天野耕太氏がBrowsiアジア地域統括マネージャーに就任! 〜これが天野流、アドテクキャリアの紡ぎ方と組み立て方〜

かばんには
高い意識と
美学詰め
O.I.C.L.A※、・・・そしてB。
数々の錚々たる外資系企業を渡り歩き、その後Appleに参画。それゆえしばらくメディアから遠ざかっていた天野耕太氏が、久しぶりにオープンインターネット業界に戻ってきた。この度Browsi 日本法人のアジア地域統括マネージャーに就任した天野耕太氏に、公私にわたる今後の展望を中心に、お話を伺った。
※O.I.C.L.A:天野氏がこれまで渡り歩いた外資系企業(Overture、InMobi、Criteo、Liftoff、Apple)の頭文字。
−今回Browsi日本法人である「Browsi Mobile」のアジア地域統括マネジャーに就任されたということですが、これまでの経歴を教えください
20年ほど一貫してデジタルマーケティングやいわゆるアドテクの領域で仕事をしていますが、直近はAppleのApple Search Adsで代理店部門のリード、その前はLiftoffというアメリカのモバイルアプリDSPで日本と韓国の立ち上げからカントリーマネージャー、さらに以前はCriteoで営業の統括やパブリッシャー側の統括、Yahoo! JAPAN/Overtureでパブリッシャー開拓などを経験しました。
普段使いのお店は、都会にありながらもどこか出身地の懐かしさにも包み込まれる空気ただよう目黒の「CASUAL BAR Don't Cry」をチョイス。座る位置は、いつも右から3席目というのも、天野流
−どちらかと言うとアプリ広告に強みを持つ経歴のように思えますが、Web広告をメインにしているBrowsiを次のチャレンジに選んだ理由を教えてください
確かに直近のAppleやLiftoffではモバイルアプリのマーケターや関わる代理店の方々と仕事をさせて頂いていましたがCriteo以前はほぼWeb広告に従事していましたし、同時にDemand/Buy(広告主)側の仕事もSupply/Sell(パブリッシャー)側の仕事の両方を経験してきましたが、多少のエコシステムやプレーヤーの違いはあれど領域の違いはあまり気にしていません。
広い意味では価値のあるコンテンツを発信する企業が広告で収益化するという事、そこに集まるユーザーに向けてマーケティングをしたい企業がいるという事、そしてそれらをデジタルやテクノロジーで結びつけるという広い意味では仕事は変わらないと思っています。
Browsiについてはまだグローバルでもスタートアップと呼べるステージにいる事や今後の展開に興味を持ったのが選んだ理由ですが、直近でアプリの仕事をしていても個人的にWeb関連やパブリッシャー関連のイベントに頻繁に参加させて頂いたりしていたので、自分自身の範疇外だったりブランクがあるとは考えていません。同時にこれからWeb広告に関する仕事がメインとなっても、個人的に関わっているアプリ関連のイベントへの参加などを通じて自分の興味のアンテナは維持したいと思っています。
−あらためて、Browsiとはどのようなソリューションなのでしょうか?また、どのような事業を今後日本を含めたアジアで展開していくのでしょうか?
簡単に言うとパブリッシャーに提供するソリューションを通じて通常相反するUXの維持と広告収益の増加を両立するための支援をしている企業です。パブリッシャーは収益を維持または向上するためにページにおける広告枠を増やしたり、限られたコンテンツを複数ページに分割して遷移させたりと様々な試行錯誤を行いますが、場合によってはユーザー体験を損なう事で離脱を招き、最悪なケースではさらに広告主からも倦厭されてしまう事態を招きます。
Browsiは、パブリッシャーが収益を維持しつつもUXを改善するという難しいバランスを我々のソリューションを通じて簡単に行える事を目指していて、日本でも複数の協力パートナー企業のご協力もあって既に170以上の大手Webサイトで活用して頂いています。スタートアップ企業にも関わらず日本のプレゼンスが高いという事が私が参画を決めた理由の1つですが、今後は日本からアジア全域への展開を模索していきます。
パブリッシャーの課題はマーケットによって異なるため今年は各国のニーズを探りながら具体的なプランを作っていく予定ですが、具体的には例えば韓国での展開を協力してくれるパートナー探しなどから始めたいですね。
また並行してグローバルでデータ関連の新規事業に注力することを打ち出しているので、日本やアジアでの展開を考えています。
−Browsiで注力していきたいこと、熱い想いがあれば語ってください。
直近のAppleを除いてキャリアの殆どをいわゆるオープンインターネット(オープンWeb)、つまりコンテンツを発信する企業がユーザーを集めることで成立する広告事業に携わって来ていますが、そのオープンインターネットは去年1年の間にもその課題について色々な場で語られてきました。今年もまた変化が生まれるだろう課題についてここで細かく語る事は出来ませんが、その一部に先ほど触れた通りユーザー・広告主・パブリッシャー(メディア)のニーズのバランスの中で悪いスパイラルに陥ってしまっているような点も見受けられます。
例えば私自身、ファッションやスポーツなど興味がある分野については好きなメディアが多いのですが、自分が興味を持つコンテンツがあると知っているWebサイトへのアクセスを、広告やUXを理由に諦めてしまう事があります。コンテンツのファンであってもPVや広告収益に貢献出来ていない訳です。
Browsiは現時点でのメインのソリューションとして、パブリッシャー(メディア)の収益性を保ちながら広告によるUXを改善するツールを提供しています。領域のほんの一部を担うサービスの立場ではありますが、業界全体の大きな課題について色々な方と意見を交わしながら取り組んで行きたいと思っています。
ワインはグラスの半分まで飲んでから、はじめてテーブルに置く。これも天野流
−Browsiではどのようなチームを作っていきたいですか?また、組織づくりにおいて大事にしていることを教えて下さい。
自分自身はどんな組織においてもフラットなチームを作って少人数の周囲の仲間と一緒に試行錯誤をしていくプロセスが好きなのですが、Browsiはグローバルでもそれほど大きくない組織のスタートアップ企業です。以前同じく日本支社を立ち上げた時と同様にグローバルのメンバーとも隔たりなく各メンバーが関わる必要があると思っています。創業者も日本が大好きで何度も来日しているので、フラットな組織の中でグローバルの色々なメンバーと一緒に働くことを楽しみにしています。日本でお付き合いするパブリッシャーやパートナー企業をサポートしたりニーズを反映するために、コンパクトでスピーディーなチームを作っていきたいです。
組織論を語るのは恥ずかしいのですが、いわゆるヒエラルキー型の組織よりホラクラシー型の組織が好きで、個々がそれぞれの領域で自主的に進めながらそれぞれが有機的に関わっていく...という状況を常に模索しています。10年以上前に周囲に良く話していたのは映画「オーシャンズ11(シリーズ)」の例で、専門性を持った個々が集まるとチームとしてさらに大きな仕事が出来るものの、リーダーであるダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)が発案者でありリーダーであるものの必ずしもヒエラルキーがある訳でなく、フラットなチームの中でリーダーという1つの役割を演じる状況。勝手な解釈ですが若い頃からずっとあの雰囲気が理想ですね。Browsiの日本チームではこれから新しいメンバーを募集していくので、そういうチームの一員になってくれる人を探すのが楽しみです。
−仕事をするうえで、大切にされているモットーを教えて下さい。
とにかく相手の状況や本質的なニーズを先に学ぶ事ですかね。当たり前ですが、どんなビジネスでどうやって収益を上げていかなきゃいけない状況なのかを先に知る。パブリッシャーであれば広告収益の前にユーザーにコンテンツを発信する部分だったり、広告主であればどんな商品をどんな消費者にどんな販路で届けたいのかを、自分や自社が何を提供できるかの前に知る必要がある。
同じくチームを作ったりメンバーを預かる際にも、その人がどんな人でどうなりたいか、どんなモチベーションがあってどんな経験を積みたいと思っているかを、何をやって欲しい・どうなって欲しいより先に考えたいですね。時間がかかってもそういうアプローチを個人的に大切にしています。足元で言えば自分は個人的に紙媒体も含めてメディアが好きですが、まずは今まで以上に各メディアについて改めて勉強させて貰いたいと思っています。
−様々な外資系企業の要職を歴任されていますが、今後のキャリアプランについてはどのようにお考えでしょうか?
良く聞かれますが、実はあまり考えないようにしています。若い頃はある程度「こうなりたい」という事を常に意識して必要な知識をつけたり経験を積む努力をしましたが、最近はプレッシャーとなる目標を作って自分で作った枠にはまらないようにしています。今はBrowsiという新しい組織に参画したタイミングなのでその先を考えていませんが、今回転職する際にも外資ではなく日本企業へのお誘い、大きな会社、スタートアップなど色々なポジションについてお話しさせて頂く機会を貰ってそれぞれとても魅力でした。最終的にはどこかで好きなスポーツや地方創生というテーマで何か貢献をしたいという思いはあります。
−勤務地が変わることで、夜の遊び場も変わりますか?
え?大丈夫ですか?質問あってます...?お酒を飲む場所は相手に合わせているので、どこにでも駆けつけます!今日はよく来る目黒のバーを撮影に使わせて貰っていて仕事の仲間や業界の人とは渋谷や恵比寿、六本木などこっちのエリアが多いものの、その他の友人とは新橋、銀座、上野あたりを中心に色々とエリアを開拓しています。最近は昭和から続くような趣のある大衆酒場が好きで、東京の東側の下町エリアのほか、出身地・横浜の野毛も好きですね。
直近で行ってみて良かったのは昭和30年代から続く茅場町の「ニューカヤバ」や、押上の「かどや」、あとは静岡で大正時代から続く「大村バー」...ってこれなんのインタビューでしたっけ?
−お洒落なバーから大衆酒場まで、ギャップが素敵ですね。ところで、「カンマネなら、このアイテムはカバンに入れとくべき」というものがあれば、教えてください。
え?バッグの中身ですか?そういうメディアでしたっけ?自分は前職だからというのに関係なくApple製品が大好きなのでこの通り色々入っていますが....。仕事で使うMacの他にiPadでは年間100本以上見る映画や韓国ドラマ、サッカーの試合を観たり、あとは雑誌を色々読んだりします。カンマネなら...というのは難しい質問ですが、キャラ立ちしないと埋もれてしまうので仕事以外に自分らしさを保つものは持っとくべきかなと。
自分の場合は親しい人はみんな知っていますが、ライフワークはJリーグクラブの清水エスパルスの応援で毎週全国に応援に行ったり個人的にスポンサーをやってたりするので、急にモードを切り替えられるようにバッグにも何かしら入っています。規定の営業トークするだけの人よりキャラが立ってる人の方がいいかな?とか勝手に思っています。
カバンの中を覗くときのまなざしも、さりげなくて温かく。これも天野流。
黒セーターからの白シャツを少しのぞかせて、育ちの良さをさりげなく演出。カバンは、使い込むほど味わい深くなるアイテムにこだわる。マフラーは、熱愛するサッカーチームのチームカラーをチョイス。カジュアルな白いロゴが、全体のトラッド感を少し和らげる。セーター(UNITED TOKYO)、シャツ(EDIFICE)、パンツ(ADAM ET ROPE')、黒のカバン(Saint Laurent シティ/バックパック)、マフラー(LOEWE)、全てスタイリスト私物。
開くかばん
意識の先に
道続く
歴々たる外資系企業を渡り歩き、そして今度はアジアを統括するカンマネという立場にありながら、決して気取らなぬ今後のキャリアプラン。それが天野流。キャリアプランだけでなく、プライベートでアルコールを注ぐ場の選び方にも見られる天野流。そんな天野氏の魅力にますます惹きつけられる、インタビューであった。
ABOUT 野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。