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PubMaticが先取りを企図する日本のコネクテッドテレビ広告市場の課題解決法とは[インタビュー]

独立系テクノロジー企業であるPubMaticが、コネクテッドテレビ及びOTTに特化した広告配信プラットフォームを立ち上げた。SSPとして創業した同社が、放送局と広告代理店とを直接的に結ぶ枠組みの構築にこだわったのはなぜなのか。日本におけるコネクテッドテレビ広告市場の課題や展望と併せて話を聞いた。

(Sponsored by PubMatic)

 

コネクテッドテレビ広告の最新状況

 

―自己紹介をお願いします。

 

PubMaticのチーフ・グロース・オフィサーとして、グローバル市場における事業提携や経営企画に関する取り組みを管掌するポーリーナ・クリメンコと申します。e-bay、AOL、PayPalなどで同様の業務の責任者を務めた後、2011年より現職に就きました。現在はとりわけコネクテッドテレビ広告に関連した取り組みを強化している最中です。

 

―コネクテッドテレビ広告市場に対する見解をお聞かせください。

 

ご存じの通り、地上波(リニア)テレビから動画配信サービスストリーミングへと移行する視聴者が増加しています。とりわけAVOD(Advertising Video On Demand)と呼ばれる広告付きの無料配信形態の成長が著しいです。当然のことながら、広告主は消費者の関心が集まるメディアに投資するので、広告予算もテレビから動画配信プラットフォームへと移行しつつあります。

 

動画配信プラットフォームとの広告取引が活発化そして複雑化すると、広告主や広告代理店は一つひとつの媒体ごとに広告契約を交わすことが現実的に難しくなってきます。非効率ですし、フリークエンシーキャップや広告の最適化といった取り組みを横断的に行うことができません。そこで動画広告におけるプログラマティック取引への移行が進行中です。

 

―こうした環境変化に貴社はいかに対応していますか。

 

動画配信プラットフォーム上で視聴される動画広告専用のソリューションとなるActivateを立ち上げました。本ソリューションを介して広告代理店と放送局または動画配信プラットフォームを直接的に結び付けることで、動画広告配信に関する作業効率化、手数料の軽減、データ活用、アルゴリズム適用を可能にする環境を整備しています。

 

Activateは米国及び欧州市場では2023年5月、日本以外のアジア太平洋市場では同10月より先行して運用を開始しています。データセンターを始めとするインフラ整備にやや時間がかかった日本市場では、2024年2月に正式にローンチしました。

 

未来を先取りしたテクノロジー

 

―Activateの具体的な機能を教えてください。

 

まずは業務効率化です。これまで広告代理店は相当な手間暇をかけて動画広告の配信設定を行ってきました。複数のDSPやDMPと契約を交わし、それぞれわざわざログインした上で各種の設定作業やデータ処理などを行い、一箇所で障害が発生したらその場でのトラブル対応に加えてその接続先でも調整業務を行って、といった具合にとにかく忙しなく手を動かしていたのです。

 

 

統合的な基盤となるActivateにデータを集約すれば、キャンペーンの計画・実施、トラブルシューティング、最適化をワンストップで実現できるようになります。またActivateには計測機能が内蔵されているので、媒体をまたいだ横断的なフリークエンシーキャップ設定やアトリビューション計測が可能です。

 

さらにサードパーティのデータ事業者が提供するデータを広告在庫に適用することで、新たな広告商品を開発することもできます。

 

―Activateは他のDSPやSSPとは接続していないのですね。

 

はい。広告代理店と放送局または動画配信プラットフォームと直接的に接続するこの仕組みにより、広告代理店は手数料を節減することができます。

 

さらに広告取引の過程に中間事業者が多くいるとそれだけデータ転送する機会が増えるので、遅延が発生しやすくなります。動画広告にとっては致命的です。広告代理店と動画配信プラットフォームを直接的に結ぶActivateであれば、遅延のリスクを低減できます。

 

―貴社のようにSSPとして創業した事業者がデマンドサイドと直接的に提携するという意味において、Activateは一種のサプライパス最適化(SPO)に相当する取り組みとして捉えていいのでしょうか。

 

はい。動画広告専用のSPOツールと理解していただいて良いと思います。DSPはこれまでと同様にオンライン広告業界のエコシステムにおいて重要な役割を担い続けることは間違いないですし、ディスプレイ広告やアプリ広告などにおいては引き続き当社の重要なパートナーです。ただし、コネクテッドテレビなどへ配信される動画広告に関しては、Activateの開発と併せて、従来とは異なる独自の取引形態を提案させていただいています。

 

―Activateの導入事例をお聞かせください。

 

2023年5月の立ち上げ以来、電通グローバル、電通APAC、Havas Media Group、Group Mといったグローバル企業に加えて、インドのKINESSO Indiaや韓国のWishmedia、さらにはfubo TVや中国のiQIYIなど広告代理店と放送局または動画配信プラットフォームの双方での導入が進んでいます。Activateの活用を通じて、ユーザー獲得効率が20%向上したとの成功事例も出ています。

 

日本市場では朝日放送テレビ、関西テレビ放送、 DAZN Japan、TBSテレビ、テレビ朝日、テレビ大阪、テレビ東京、日本テレビ放送網、フジテレビジョン、毎日放送、読売テレビ放送といった主要放送局様に既に導入いただいています。

 

―日本市場に対する印象をお聞かせください。

 

コネクテッドテレビ広告に関して言えば、世界的なトレンドから1年~1年半程度遅れているように感じます。コネクテッドテレビ広告の広告在庫はいまだ限定的です。また多くの放送局ではファーストパーティデータが未整備であるため、コネクテッドテレビ広告におけるオーディエンスターゲティングがほとんど実現できていません。

 

ただし、日本市場においてコネクテッドテレビ広告在庫が今後急増していくことはほぼ確実です。Activateは、まだ成熟していない日本のコネクテッドテレビ広告市場に、データ取引の標準化をもたらします。つまり、ターゲティングに必要な様々な情報を伝えるための規格として、放送局と広告代理店の間で機能する共通言語を構築しようとしています。

 

Activateは日本市場に今後到来すべきトレンドを先取りしたプロダクトと言ってもいいでしょう。現段階では希少な広告在庫の価値をさらに高めるためのツールとして用いながら、来るべき未来に向けた準備へと役立てていただけたらと願っています。

 

―PubMaticの日本法人は今年で10周年を迎えました。

 

2014年の日本法人立ち上げ時からずっと見守ってきた市場なので個人的にも感慨深いです。120以上のプレミアム・パブリッシャーとの連携を通じて、2023年だけで7兆回以上の広告表示を取り扱い、この数字は2015年の643倍となります。

 

日本は世界有数の経済大国でありながら、eMarketerによると広告費全体にデジタル広告が占める割合は43%に留まります。米国や欧州では8割近くを占めることを鑑みると、まだまだ伸びしろがあるはずです。今後10年にわたり、さらなる事業拡大を図りたいと考えています。

 

―今後の注力領域についてお聞かせください。

 

既にお伝えしたコネクテッドテレビ広告に加えて、市場における市場にけるコマースメディアの強化や拡大にも取り組んでいく計画です。現状ではEC、旅行サイト、フードデリバリーといった分野ごとだけでなく各事業者が乱立しており、アドネットワークとしては機能していません。そこで当社は2023年7月にコマースメディア向けの統合セルフサービス広告プラットフォーム「Convert」を発表しました。このConvertを通じて、いわゆるリテールメディアへの広告配信環境を整備していきたいと思います。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。