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ジオロジックが、スマートニュースと歩む道

ジオロジックは、2021年10月よりスマートニュースの完全子会社となり、この度ファーストパーティーデータによる広告配信を開始したことを公表した。また、スマートニュースに対して位置情報広告システムを提供し、「SmartNews Hyper Local Ads」(スマートニュース・ハイパー・ローカル・アズ)も販売を開始した。

これまでの経緯と今後の取り組みについて、同社代表取締役社長 野口航氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

 

-ジオロジックは、なぜスマートニュースに参画したのでしょうか。ジオロジックの子会社化へ向けた協議はいつごろからおこなわれていたのでしょうか。また、発表が2年後であるのはどのような事情からなのでしょうか。

2020年頃からの世界的なプライバシー保護への動きによって、ネット広告はファーストパーティデータによるターゲティングの時代になる流れが決定的となりました。その新世界にいち早く対応するため、2020年末にはジオロジックは動いていました。外部企業であるDSPとして広告枠をメディア横断的に買い付けるのではなく、自社で広告プラットフォームを持つ企業の中に入って、ファーストパーティーデータを使った純広告のターゲティングを支援する戦略への切り替えです。IDFAやAAIDを利用しない、プライバシーフレンドリーな位置情報ターゲティングを提供していきます。

ファーストパーティーデータと流行語のように言ったとしても、位置情報ターゲティングは今いる場所や過去に訪問した場所などをもとにターゲットユーザーをぐっと絞り込むため、相当大規模なインプレッション数を持つメディアでなければ現実的な配信に耐えられる広告メニューは組成できません。SmartNewsは日本有数のアプリユーザー数や滞在時間を誇るだけでなく、位置情報データなどのファーストパーティーデータ、広告ビジネス規模、アドテクスタックを自社開発しているなどの点で間違いなく最高のパートナーでありましたし、2年間経った今でもその認識は間違っていなかったと確信しています。

2021年10月に100%子会社になって以来、私たちは共同でプロダクトの開発を進めていました。具体的なプロダクトとともにスマートニュースへの参画をお伝えしたく、プロダクト提供のタイミングで開示をすることを決めていました。2022年5月からはGeoLogicはDSPの一社としてSmartNewsアプリを配信面として少しだけ配信していましたが、そのタイミングではまだ限定的な取り組みだったため、広く一般に情報発信しておりませんでした。今回、自信を持って世に出せるプロダクトに仕上がり、「SmartNews Ads」ブランドとして販売を開始することを発表させていただきました。

 

-それぞれ、どのような補完的な関係となったのでしょうか。貴社および、スマートニュース社の広告ビジネスの現状と合わせてお聞かせください。

広告メディアと高度なターゲティング機能という補完関係がひとつです。言い方を変えると、広告プラットフォーマーとアドテクベンダーを一体化します。GeoLogicの位置情報ターゲティング機能をSmartNews Adsのラインナップのひとつとして組み込みます。世界的にネット広告業界ではウォールドガーデン化が進んでいますが、スケールの問題があるため位置情報ターゲティングを提供し続けられるのはほんの一握りの超大手メディアのみとなるはずです。位置情報広告の希少価値は今後高まると読んでいます。

もうひとつの補完関係は、顧客層や販売チャネルです。GeoLogicは店舗などのローカル企業の広告主に、地域密着型の代理店を通じて販売することに強みを持っていました。一方で、スマートニュースはそれらの顧客への営業、販売に課題を持っていました。これまではお互いが提案できなかった案件に対して、適切なメニューを提案できるようになるはずです。

 

-今回リリースしたプロダクトについてお聞かせください。

1つ目は、スマートニュースが販売する「SmartNews Hyper Local Ads」の新規リリースです。SmartNews面だけに絞って位置情報広告を配信できます。将来的にはSmartNews Adsのシステムと完全統合し、ユーザーがSmartNews Adsの管理画面から出稿することも検討したいと思います。

2つ目は、GeoLogicが販売する「GeoLogic Ad」のグレードアップです。従来通りDSP形態でSmartNews以外のメディアにもネットワーク的に配信するものですが、SmartNewsとの接続システムを刷新し、さらにIDFAに依存しないファーストパーティーデータを利用することで、配信量が桁違いに増えます。これまでのGeoLogic Adはバナーや動画広告が中心でしたが、SmartNewsでの中心的フォーマットであるインフィード広告へのシフトも進めています。先日、GPT-4を使ってテキストクリエイティブを自動生成したり、アマナイメージズの高品質写真を簡単に取得して利用できる「AIクリエイティブ工房」をリリースしたのも、インフィード広告へのシフトを促すためです。インフィード広告はSmartNews以外のメディアではMicrosoftのOfficeやOutlookなどのプレミアムなアプリ上での配信が多く、一般的にカジュアルゲーム面やポイントアプリ面での配信の多いモバイルアプリ系DSPとは配信面が大きく異なります。

 

-今後、ジオロジックは、スマートニュース社とどのようなビジネスやプロダクトを生み出していくのでしょうか。

ジオロジックは2014年の創業からずっと、ほぼ位置情報広告の専業でやってきました。GeoLogicは”デジタルなオリコミ広告”として、ネット広告に馴染みのない方でも簡単に設定できる管理画面や少額予算から出稿できるといったローカル店舗に必要とされる機能を追求してきました。2013年頃に位置情報広告ベンダーが勃興しましたが、その多くはブランド予算をターゲットにしていました。大半のベンダーが実質的に撤退した中、GeoLogicが位置情報広告で6,000社の広告主に利用され、売上を拡大できたのは、ローカルの店舗向けの機能開発を徹底してきたからだと考えています。

ここまでが私たちの歴史でしたが、今後についてです。位置情報広告出稿の目的は、大きく2つに分かれます。店舗へお客さんを連れてくる「集客」と、メーカーが小売店での商品売上を増やすための「販促」です。これまでのGeoLogicは集客に特化していました。今後はスマートニュースの資産と組み合わせることで、メーカーによる販促領域へもいよいよ踏み出すことができます。

たとえば、位置情報に基づいてコンビニの近くにいる人にドリンクやお菓子などのクーポン付き広告をSmartNews上で配信したり、ユーザーにポイント還元されるような仕組みも考えられます。SmartNewsは大手メーカーとのチャネルを持つだけでなく、多くのユーザーがクーポン利用の習慣を持ち、プッシュ通知やBeacon受信も受け入れているという素晴らしい土台を持っています。いちアドテクベンダーとしてのジオロジックでは到底できなかった店舗での購買を促すようなデジタル販促企画も、今後は手掛けていきたいです。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。