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APAC地域での拡大を加速:博報堂とDAC、APACにおける戦略ネットワーク「H+」 [インタビュー]

成長著しいAPAC(アジア太平洋)地域において、株式会社博報堂とデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)がデジタル領域での取り組みを強化・拡大している。

タイを拠点にグローバルビジネスを推進するH+(エイチプラス)の統括責任者、菅沼道彦氏と宮部裕介氏にAPAC地域での事業戦略について話を聞いた。

(Sponsored by H+)

 

―H+設立の背景を教えて頂けますでしょうか。

菅沼氏:「H+」は博報堂とDAC両社横断の戦略ネットワークとして2022年に発足しました。APAC地域の博報堂DYグループ各社を率い、APACにおけるクライアント企業のマーケティングDXやメディアDXを推進しています。

 

博報堂DYグループにおいてデジタル領域を担ってきたDACは2005年より海外展開に力をいれています。中華圏からASEAN圏、韓国まで今では総勢1000人以上の海外人材を抱え事業を展開しております。日本におけるノウハウを存分に発揮できるようAPAC圏への展開に力を入れており、そのために国内にもグローバル人材を多く抱え、組織化して海外拠点を支援しています。博報堂と強固に連携することでよりAPAC事業を拡大し、市場成長の波についていけるよう日々務めております。

私はH+立ち上げ時より事業成長と変革を加速させるためにタイに移り活動に専念しております。

 

 

 

菅沼道彦氏
DAC上席執行役員グローバルビジネス本部長、博報堂およびHakuhodo International UnitアジアDX戦略局長を担う。DAC入社以来数多くの事業開発に携わりグローバル事業を牽引。

 

 

 

 

 

 

 

宮部氏:私も菅沼と同じタイミングでタイを拠点に活動しております。今回2度目の赴任で、合計8年タイに住んでおり、ASEANを第二の故郷だと思っています。

博報堂は1973年にマレーシアに進出して以来、2023年で海外事業50周年を迎えました。博報堂は近年、多くのデジタル会社を買収し拡大を進めています。例えばタイのWinterEgency、マレーシアのKindomDigitalなどデジタル領域に特化した会社をグループに迎え入れております。博報堂のブランドエージェンシーも急速にデジタル対応を進めており、DACと連携することによって、クリエイティブとメディアの両輪で新たな顧客体験を作っていくためのデジタル業務サポートを一気通貫でクライアントに提供できる体制を構築してきています。

H+のロゴに込めたのは、「H」は博報堂のフィロソフィーである生活者発想(Human Centered)を核に、生活者を消費者としてだけでなく、「個」として理解し、生活者視点に立つことで、潜在的な需要である「+」を掘り起こし、常に変化を続ける多面的なライフスタイルに合わせ、新たな嗜好や行動を促すブランド体験を創造することを追求しています。(Credo: INSIGHTOUT®)

現在、H+のサービスはタイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア、シンガポール、フィリピン、韓国、台湾、香港、中国などの地域で展開しています。また、各国のグループ会社と連携し、地域ごとのビジネス開発を進めています。

各国でデジタルマーケティングのグローバル展開を課題とする企業が増加しており、国を横断したアプローチを強化しています。

博報堂DYグループは、各国の文化を理解・尊重し、その国に最適なソリューションを提供できる強みを持っています。また、グループ内で国を超えた緊密な連携が取れていることも大きな強みです。

 

 

宮部裕介氏
博報堂グローバルマーケティングDX推進局 局長代理、DACグローバルビジネス本部シニアディレクターを担う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―H+の提供サービスを教えてください。またローカルプレイヤーとのアライアンスを進められているようですが概要を教えてください。

菅沼氏:H+では博報堂、DAC、APACの博報堂DYグループ企業各社が”ひとつながり”のチームとして、「生活者発想」を軸に、フルファネルデータドリブンマーケティングを提供し、クライアント企業のDX化を総合的に支援します。日本国内で培ったナレッジやテクノロジーも活用し、各国の対応力を一層高め、APACで事業拡大を図る企業のマーケティング・メディアDXを推進しています。

注力領域は、デジタル広告、オウンドメディア、コマース、CRMの4領域です。H+のロゴが4色で表現されているのも、これら4領域毎のサービス、そして、4領域をシームレスに横断することで新たに生まれる顧客体験を創出し、包括的にクライアントのDXを支援したいとの想いからです。

グローバルプラットフォーマーであるGoogle、Meta、TikTok、LINEなどの先進プロダクトの経験やノウハウをAPACで活用し、その中で特に力を入れているのがデータクリーンルームやポストクッキーソリューションです。

また、グローバルに活用できる地場のソリューションサービスプロバイダーとの連携も積極的に進めています。DACでは、2012年にASEANの総合デジタルマーケティング企業であるInnityを関連会社化したことを始めとし、最近ではAPAC大手データマーケティングプラットフォームAntsomiと戦略的資本提携を発表し、CDPと各種マーケティングソリューションを掛け合わせた統合サービスを共同提供しています。更に、大手ECイネイブラーGraaSとの戦略的資本業務提携など、サービス拡大・強化に取り組んでいます。

日本国内においても、クロスボーダーなデジタルマーケティングを手掛けてきたインフォキュービック・ジャパンを完全子会社化し、日本と海外拠点のパイプ役としてグローバル事業の強化を図っています。

APACにはスタートアップ含めて多くの有力な企業が存在します。戦略提携、出資等も含めアライアンスを強化しつつ、特にCDPベンダーを中心としたデータパートナーとの連携を進め、日本で実施しているデータマーケティングをAPACに浸透させるべく日々活動しています。

オフショアの体制としても、ソリューションの導入や実装、開発を行うべくDACのベトナムの開発拠点を通じて持続的に成長できるような体制を整えています。150名を超えるエンジニアが在籍しており、DACのプロダクト開発や導入支援を行っています。

今後も、博報堂DYグループ内外問わず、様々な企業とネットワーク化し、この4領域+CDPにかかわるソリューション開発の強化に取り組んでいきます。

 

―最新のAPAC市場の状況を教えてください。

宮部氏:APAC市場は非常に成長しています。APAC地域の広告市場全体の成長率は8.5%で、これは世界平均の5.8%を上回ります。その成長を支えるのはデジタル広告で、前年比13.2%とこちらも世界平均9.5%を大きく上回る伸び率です。世界の広告費のうち約3分の1強がAPAC地域で使われており、こうした好成長は世界市場をけん引するものと言えるでしょう。

人口やGDP規模の観点でも成長が著しく、特にEコマースに関しては、2020年以降APACほど急成長している地域は他にありません。APAC地域におけるEコマースの総売上は2019年時点で約373億米ドルでしたが、2023年は約1,361億米ドルを見込んでいます。世界全体の成長率が8.9%にとどまるのに比べ、APACでは18.6%の成長を見込んでおり、3年連続で世界最速の成長率を記録しています。

また博報堂は生活者の理解とマーケティングの精度を上げるために、博報堂生活総合研究所アセアン(シンクタンク)を有しており、生活者の意識・行動に関する研究を通じ、アセアンにおける企業のマーケティング活動を支援しております。

直近はビッグデータを軸に生活者をあらゆる側面で捉えるべく調査、検証をしながらマーケティング活用の様々な手法を試みています。

 

―今後のH+の活動について教えてください。

菅沼氏:H+発足に伴い、APACでの DX人材の採用を積極的に行っています。企業のDXを推進するためのマーケティング、メディア、クリエイティブ、テクノロジー、データマネジメントといった領域における人材確保を加速し、DX対応のケイパビリティのさらなる向上を図っていきたいと思っています。

またAPACマーケットに精通する強力な人材をH+に迎え入れております。直近では元OMD APACの代表を務めていたStephen Li氏、Comscore社のAPAC代表を務めていたJoe Nguyen氏、また8月よりブランドテック・グループで55のAPAC代表を務めていたBen Poole氏を迎え入れております。彼らの経験を導入することで、点を面で捉えるリージョナルビジネスの強化を図っています。

 

 

博報堂DYグループはH+を通じて、グローバル企業のDXへの挑戦をグループ一体でサポートし、グローバル視点での企業と生活者の新たな絆づくりに貢献してまいります。これからのH+の活動にご期待ください。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。