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新生CARTA MARKETING FIRMによる経営統合の意義とは [インタビュー]

デジタルマーケティング関連事業だけでも十数社を傘下に収める持株会社のCARTA HOLDINGSが、主要子会社4社の経営統合を果たした。その狙いは何か。日本のオンライン広告市場に対してどのような影響を与え得るのか。新会社の代表取締役に就任した西園氏に話を聞いた。(聞き手:ExchangeWire JAPAN 長野 雅俊)

 

特徴的な個性を持つ4社が統合

 

―自己紹介をお願いします。

 

株式会社CARTA HOLDINGS 上級執行役員を務める西園正志と申します。これまでCARTA HOLDINGS傘下のfluctやZucksなどのオンライン広告プラットフォームを統括する職務に携わってきました。10月1日より、新しく生まれた株式会社CARTA MARKETING FIRM 代表取締役を兼任しています。

 

―CARTA MARKETING FIRMの概要をお聞かせいただけますでしょうか。

 

CARTA HOLDINGSの連結子会社となるZucks、ATRAC、PORTO、CARTA AGEの4社を統合した新会社です。2023年10月1日を効力発生日として、Zucksを存続会社とした上で、残る3社を吸収合併しました。本経営統合を通じて各企業が持つサービスやプロダクトを結集させることで、クライアントのあらゆるマーケティング課題を解決していきたいと考えています。

 

―経営統合するに至った一番の理由は何ですか。

 

この度統合する4社は、デジタルマーケティング事業という共通項は持っていたものの、具体的なサービスやソリューションにおいてはそれぞれ互いに異なる特徴を持っていました。

 

例えば共に広告代理事業を営んでいながらも、ATRACはオンオフ統合施策にその強みを発揮してきた一方で、CARTA AGEはパフォーマンス・マーケティング特化型です。また動画広告やオーディオ広告を始めとしたブランド広告主様向けの広告プラットフォームを運営するPORTOや、国内最大級のスマートフォンアドネットワークであるZucksは、自社プロダクトの提供を通じて、媒体社様向き合いの事業も営んでいます。

 

資料提供:CARTA MARKETING FIRM

 

これまで各社が各領域における専門性を追求してきたものの、一社単位で解決し得る課題の範囲が限定されていたことも事実です。それぞれ特徴的な個性を持つ4社を統合することで、統合的なアプローチを可能とし、クライアントのあらゆる要望に適切に対応できる体制を構築しました。

 

マーケティング解決力を融合

 

―経営統合することで、顧客への対応のあり方も変わるのでしょうか。

 

例えばフルファネルのマーケティング施策を展開する広告主様に対して、テレビCMなどのブランディング施策とオンライン広告におけるCPA改善などのパフォーマンス施策をそれぞれ個別にご提案していた事例がありました。広告主様からの観点から言えば、マーケティング施策全体を設計する上で、CARTA HOLDINGS内の2社または別の広告会社とそれぞれ別途打ち合わせを持たなければいけなかったという状況だったと思います。

 

 

この度の経営統合によって、ワンストップでの対応ができるようになりました。既にかつて別会社だった子会社の担当者同士が一緒になって広告主様の事務所にお伺いし、総合的なご提案を行う取り組みを開始しています。統合前からお付き合いのある広告主様からも好意的な反応が多く、一定の手ごたえを感じています。

 

他にも経営管理や業務管理のあり方など様々に変化していく必要があるかと思いますが、いずれにしてもこれまで別々だった4社が「同じ企業として一致協力してクライアントの課題解決に努めていく」ことができるようになったという点が大きな違いだと思います。

 

―新会社が取り扱う広告プロダクトの中で最も伸び代が大きいものは何だと思いますか。

 

放送局の見逃しコンテンツを中心としたプレミアムな動画広告の需要はまだまだ伸びていくはずです。今後はマスメディアとのオンオフ統合もますます進んでいくことが見込まれています。

 

またEC・アプリ領域のパフォーマンス・マーケティングもさらなる発展の余地が残されており、さらに電通グループの一員として、電通本社とのパートナーシップも引き続き大切にしていきたいと考えています。

 

こうした一連の取り組みを通じて、新会社全体としては、国内のデジタルマーケティング市場の成長率を上回る成長を実現していきたいです。

 

自社プロダクトによる媒体社支援にも注力継続

 

―経営統合を通じて総合的な支援を行うことができる体制が整った一方で、他の大手広告会社との差別化が難しくなったのではないでしょうか。

 

他の広告代理店との差別化ポイントとしては、やはり自社エンジニア組織のテクノロジーを活かしたプロダクトを備えているという点が大きいです。PORTOやZucksではSSPやアドネットワーク連携などを通じて、媒体社様の収益化支援も行っています。その意味で、広告主様に対して効率的かつ総合的なマーケティング支援を提供するだけでなく、国内のオープンインターネット広告市場のエコシステムを支えるための取り組みにも引き続き注力していきたいと思います。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。