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「ゲーム上でしか出会えない消費者が確実に存在する」―ネスレとGumGumが切り拓くゲーム内広告のブランディング活用[インタビュー]

ゲーム会社が出稿する獲得型のリワード広告が席巻するゲーム内広告市場に、ブランド広告という名の新風が吹き始めている。ブランド広告主はなぜゲーム内広告に注目し始めたのか。そしてゲーム内広告はブランディング施策においていかに機能するのか。先進的な取り組みを行うネスレ日本社とGumGum社に話を聞いた。

(Sponsored by GumGum Japan)

 

ゲーム広告を選択肢としなければ機会ロスに

 

―自己紹介をお願いします。

 

小堺氏:ネスレ日本株式会社にて媒体統轄室マネジャーを務める小堺吉樹と申します。広告会社様と連携しながら最適なメディアプランを設計することが主な業務です。

 

テレビCMを通じた若年層へのリーチが難しくなってきたことに伴い、デジタルチャンネルを活用する機会が増えているのですが、広告プラットフォームによってユーザー体験は全く異なります。ユーザーの皆さまに広告をいかに受容していただけるかという観点を重視しつつ、それぞれのブランドが持つ課題やコミュニケーションの目的に応じて、メディアプランニングを行っていくことが求められています。

 

土居氏:コンテクスチュアル広告プラットフォームのGumGum Japanでセールスディレクターを務める土居博通です。ネスレ様には長らくお世話になっており、私を含むチーム体制を構築して対応させていただいています。

 

Junsoo氏:同じくGumGum Japanで広告オペレーション部署のマネージャーを務めるイ・ジュンスと申します。当社は自社プラットフォームを通じたフルマネージド広告運用業務とDSPを介したプログラマティック配信の双方を行っていますが、ネスレ様のゲーム内広告については後者の対応を行っています。

 

Yewon氏:GumGum Japanにてアカウントマネージャーを務めるチャン・イェウォンです。キャンペーンのスケジュール管理やクリエイティブ制作管理及びレポート作成などに従事するとともに、ゲーム内広告のプロジェクトマネージャーを兼任しています。

 

―ネスレ日本様がゲーム内広告を出稿するに至った経緯についてお聞かせください。

 

小堺氏:可処分時間の中でゲームは一定の割合を占めていることは認識しており、そこに対してどのようにアプローチするのが効果的なのかは社内で常に議論をしていました。ゲーム上でしか出会うことができない消費者は確実に存在します。

 

ゲームを通じたコミュニケーションを選択肢として外すことは機会ロスに繋がると考え、当社では、eスポーツへの協賛やゲームコンテンツとのタイアップなどにも取り組んできました。ゲーム配信者によるライブ配信中に当社製品をご紹介いただくという取組みでは、想定を超える数の視聴とコメントが寄せられ、、ユーザーの皆さまのエンゲージメントの高さを目の当たりにしました。

 

 

2023年秋に刷新した「ネスカフェ」の新コンセプト「Make your world」では、若年層に「ネスカフェ」を”自分のブランド”だと思ってもらうという点に重きを置いており、GumGumのゲーム内広告を活用できるのではないかと考えました。

 

従来のゲーム内広告とは一線を画す非侵入型

 

―GumGumが提供するゲーム内広告の概要をお聞かせください。

 

Junsoo氏: 2023年から開始したばかりのまだ比較的新しい広告プロダクトです。インタースティシャルやオーバーレイといった従来のゲーム内広告とは大きく異なり、ユーザー体験を妨げることなく、ゲーム画面の背景などにシームレスに溶け込む非侵入型の広告フォーマットを採用しています。クリック後のページ遷移は行わず、リアル空間の看板広告のような位置付けと捉えてもらってよいかと思います。

 

ゲーム内広告フォーマット例

資料提供:GumGum Japan

 

ゲーム内の広告枠が何秒スクリーンに映ったか、スクリーンの何%を占めたか、などの厳格な条件を満たしたViewable Impressionに対してのみ課金する点も特徴的です。

 

Yewon氏:広告配信面となるゲーム媒体については、残虐なシーンやストーリーなどブランド毀損につながるような内容を含むゲームは当然のことながらネットワークから排除することでブランドセーフティを担保しています。

 

またGoogle Playの評価の平均が4.3以上であり、日本のApple Storeのランキングでも上位100位以内に位置するプレミアム媒体ばかりです。スポーツ、アクション、シミュレーション、レーシングなどのジャンルから約50媒体を網羅しております。

 

 

―本キャンペーンにおけるゲーム内広告の効果についてお聞かせください。

 

小堺氏:本キャンペーンは、若年層の方々に「ネスカフェ」というブランドを知ってもらう、親しみを持ってもらうことを目的としていましたが、ブランドリフト調査を通じて該当する態度変容があったことを確認できました。

 

 

異なるターゲティング設定を行っている他のデジタル広告媒体との比較は難しいのですが、ゲーム内広告という新たなチャンネルを開拓できた点はポジティブに捉えています。

 

―素朴な疑問として、ゲームに熱中しているユーザーは、ゲームの背景に映し出された広告に関心を向けるのでしょうか。

 

小堺氏:今回のキャンペーンでは、十分なブランドリフト効果を確認できました。一方で、どのような広告がどのように機能するかをより詳細に把握するためには、他の広告と同様に、継続的にブランドリフト調査を行うなどして検証していくべきでしょう。

 

Yewon氏:本プロダクトにおいては、ユーザーが広告を目にしていることを示唆するいくつかの厳格な指標を満たした際のみ発生するビューアブルインプレッション課金を行っています。当社としては、この枠組みを通じて、広告効果を証明していきたいと考えています。

 

土居氏:過去にはリアルなプロ野球の球場内に設置された看板とゲーム内のデジタル看板でどちらが消費者の印象に残ったかを比較する調査が実施されており、プロ野球中継の看板が表示される回数や時間がより多かったものの、ゲーム内広告の方が記憶には残ったとする結果が出ています。ゲーム内広告のアテンション計測の実証実験も実施されており、近い将来にアテンション指標に基づく最適化も実現したいと考えています。

 

 

より高度なPDCAの実現に注力

 

―ゲーム内広告を通じたブランディングキャンペーンは日本市場ではかなり先進的な取り組みではないでしょうか。

 

小堺氏:ゲームはもはや特定の趣味ではなく、他のメディアと同じく日常生活に溶け込んでいると思います。事例に乏しいからといってチャレンジしないのではなく、むしろ積極的に消費者との新たな接点を模索することが企業やブランドにとって必要なのではないでしょうか。

 

Yewon氏:当社のネットワークだけでも数千万単位の広告在庫を保有しており、ユーザーの男女比は5:5です。ゲームユーザーはもはやニッチな存在ではありません。

 

Junsoo氏:ただし、ゲーム内広告に限らず、日本市場はややCPC・CPA至上主義であり、ブランディング施策全般に対する意識が低い傾向にあります。当社のゲーム内広告はそもそもクリック不可の仕様となっているので、CPC・CPA至上主義とはやや相容れない面はあるかもしれません。

 

 

広告代理店の皆様も日本市場の商慣習に則りながら日々の業務に忙殺され、新規のユニークな媒体や広告フォーマットにまでなかなか手が回らないという事情もあるかと思います。これらの課題も踏まえた上で、より良い広告配信環境を整備していきたいです。

 

―ゲーム内広告は今後いかに発展していくのでしょうか。

 

小堺氏:ゲーム市場は今後も拡大していくと考えているので、ゲーム内広告を掲載する際の選択肢の幅も、今後さらに広がることを期待しています。ネットワークが広がれば、自社のブランドと相性が良い配信面やユーザーが広告を受容しやすいモーメントを選別するなどして、より細かい粒度での広告最適化が実現できると考えています。

 

土居氏:媒体の選別は少しずつできるようになってきました。小堺様が仰るように、広告運用のPDCAを回せるように機能を強化するというのが次のステップです。こうした環境を用意できれば、日本市場においてもゲーム内広告を通じたブランディング施策が盛り上がっていくはずです。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。