヨーク、ミュンヘン、ロンドン、ミラノ、そしてイスラエルなど世界中に散らばっており、非常に多国籍です。英語を流暢に話さないメンバーに対して冷たい外資系企業もありますが、当社はグローバルメンバーを含めても第二言語として英語を話す者も多く、異文化に対してかなり寛容であると実感しています。

 

佐藤氏:日本法人のメンバーもいわゆる外資系的な冷たい感じは全くなく、お互い助け合うという雰囲気がとても強いと思います。

 

大川氏:日本のパブリッシャーからのご要望を受けて、当社プラットフォームの機能を改善する必要が生じた場合には、それぞれの専門性を持つ海外のメンバーに相談することになります。ただ、そうした部署には世界中から要望が寄せられるので、優先順位を上げて対応してもらうよう、うまく説明しなければなりません。

 

この点において、提携するパブリッシャー数が多い日本市場は有利です。ただし、各社の要望をばらばらに伝えても説得力が弱いので、日本チームで集約した上で、「こうした機能改善を行えば、これだけ多くのパブリッシャーが恩恵を被り、ひいては当社全体の事業にも良い影響を与える」という説得を行うなど、工夫しています。

 

益田氏:確かにグローバルチームに対して、日本チームからの要望が通りやすいというのも当社の特徴かもしれませんね。

 

―海外チームとは、やはり英語でコミュニケーションを取るのでしょうか。

 

佐藤氏:日々の業務の中で英語を使う機会は多いです。ただし、最近では翻訳機能を提供するオンラインツールが充実しており、また会社のサポート制度として週1回の頻度で英語のグループレッスンを実施しているので、入社前から必ずしも高い英語力を持っていることが求められるわけではありません。それよりも、ただでさえ込み入った内容となりがちな顧客の要望を整理し、立場や商慣習が異なるグローバルチームに対して、背景まで丁寧に説明する姿勢が必要になります。

 

大川氏:確かに背景の説明では齟齬が生じやすいですね。何気ない日常会話であればある程度は話すことができるけれども、英語を使って、詳細にまで踏み込んで論理的に説明する能力を高めたいという人には非常に良い職場環境だと言えます。

 

パブリッシャーの包括的支援に向けて機能を強化

 

―日本法人内のメンバー同士の交流はどれほどあるのでしょうか。

 

佐藤氏:私たちのチームは、どちらかと言うとあまりベタベタせず、お互いのプライベートを尊重しているように思います。ただし、業務上で発生した課題や問題は皆で協力して解決するという文化は強いかなと思います。基本的には中途採用のみで構成されていることもあり、各自が一定の裁量権を持っていますが、困ったときや悩んだときには、すぐに必要なメンバーが集まって一緒に解決策を考えてくれます。

 

大川氏:当社が提供しているサービスは、レコメンドウィジェットをはじめとし、いくつかのプロダクトに帰着します。誰かが休みを取ったとしても、別のメンバーが代わって顧客対応を行いやすい業務形態であるため、メンバー同士で情報を共有化して助け合おうという機運が高まりやすいのかもしれません。

 

 

―日本のパブリッシャー向けに今後どのような取り組みを進めていく予定ですか。

 

大川氏:コロナ禍での混乱からの脱却に向けて、パブリッシャーの収益安定化を支援していくことが何よりも重要になると考えています。

 

益田氏:AIやテクノロジーを通じて、メディア、ユーザー、広告主を結びつけるという当社の役割は依然として変わりません。ただし、これまで積極的にご案内していた「記事読了後のレコメンドウィジェット」に加えて、パブリッシャーをより包括的に支援するためのソリューションをリリースしております。

 

例えば、今ではひとつのウェブサイト内に「無料コンテンツ」「有料会員のみ閲覧できるコンテンツ」「EC枠」「広告枠」といった異なる部門が運営する要素が詰まっていることが一般的になりつつあります。これらの異なる枠自体を、ユーザーの興味・関心などに応じてダイナミックに出し分けていく「Keystone by Outbrain™」(以下、Keystone)というソリューションで、既に国内でも導入を開始しています 。つまり、これまでOutbrainがレコメンドする対象は記事コンテンツと広告だけでしたが、Keystoneをご利用いただくことで、今後はパブリッシャー様が扱うすべてのコンテンツをレコメンドすることが可能になり、結果として多様なビジネスコンテンツの中で、パブリッシャー全体の収益を改善し、最適化することが可能になるというプロダクトです。

 

またグローバル全体で、これまで例えば最上部と右端などに固定していた広告枠を、ユーザーの特性やタイミングに応じて、ダイナミックに配置するソリューションであるSmartlogicの拡大も引き続き推進しております。

 

さらにこれまでは画像+テキストのネイティブフォーマットを強みとしてきましたが、今後は動画広告フォーマットの種類を増やすことに加えて、動画コンテンツのレコメンドを強化していく予定です。

 

こうした一連のソリューションとサービスの提供を通じて、日本のパブリッシャーの収益改善、ひいては、サスティナブルなジャーナリズム環境をご支援していきたいと考えています。

 

Outbrain Japan株式会社
https://www.outbrain.com/jp/
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ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。